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海嶺16

时间: 2020-02-28    进入日语论坛
核心提示:夜の声     二 日がとっぷり暮れて、仁平が古田屋から戻って夕餉《ゆうげ》となった。「それじゃ船頭さんが困ったろう」仁
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夜の声
     二
 日がとっぷり暮れて、仁平が古田屋から戻って夕餉《ゆうげ》となった。
「それじゃ船頭さんが困ったろう」
仁平が僅《わず》かな酒にもう瞼《まぶた》を赤くしていた。ちゃぶ台の上には鯛《たい》の尾頭《おかしら》付きに、もずくの酢の物や|煮〆《にしめ》、そして赤飯と、銚子《ちようし》が二、三本並べられている。尾頭付きの鯛に赤飯は、岩松が帰った時には無事を祝って、必ず食卓につけることにしていた。今日も突然の帰宅だが、同じように食事は作られた。行灯《あんどん》の灯影も心なしか今日は明るい。
「そりゃあ、お父《と》っつぁん、困ったろうよ。しかし、困ろうが困るまいが、そんなことは俺の知ったことではないでな」
岩松は絹の酌《しやく》を受けながら、答える。
「そんなこと言っても、舵取《かじと》りのお前に、俄《にわか》に脱《ぬ》けられちゃあ……」
「舵取りだろうが、おやじ(炊頭)だろうが、船の上だ。俄《にわか》に倒れることもある。それであわてるようじゃ、船頭は勤まらんでな、お父っつぁん」
「ま、それもそうだ」
仏の仁平と言われるおとなしい仁平は、それ以上は言わない。
「ま、何とかやっているさ。なあ、お絹」
絹はにっこり笑ってうなずき、
「船のことなど忘れて、のんびりしたらええで、お前さん」
と、銚子《ちようし》を持って台所に立つ。その絹のうしろ姿を、見るともなく岩松は見て、
「それより、お父っつぁんおっかさんが達者で何よりだ」
岩松が仁平の盃《さかずき》に銚子を傾ける。事実岩松は、船が熱田に近づく度に、万一仁平が倒れていないか、母が病気になっていないかと、思わぬことはない。血のつながりがないとはいえ、岩松にとって、親はこの二人のほかになかった。
「ありがたいねえ」
岩松のたったそれだけの言葉に、房は袖口《そでぐち》で目を拭《ふ》いた。表の古田屋の賑《にぎ》わいが時折《ときおり》聞こえてくる。長屋のどこかで、夫婦げんかでもしているのか、男の大きな怒声がひびく。と思えばどこかで笑う女の声もする。
絹が銚子を持って岩松の傍《そば》に戻《もど》った時だった。
「今晩は。お絹さんは戻ったかい」
と、戸口で男の声がした。岩松の顔がさっとこわばった。
房が障子《しようじ》をあけ、
「おや、銀次さんかい。戻ってますともさ。ま、お上がりよ」
と、愛想よく答えた。
「いや、ちょっとばかり着物の袖《そで》がほころびてね、じゃ、邪魔をするよ」
と、入りかけて銀次ははっと岩松を見た。
「おっと、これは……」
戸惑ったように銀次は敷居《しきい》に膝《ひざ》をついた。眉《まゆ》の秀《ひい》でたきりりとした顔だ。仁平が、
「ああ、これが倅《せがれ》の岩松だ。岩松、同じ長屋の銀次さんだ。留守中世話になっているで、お礼を言いな」
銀次は如才《じよさい》なく、
「いやいや、世話んなってるのはあっしのほうだで」
と、頭を下げた。岩松はその銀次をじろりと見たまま、黙って盃《さかずき》を口にした。
「ちょうどいい。さ、銀次さんもここへ来て、いっぱいどうかね」
房が銀次を促した。が、銀次は、
「いや、あっしはこれから行くところがあるで、すまんけどこの袖のほころびを、頼んます」
と、持っていた着物を、房の傍《そば》に置き、早々に引きあげて行った。
「あしたまでに縫っておくでな」
戸口を出て行く銀次に、房が立って行って、ちょっと気の毒そうに声をかけた。何やら答える銀次の声がして、房が座に戻った。
岩松はむっつりと、鯛《たい》の塩焼きをつついている。絹はその岩松の顔をちらりと見た。房が赤飯をひと口、口に入れて、
「おや、おいしい赤飯だよ、お絹」
と絹を見、岩松を見た。岩松は、誰の顔も見ようとはしない。絹が銚子《ちようし》を持って酌《しやく》をしようとした。が、岩松は、
「お前の酌なんぞ、いらねえ」
と銚子を取り上げ、自分で自分の盃《さかずき》に酒を注いだ。酒があふれて、ちゃぶ台にこぼれた。岩松はその盃を一気に飲み干し、すぐにまた注いだ。四、五杯立てつづけに、岩松はあおった。房は仁平を見た。仁平が困ったようにうなずいて見せた。
