日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

海嶺10

时间: 2020-02-28    进入日语论坛
核心提示:截断橋     三 思いがけぬ所で岩松を見た久吉は、驚いた。久吉が岩松を見たのは、千石船《せんごくぶね》に米の飯を食べに
(单词翻译:双击或拖选)
截断橋
     三
 思いがけぬ所で岩松を見た久吉は、驚いた。久吉が岩松を見たのは、千石船《せんごくぶね》に米の飯を食べに行った時だ。岩松は、裸の子供たちをじろりと見、
「小うるせえ餓鬼共《がきども》だ」
と、子供たちを恐れさせたのだ。そして、琴のふくらみかけた乳房をむんずとつかみ、久吉たちを仰天《ぎようてん》させたのだ。あの後、久吉は岩松に会ってはいない。いやな男だと思っていたのに、久吉の胸に懐かしいような思いが湧《わ》いた。
久吉にとって、熱田は遠い他国であった。どっちを向いても、見知らぬ人間ばかりであった。従兄《いとこ》の長助に誘われて、喜んで伊勢参りに出て来たのだが、その長助に、久吉は置き去りにされてしまったのだ。
昨夜、熱田の善根宿《ぜんこんやど》に、金のない長助と久吉は泊まった。その宿で、長助がこう切り出した。
「久吉、お前、江戸に行く気はないか」
「え、江戸?」
突然のことに久吉は、驚いて頓狂《とんきよう》な声を上げた。ちょうど夕食を終わったばかりで、相客の男は、手枕《てまくら》でごろりと寝ころんでいた。長助は言った。
「うん、江戸だ」
長助は真剣なまなざしだった。
「江戸いうたらお前、えらい遠い所やで」
久吉には、江戸が熱田の西か東か、見当もつかない。只《ただ》、公方《くぼう》さまのいる大きな町だと聞いているだけだ。
「遠くったって、地つづきだで、歩いて行きゃあ、いつかは着くわ」
「何でお前、そんなに江戸に行ってみたい思うのや」
「うん。お前は子供でまだわからんのや。俺な、船主の親方の所に住みこんで三年、来る日も来る日も、まじめに働いた。しかしな、給金は年に一両にもならんのやで」
「…………」
久吉は、熱田名産の大きな団扇《うちわ》を手に取り、蚊《か》を追い払いながら、一両という金は大した金ではないかと思ってみる。
久吉には、金の価《あたい》がよくわからない。千石船《せんごくぶね》の船頭は、年に三両もらうという。多くても五両だと聞く。舵《かじ》取りが二両か三両で、水主《かこ》たちは一両の給金とか。飯炊《めした》きの炊《かしき》は、僅《わず》かに二分だ。むろん、一航海ごとに歩合給はあるから、一年の収入はそう少なくない。とは言っても、命をかけての水主の賃金と同じ一両であれば、ずいぶんといい待遇《たいぐう》ではないかと、子供の久吉は思う。第一、一両の小判など、久吉は手に持ったことがない。
「俺は蔭《かげ》日向《ひなた》なく働く男だ。だがな、この頃《ごろ》働くのがいやになったわ。いくら骨身削って働いたところでな、ちゃらんぽらん働いている奴《やつ》と、同じ給金だでな。親方んところに、このあと十年働いてみても、よめをもらえる見込みもないわ」
「よめ?」
自分より僅《わず》か二つ年上の長助が嫁のことを言い出したので、久吉はぽかんとした。
「久吉、俺は江戸へ行く。お前だって、漁師で一生暮らすよりは、花のお江戸で、大店《おおだな》にでも住みこんだらどうだ。年季《ねんき》があけたら、のれんを分けてもらえるでえ」
「いやだ。俺は小野浦が好きじゃ。この熱田まで来ただけでも、俺は何やら淋《さび》しゅうなった。俺は父《と》っさま母《かか》さまのいる小野浦がええ」
「父っさま母さまでなくて、久吉お前は、お琴のいる小野浦がいいんじゃろう」
長助はにやりと笑った。久吉は大きくうなずいて、
「ああ、俺はお琴が好きじゃ。あのにこっと笑った顔は、えも言われぬほど好きじゃ。長助は、あんなかわいいお琴のいる家から、何で逃げ出したいんや」
久吉は真顔《まがお》だった。
「お前は餓鬼《がき》だでな、何も知らん。江戸に行けば、お琴のような娘は、掃き捨てるほどおるわ」
「長助、お前、お琴に惚《ほ》れんかったのか」
