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海嶺06

时间: 2020-02-28    进入日语论坛
核心提示:良参寺     二 手習いが終わって、子供たちはばらばらと外に飛び出した。敷石を踏んで、一目散《いちもくさん》に山門を出
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良参寺
     二
 手習いが終わって、子供たちはばらばらと外に飛び出した。敷石を踏んで、一目散《いちもくさん》に山門を出て行く者も幾人かいる。先程《さきほど》降っていた小雨も晴れ、蝉《せみ》もかしましく鳴き出した。久吉が、
「おおい、みんな、かくれんぼせんか」
と呼びかける。みんな喜んで久吉のまわりに集まった。琴もその中にいる。が、音吉は帰ろうとした。今日は母の美乃も畠《はたけ》仕事を休んでいて、父の武右衛門の世話は母がしている。だから寺子屋に手習いに来ることができたのだ。少し遊んで行きたい気もする。だが早く帰らねばならないような気もする。
「何だ、音、帰るんか」
帰ろうとする音吉に素早く気づいて、久吉が声をかける。
「うん、帰るで」
音吉は久吉の傍《そば》にいる琴の顔を見た。
「遊んで行けよ。たまには」
年上の久吉は命令口調になる。他の子供たちも、
「音吉、遊んで行けや」
と、誘った。音吉はまたちらりと琴を見た。琴の目が涼しく音吉に注がれていた。
「うん。少しな」
音吉が言って、じゃんけんになった。
久吉が鬼になった。久吉は楠《くす》の木に寄って目を両手でおおった。寺の縁の下にかくれる者、灯籠《とうろう》の蔭《かげ》にかくれる者、みんな素早い。
「もうええかあ」
久吉が叫ぶ。
「まあだだで」
返事をしながら音吉は焦《あせ》った。久しくみんなと遊ぶことを忘れていた。音吉がかくれようとする所には、既《すで》に誰かがかくれている。
「もうええかあ」
再び久吉の声がする。
「もうええで」
高い縁の下にかくれた子供の声がする。音吉はあわてて、すぐ傍《かたわ》らにある鐘楼台《しようろうだい》の戸をあけた。そして急いで戸を閉めた。鐘楼台の下は物置になっていて、鍬《くわ》や鋤《すき》や草刈《くさか》り鎌《がま》が壁に立てかけてあった。二坪|程《ほど》の小さな物置だ。右手に階段がついて、それを登って鐘《かね》をつくのだ。その階段を見上げて、音吉ははっとした。琴が階段の途中に腰をかけて、音吉をみつめていたからだ。音吉は思わず顔が赤くなった。短い着物の裾《すそ》から、琴の足が二本のぞいている。琴がにっと笑って、
「音吉つぁん、こっちに来ない?」
と、ひそやかに言う。音吉は赤くなったまま突っ立っている。
「ねえ、おいでよ」
甘えるように琴が言う。だが音吉は、戸を背に動こうとしない。二人はじっと顔を見合わせたままだ。少し経つと音吉は息苦しくなって、目を外《そ》らした。と、本堂のほうで、
「見つけたぞう、竹造!」
と久吉の声がした。久吉の声は、鐘楼台から遠かった。つづいて、
「作市! 甚太! 見つけたでえ」
浜育ちは声が大きい。父親の又平と漁に出ている久吉の声は、わけても大きい。久吉の声を幾度か聞くうちに、音吉の緊張がほぐれた。
「音吉つぁん、あんた千石船《せんごくぶね》に乗るって、ほんと?」
琴が首をかしげる。琴は音吉と同じ年だ。
「うん、そのつもりだ」
音吉がはっきりとうなずく。
「やっぱりほんとなの。うちの父っさまがね、音吉つぁんなら、きっといい船頭になれるって、言うてたわ」
ささやくような声が、音吉の胸をくすぐる。
「船頭になんか、おらあなれん」
音吉は思いとちがうことを言った。船頭には、船主が船頭を兼ねる直乗《じきの》りの船頭と、水主《かこ》上がりの沖船頭がある。船頭はほとんど世襲《せしゆう》だが、全くなれぬと限ったことではない。
「いや、音吉つぁんならなれる。でもね、船に乗ったらあかん」
と立ち上がった。
「何であかん?」
音吉が言うと、琴は黙って階段を降りて来、音吉の傍《そば》に立って、真剣な顔になって言った。
