日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

海嶺11

时间: 2020-02-28    进入日语论坛
核心提示:截断橋     四 岩松のほうに駈け出そうとして、いきなり、「この野郎!」と引き戻された久吉は、一瞬ぽかんとした。相手が
(单词翻译:双击或拖选)
截断橋
     四
 岩松のほうに駈け出そうとして、いきなり、
「この野郎!」
と引き戻された久吉は、一瞬ぽかんとした。相手が、突き当たった久吉を咎《とが》めているとは当の久吉は気がつかない。久吉は熱田に来てから、雑沓《ざつとう》の中で幾度人に突き当たったか知れない。自分から突き当たったばかりでなく、人からも突き当たられた。だから、相手が何を怒っているのか、十三歳の久吉にはわかる筈《はず》はなかった。が、男は昼間から酒が入っていた。ぽかんと自分の顔を見た久吉に、腹を立てた男は、久吉の体を宙に持ち上げた。久吉はふるえ上がった。そのまま地面に叩《たた》きつけられるか、川に投げこまれるかと、青くなったのだ。
「助けてくれえーっ!」
久吉は足をばたつかせた。人々が遠まきにこの二人を見た。岩松も見ていた。
岩松は久吉を助ける気はなかった。岩松は元来子供が嫌《きら》いだ。どこの子もみな、わがまま勝手に見えてならない。両親に思う存分甘えて育ったように見えてならない。
(ふふん)
岩松は内心せせら笑って様子を見ていた。男は久吉を高く掲げたまま、欄干《らんかん》に近づいて行く。久吉がその頭にしがみつく。
「この餓鬼《がき》があ。人に突き当たっておいてえ!」
叫んだ男の声を耳にした時、岩松は不意に気が変わった。男の言葉は熱田の言葉ではなかった。熱田は尾張藩《おわりはん》である。が、熱田神宮の神領ということで、熱田には熱田の自治があった。それが、熱田|気質《かたぎ》を誇り高いものにしていた。
岩松が久吉を助ける気になったのは、単に男が他国者であっただけではない。その横顔が、先程見た銀次に似ていたからであった。銀次か、銀次でないかはどうでもよかった。銀次に似ているというだけで、岩松の気持ちはあおられた。
今まさに、久吉を橋の上から投げ落とそうとした男の手を、岩松はその逞《たくま》しい手で、ぐいと押しとどめた。男は二、三歩うしろに押された。
「何でえ、お前!」
男の濃い眉《まゆ》が上がった。
「餓鬼《がき》を相手に、阿呆《あほう》な野郎だ」
岩松は低い声で言った。
「阿呆とは何だ、阿呆とは!」
男は久吉をいかにすべきか一瞬迷った。久吉に両手を取られていては、この屈強な岩松を相手に、喧嘩《けんか》はできない。そう判断した男は、久吉を地面に叩《たた》きつけようとした。が、その手に岩松はいち早く逆《さか》ねじを食わせた。
「いててて……」
男の声に見物がどっと笑った。男はかっとして、そのこめかみに青筋を立てた。男は低く構え、いつのまにか腹巻きから出した短刀《どす》を逆手に握っていた。久吉は四つん這《ば》いになって、人垣《ひとがき》のほうに逃げて行った。岩松は、欄干《らんかん》を背に、男を睨《にら》みつけていた。
岩松はこれまで、幾度か海賊と渡り合った経験がある。千石船《せんごくぶね》には幾つかの千両箱が積んである。その千両箱を狙《ねら》って海賊が襲う。船には、海賊に備えて、槍《やり》やなぎなたなどの武器があった。岩松は、水主《かこ》とは言いながら、他の者より度胸《どきよう》があった。特に槍の使い方が鮮やかで、その度に海賊を撃退して来たものだ。言ってみれば実戦の経験がある。短刀の一本や二本ふりかざされたとしても、びくともする岩松ではなかった。
