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海嶺04

时间: 2020-02-28    进入日语论坛
核心提示:開の口     四 船の中は静まり返っている。「音を立てるでないぞ」吉治郎は音吉の耳にそっとささやく。「みんな眠っている
(单词翻译:双击或拖选)
開の口
     四
 船の中は静まり返っている。
「音を立てるでないぞ」
吉治郎は音吉の耳にそっとささやく。
「みんな眠っているでな」
音吉はうなずく。女たちが帰った後の船の中に、荒いいびきが聞こえた。吉治郎は、抜き足さし足で先に立つ。
(忘れ物って何やろ?)
音吉は、今もまた不審な顔になった。吉治郎は、今夜寝ようとした音吉にこう言った。
「俺、忘れもんをして来たで、今夜のうちに取りに行かんならん。明日は早いでな」
「忘れもん?」
「そうじゃ。音も船まで一緒に行かんか」
音吉は眠かったが、吉治郎が一人で千石船《せんごくぶね》まで行くのも気の毒な気がした。
「行く」
音吉は吉治郎の後について家を出た。家を出る時も吉治郎は、
「父っさまや母《かか》さまには内緒や。ええな」
と、こっそり家を出た。
吉治郎は、浜に上げてある磯船《いそぶね》を海に入れ、巧みに櫓《ろ》をこいだ。千石船が海の上に黒々とひどく大きく見えた。潮の満ちて来る夜の海を、音吉は黙って見ていた。口をひらくことを吉治郎にとめられていたからだ。が、心の中では、その忘れ物は次に帰ってくる時でもいいではないかと、音吉は幾分不満だった。
二人は胴の間の板を踏んで、三の間に近づいた。胴の間の踏立板《ふたていた》がみしっと音を立てた。
「しっ! みんな寝とるでな」
吉治郎はふり返って、音吉の足もとを指さした。三の間の戸に、吉治郎は手をかけた。そしてそろそろと静かにあけはじめた。一寸、三寸、五寸、人一人入れるほどにあいた時、吉治郎は体を横にしてするりと中に入った。三の間はいわば物置で、太い綱や帆などが、山のように積んである。音吉は、暗くぽっかりとあいた三の間の入り口をみつめたまま、じっと突っ立っていた。と、吉治郎が、大きな風呂敷包みを両手に下げて姿を現した。
「兄さ、何じゃ、それ?」
音吉はささやいた。
「しっ!」
吉治郎は素早くあたりを見まわし、その一つを音吉の背に負わせた。ずしりとしたその重みは、米のようであった。
「黙ってついて来い」
吉治郎は、自分も風呂敷包みを背負うと先に立った。音吉は足をしのばせながら、こんな大きな忘れ物をした吉治郎が不思議だった。
吉治郎と音吉が、開《かい》の口に近づいた時だった。ぬっと二人の前に立ちはだかった男がいた。吉治郎はぎょっとして後退《あとじ》さった。音吉は只《ただ》ならぬ気配《けはい》にはっと胸をとどろかせた。
男は無言のまま、二人の前に突っ立っている。吉治郎の体がこまかくふるえた。音吉にはまだ、事のすべてがわからない。が、言いようもなく無気味な気がした。と、男が言った。
「吉! その荷をおろせ!」
吉治郎はへたへたと床にすわりこんだ。
「早くするんだ」
おさえた声だ。音吉は、それが昼に見た男であることに気づいた。船頭の娘お琴の乳房を乱暴につかんだあの男だ。
吉治郎はふるえる手で、風呂敷の結び目を解いた。岩松はその風呂敷包みを持ち上げて、にやりと笑った。そして音吉に近づくと、荒々しく風呂敷包みに手をかけた。音吉はあわてて、結び目も解かずに首から外した。
「帰れ!」
岩松は開《かい》の口のほうをあごでしゃくった。だが吉治郎はおどおどして、まだ床の上に坐《すわ》りこんだままだ。
今、吉治郎は、はじめて船に乗る時に示された数々の定めを思い出した。
[#ここから2字下げ]
一、搏打賭事《ばくちかけごと》を致すまじき事
一、上陸の節は酒を謹《つつし》むべき事
一、決して盗みを働くまじき事
[#ここで字下げ終わり]
等々、役所よりの定めを、船頭は吉治郎に読んで聞かせた。そして言ったのだ。