「嵐はこわいでな、陸《おか》にいてほしいわ」
「陸にいてほしい?」
音吉の胸が高鳴った。とその時、がらりと戸があいて、久吉の顔がのぞいた。
「あ、いたいた、へえー、お琴とたった二人で、何してた、音」
からかうように久吉が二人を見た。音吉は赤くなり、
「かくれてた」
と、言ったかと思うと、外に飛び出した。
かくれんぼを三、四度するうちに、子供たちは飽きた。良参寺の境内《けいだい》はあまりに広く、かくれる場所が多過ぎる。見つける者もかくれる者も、退屈してしまうのだ。何人かは途中で帰ってしまった。琴も松乃と帰って行った。
「本堂に入ってみるか」
久吉が音吉を誘った。
「うん」
音吉は広い、しんとした本堂が好きだ。二人は本堂に上がった。上がったすぐの畳に賽銭《さいせん》箱があった。習ったことはないが、この賽銭箱という字を、音吉は読むことができる。小さい時からよく寺に来ているからだ。
須弥壇《しゆみだん》の左手に、十六|羅漢《らかん》の像が飾ってある。合掌《がつしよう》している者、坐禅《ざぜん》をしている者、腰かけている者、立っている者、様々な姿勢だ。表情も、怒り顔、笑い顔などなど、十六羅漢は生き生きとしている。だが久吉は、板の間を通って、右手の地獄極楽の絵図の下にあぐらをかいた。音吉は板の間をそっと歩く。鶯張《うぐいすば》りの板の間は、そっと歩くとかえってよく鳴るからだ。音吉はその板の間を行ったり来たりした。
「何をしとる」
と、久吉が呼ぶ。
「うん、何もしとらん」
音吉はようやく、久吉の傍《そば》に行った。と、待ちかねたように久吉は尋《たず》ねた。
「お前な、さっき鐘《かね》つき堂の中で、お琴と何しとった?」
「何もしとらん。かくれてただけだで」
「何もしとらんことがあるか。あんなにすれすれに、近《ちこ》う立っていたでないか。音、お琴の手え握ったな」
「握らん、手なんて」
音吉の顔がまた赤くなった。
「嘘《うそ》を言え。嘘を言ったら、ほら、この地獄極楽の絵を見てみい。この亡者《もうじや》のようにえんま様に舌をぬかれるで」
久吉は脅《おど》す語調になった。
「俺は嘘は言わんで、正直武右衛門の息子だでな」
言ってから音吉は、この間の夜、兄の吉治郎が千石船《せんごくぶね》に米をくすねに行ったことを思い出した。地獄極楽の絵には、物欲の強かった女が、亡者となっても手を差し伸べて、何かを得ようとしている。が、その亡者の欲しい物は、すぐ目の前にあっても手が届かない。音吉は吉治郎を思って、胸が重たくなった。
「ふーん。ではほんとに手え握らなかったな」
「うん、ほんとに握らん」
「じゃ、どこかにさわったな」
「さわらん。どこにもさわらん」
「ほんとかお前、あんなにそばにいて、胸にも尻にもさわらんかったか」
「さわらん、どこにも」
「そうか、お前は正直武右衛門の倅《せがれ》だでな」
久吉はごろりと畳の上に横になった。そして格《ごう》天井を見上げて言った。
「俺な、音吉。俺、お琴に惚《ほ》れとるでな、だから気になったんや」
「惚れとる!?」
惚れるという言葉に音吉はどきりとした。
「うん、惚れとるでな。音吉はどうや。惚れとらんのか」
「惚れるなんて……」
「そうやな。お前、まだ餓鬼《がき》だでな。色けづくのはまだ少し間があるわな」
一つしか年上ではないが、久吉はいかにも年長者のような口をきく。
「音吉、お前見んかったか。千石船に米のまんま食いに行った時よ、お琴の胸ばがっつとつかんだ男よ」
音吉は答えなかった。
「お前は握り飯食うていて、見なかったかも知らんが、あれを見てな、俺はかーっと頭に血がのぼったんじゃ。一度でいいから、俺もお琴の胸をきゅーっと握ってみたいでな」
「そんなこと……それこそえんまさんに針の山に追い上げられるでえ」
音吉は地獄の絵を見上げた。亡者たちが針の山に髪をふり乱して追い上げられて行く。
「なあに、地獄極楽なんぞ、あるかないか、死んで見にゃわからんことだでな」
久吉は大声で笑いとばした。
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