無手の岩松に、御蔭参《おかげまい》りの幟《のぼり》を放ってよこした者がいた。岩松はすばやくその幟をひろうと、相手の胸板にぴたりと突きつけた。男の額に、脂汗《あぶらあせ》が滲《にじ》んだ。岩松は微動だにしない。それが男を恐れさせた。岩松がじりっと一足引き退《さ》がり、同時に幟《のぼり》をぐいっと手元に引いた。次の瞬間幟が鋭く突き出され、
「うっ!」
男は仰向けに橋の上に倒れた。が、ようやく立ちあがると、大声で何か喚《わめ》きながら逃げ出した。群衆は手を叩《たた》いて喜んだ。岩松は幟を欄干《らんかん》に立てかけると、さっさと橋を渡って、精進川の土手を歩き出した。
(つまらん手出しをした)
岩松は内心舌打ちをした。銀次という男に似ていると思ったが、正面から見た感じでは、少しも似てはいなかった。職人ふうの銀次と、遊び人ふうの今の男とは、身なりからして別人だった。だが岩松は、横顔が銀次に似ているというだけで、気持ちがあおられたのだ。
「お絹」
小さく口に出してその名を呼び、岩松は土手に腰をおろした。
(銀次ってえ男は、いつ頃《ごろ》越してきたんだろう)
団子だ、せんべいだ、まんじゅうだと、わたしの好きなものを持ってくると房は言っていたが、それらは絹の好きなものでもあった。今日の房の話の様子では、父の仁平も銀次が訪ねて来るのを喜んでいるらしい。年寄りという者は、ちょっとやさしい言葉をかけられれば喜ぶものだ。
(しかし、目当てはお絹にちがいない)
岩松は、夏の日のぎらつく精進川を見た。宮参りの男たちが幾人か、身を清めている。
(身を清めて、宮参りをして、飯盛《めしも》り女を抱くか)
岩松の片頬《かたほお》には皮肉な笑みが浮かんだ。岩松は幼い時から、神宮があるので熱田の宮宿にも女がいると聞かされて来た。宮参りが、即《すなわ》ち女遊びを意味すると知ったのは、十四、五の頃だ。伊勢神宮にも、同じように飯盛り女がいると聞いた。それを思うと、一心に身を清めている男たちの姿が、どうしてもこっけいになる。街道には、全身を清めるための「清め茶」も売っていた。茶を一杯飲めば全身が清まるのだから、こっちのほうが手数がかからない。
(お絹の奴《やつ》、銀次という男をどう思っているんだろう)
今、銀次に似た男と渡り合っただけに、思いはついそっちに行く。と、その時、
「あのう……」
と、声がした。見ると、今しがた、川の中に叩《たた》きつけられようとした久吉だった。
「何だ?」
にべもなく岩松は答えた。
「助けてもろうて、ありがとうございました」
岩松はじろりと久吉を見、
「別にお前を助けたわけではないで」
と、そっぽを見る。
「はあ?」
久吉は首をひねった。今まさに、川の中に叩きこまれようとしたその瞬間、助けてくれたのはこの人だ。が、岩松は苦々《にがにが》しげに、お前を助けたわけではないと言う。
(妙な人だ)
久吉は思ったが、
「でも……」
恐る恐る久吉は言いかけた。
「でも、何だ?」
「でもあんたさまに助けてもらっただで……」
「そんなことは、どうでもええ」
そう言われても、久吉は岩松の傍《そば》を離れる気がしない。確かにこの人は、宝順丸に乗っていた人だと、久吉は思う。見馴《みな》れぬ顔だが、小野浦の人間かも知れない。小野浦の人間であれば、必ず小野浦に帰って行くにちがいない。従兄《いとこ》の長助に置き去りにされた十三歳の久吉は、岩松が何を言おうが、小野浦に帰るものなら、つれて行ってほしかった。
「あの……あんたさまは、宝順丸の人ではないですか」
「何だ、俺を知ってるのか」
「知ってます。知ってます」
久吉は喜んで、
「俺、船に、米のまんま食いに行ったで、あんたさまば見ました」
「それで?」
「俺、つれのもんに置き去りにされたで、それで小野浦まで、つれてってほしいんで……」
「小野浦につれて行け? そいつはごめんだな」
岩松は立ち上がるや、すたすたと大股《おおまた》で立ち去って行った。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%