「ええか。これをよく守るだで。この定めを破ったら、二度と船には乗れん。その上、仲間にも罰が下るでな」
その定めを吉治郎も、最初は守った。が、幾度か船に乗るうちに、そんな定めなど、守っても守らなくてもいいような気がして来た。なぜなら、船頭から水主《かこ》まで、誰一人守っている者はなかったからだ。暇になれば仲間同士で、花札を引いたり、双六《すごろく》をした。むろん金を賭けてのことである。陸に上がれば、酒を謹むどころか女も買った。第一この宝順丸の神棚《かみだな》の下には、「鈴の尾」が飾られている。なめらかなビロードでつくられた飾り物で、細長い枕《まくら》を三つつなぎ合わせたような、陸では見かけぬ代物《しろもの》である。鈴の尾には、贈り主の江戸の遊女の名が刺しゅうされてあった。船頭の馴染《なじ》みの女だと言う。船頭は、
「これはのう、航海の無事|安泰《あんたい》を祈る縁起物じゃ。どの船にも飾ってあるわ」
と、自慢げに水主たちに言って聞かせた。
また、酒や女どころか、抜き荷やごまかしは、日常|茶飯事《さはんじ》で、荷主の米や油や塩などを抜かぬことは一度もない。しかもこの宝順丸は、千石船《せんごくぶね》と公称してはいても、実は千五百石の船だ。積載量に応じて税がかかる。その税をごまかすために千石積みと公称している。それもこれも、結局は盗みではないか。次第に吉治郎は、積み荷をくすねることに馴れてしまった。良心の疼《うず》きを覚えることがなくなった。いつしか吉治郎は、炊事場《すいじば》の米をくすね、陸に持ち出して売ることを覚えた。初めのうちは僅《わず》かずつだったが、今回はいつもよりも、大きくくすねたのだ。炊《かしき》の吉治郎は、米を磨《と》ぐ係だった。
(米の二|升《しよう》や三升)
そう思いながらも、今、吉治郎はふるえがとまらなかった。吉治郎は岩松が恐ろしかった。岩松は単なる水主ではない。腕の立つ舵《かじ》取りである。その度胸《どきよう》と判断力は、船頭も一目《いちもく》置いていた。しかし何か底の知れない恐ろしさがあった。それが時折《ときおり》荒々しい挙動となって現れる。そんな岩松が吉治郎には苦手であった。
「帰れ! 帰るんだ!」
岩松は言葉短く命じた。
「…………」
あやまろうとしても、上あごに舌が張りついたようで、吉治郎は声も出ない。明日からはもう二度とこの船に乗れまいと、吉治郎は覚悟した。船頭ならば、たとい殴《なぐ》りつけても許してくれる。だが、岩松は容赦《ようしや》のない語調で追い立てんばかりである。
「すまなんだ」
吉治郎は床に頭をすりつけた。岩松は三度帰れと言った。吉治郎はようやく立ち上がり、しおしおと縄梯子《なわばしご》を降りた。音吉もそれにつづいた。
(兄さは……)
音吉は兄のしたことに、ようやく気づいたのだ。
(兄さは、船のものば盗った)
二人は磯舟《いそぶね》に降り立った。そして吉治郎が櫓《ろ》を持った時だった。
「待て」
潮で鍛えた岩松の声が低くひびいた。はっと二人が見上げると、岩松がするすると梯子を降りて磯舟に乗り移った。吉治郎が再びおどおどと岩松を見上げた。
「すまんことをした。もう二度としないだで、かんべんを……」
岩松はその吉治郎を黙って見ていた。が、やがてぽつりと言った。
「お前の父《と》っさまと、俺は一緒に船に乗っていたことがある」
「は、はい」
吉治郎は身を縮めた。
「この子は吉の弟か」
「はい」
「何てえ名だ?」
「音吉と言いますで」
「音吉か。音、お前も船乗りになるんか」
「はい」
音吉は、こんな男と同じ船に乗るのはいやだと思いながら答えた。
「そうか、じゃこれはお前にやる」
言ったかと思うと、岩松は肩にひっかけていた先程《さきほど》の風呂敷包みを音吉の足もとに置いた。
「す、すまんことで……」
吉治郎の言葉をみなまで聞かず、岩松は縄梯子《なわばしご》に飛び移り、猿《ましら》のように駈《か》け登って行った。驚く二人の前に、縄梯子が大きく揺れていた。
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