「惚れたって、どうなるものでもない。お琴は俺たち風情《ふぜい》の嫁になる筈《はず》はないでな」
「嫁にせんでも、惚れたらいいでないか。惚れるというのは、いい気持ちのものだで。俺はお琴に惚れとる。お琴のちょっぴりふくれた胸を、俺は毎晩目に浮かべて寝る。それだけで、もう楽しいわ」
「一人前の口を利く奴《やつ》だ。思うだけでええなら、江戸に行ってもできる。な、江戸に行こう、江戸に」
長助は熱心だった。
「江戸なんて、いやだ。俺は総領だ。うちの跡取りだで、親ば捨てて行く訳《わけ》にはいかん」
久吉は、持っていた大《おお》団扇《うちわ》をばたばたとふった。と、こっちに背を向けて手枕《てまくら》をしていた男が、むっくりと起き上がって言った。
「おい、お若えの、お前さんほんとに江戸に行くつもりかね」
目尻の下がった、四十過ぎのやさしそうな男の笑顔に、長助はこっくりとうなずいた。
「そいつはいい了見《りようけん》だ。で、お前さんの親御さんは?」
男は一見《いつけん》町人風だが、商人とも見えない。
「はい。親は二人共、早くに死にました」
「なるほどなるほど。それじゃ、ますます江戸に行ったほうがいい。江戸はいい所だ」
「あのう、あんたさんは江戸のお方で?」
「ああ、江戸で生まれて、江戸で育った生粋《きつすい》の江戸っ子よ。江戸という所はな、〈鐘《かね》一つ売れぬ日はなし江戸の春〉ってな。大変な大きな町さ」
「かね一つ……?」
久吉が首をひねった。
「おお、そうよ。お寺のあの、ゴーンと鳴らす吊《つ》り鐘じゃ。あんなでっかい鐘が、売れねえ日はねえという江戸だからな。住むんならお江戸よ。人間と生まれて、何も片《かた》田舎《いなか》に埋もれて暮らすことはない。働き次第で誰でも大金持ちになれるのが江戸だ。辛抱《しんぼう》のし甲斐《がい》のある所よ」
「そうですか! 誰でも、働き次第で、分限者《ぶげんしや》になれますか」
長助が目を輝かした。
「なれるとも、なれるとも。そんな人間ばかりの集まりだ。金さえ持ちゃあ、いい女は寄ってくる。江戸には吉原《よしわら》ってえ、いい所があってな。大名にさえなかなか頭をふらぬ、そりゃあ天女《てんによ》のようなおいらんがいる。しかし金さえ持ちゃあ、そのおいらんを落籍《ひか》すこともできるんだ。住むんならお江戸よ。公方《くぼう》さまのお膝《ひざ》もとよ」
男は浅草の見世物小屋の賑《にぎ》わいや、両国の花火や、歌舞伎《かぶき》役者の話、相撲《すもう》取りのことなど、おもしろおかしく語って聞かせた。久吉も一旦《いつたん》は、江戸に行ってみたいと心が動いたほどだった。そしてとうとう、長助はその男と、今朝朝食を食べるや否や、江戸に向かって発《た》って行ってしまったのだ。
久吉は泣きたい思いで船着き場に行ってみたが、今日小野浦に行く船はない。根がのんきな久吉も、急に淋《さび》しくなって、熱田の町をあっちへぶらぶら、こっちへぶらぶら歩きまわって、今、截断橋の上に来たところだった。そして、精進川に身をすすぐ旅人たちを、欄干《らんかん》にもたれて、ぼんやり眺《なが》めていたところだった。
精進川は、川底の石が一つ一つ数えられるほどの澄んだ水で、ここに身を清めて、熱田に詣《もう》でる旅人たちも多かった。それを眺めるともなく眺めていて、久吉は半分泣きたい思いになっていた。
その久吉の目に、截断橋のたもとにいた岩松が目に入ったのだ。
「あっ! あれは?」
誰一人見知らぬ土地にいて、好きも嫌《きら》いもなかった。いや、たとえ鬼であっても、見知った顔は懐かしかった。小野浦の樋口源六の持ち船、宝順丸に乗っていた岩松は、久吉にとっては親しい小野浦の人間の一人に思われた。久吉は吾を忘れて、岩松のほうに駈《か》け出した。
と、一人の若者の肱《ひじ》に久吉は突き当たった。
「この野郎!」
遊び人ふうの男が、そのまま走りぬけようとする久吉の肩を、ぐいっと引き戻《もど》した。大きな力であった。それを岩松がじっとみつめていた。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%