「岩松、お前急にむっつりして、どうしたのさ」
とりなすように房が言った。
「どうしたあ? そんなこと聞かなきゃ、わかんねえのか、おっかさん」
はじめから岩松の声は尖《とが》っていた。
「銀次さんが来たのが、気に入らんのかねえ」
「おお、気にいらなくて悪かったな。え、お絹」
絹はいきなり名前を呼ばれて、はっと顔を上げた。仁平がなだめるように言った。
「岩松。あの男はな、気のいい男でな。毎日のようにまんじゅうだ、せんべいだと届けてくれる男でな」
「…………」
「半月程前、俺が腹痛《はらいた》起こした時もよ、夜道を駈《か》けて医者を呼んで来たりしてな。何かと世話になっているんだ」
「…………」
「そうだよ、岩松。お父《と》っつぁんの言うとおりだよ。銀次さんには、親も兄弟も女房もないだでな。わたしたちのことを、何だかほんとの親みたいだなんて、やさしいこと言ってくれてねえ」
「…………」
「何もお前、そんなに怒ることないで」
「そうかね、おっかさん。そんなものかね」
岩松は片膝《かたひざ》を立てた。行灯《あんどん》の灯影がゆらいだ。四人の影もゆらいだ。
「俺はな、船乗りだ。年に一度帰って来て、春にはまた海に出て行く船乗りだ」
「うん」
仁平がうなずく。
「言ってみりゃあ、年中家をあけてるわけだでな。親にも女房にも、満足なことはしてやれん」
「そんなことないで、今日だってたんまり小遣《こづか》いやら土産《みやげ》を持って来てくれたでな」
房があわてて言う。岩松は、江戸に行けば江戸で、大坂に行けば大坂で、その度に半襟《はんえり》だの櫛《くし》だのと細やかに買いととのえて、何航海かするうちに、大きな包みとなるほど土産を買いこむ。喜ぶ絹や親たちの様子を目に浮かべながら、あれこれと買うのが旅先の岩松の楽しみだった。
「いや、俺はよくわかったよ。何をしてやるより、傍《そば》にずっといるほうが、親孝行だとな。遠くに離れている俺なんぞより、毎日顔を見せる銀次とかいう野郎のほうが、さぞ頼りになるんだろうさ」
「そ、そんなこと、あるわけないで。な、お父っつぁん」
房がいよいよ困った顔になる。
「いや、遠い親戚《しんせき》より、近い他人ってな。よく言ったものよ。いつもかつも家を留守にしてる倅《せがれ》より、毎日まんじゅうだのせんべいだの持ってくる近所の男のほうが、かわいいってえもんだ」
「馬鹿を言うでないで、岩松」
房がたまりかねて、声をふるわせた。
「ああ、馬鹿だよ。馬鹿だからこんなことになったんだ。な、お父っつぁん。え、お絹。今、奴《やつ》が入って来る時、何と言いやがった。お絹さんは戻《もど》ったかい、と入って来たじゃねえか。ありゃあ一体どういうことだい」
「どういうことってお前、別にどういうことでもないで。なあ、お絹」
「どういうことでもねえ? ここの家に入って来るのによ、三人いるんだ。何もお絹の名を呼ぶことはないだろうが。ええ、そうだろうが。お絹! お前と野郎は、一体どういう仲なんだ」
「どういう仲? お前さんは何を勘ちがいしとるの」
黒目勝ちの目が、真っすぐに岩松を見た。
「白っぱくれるな、お絹。何の仲でもねえ奴が、袖《そで》のほころびを縫ってくれ? 冗談じゃないぜ。袖のほころびぐれえ、男だって縫えねえわけはねえ。俺たち船乗りは、いちいち故郷《くに》の女房にほころびを縫ってもらいやしないぜ」
三人は押し黙った。岩松は、銚子《ちようし》に口をつけて、ごくごくと飲んだ。
「お絹! お前は奴《やつ》の、着物だの下着だの、今までずっと、その手に取って、つくろってやっていたんだな。それが赤の他人のすることか」
「まあ、お前さん! それはあんまり……」
「そうだよ、岩松。お絹はそんな女じゃないよ」
房がかばう。仁平が腕を組んで言った。
「なるほど。言われてみりゃあ、岩松の怒るのも当然だで。つい心安だてにしたことだが、しかし岩松、お絹は決してそんな女ではないでな。それは誰よりもよく、お前が知っているでないかのう」
岩松は首を横にふって口を歪め、
「わかった、わかった。どうせ俺は、お父《と》っつぁんおっかさんの本当の倅《せがれ》じゃねえ。そんなに銀次って野郎がかわいいんなら、俺の代わりに倅にしてくれてもいいんだぜ。そしてお絹の亭主にしてくれても、いいんだぜ。天涯《てんがい》孤独で、親切で、いい男前なら、誰にも何の文句もないというもんだ」
岩松の目尻に光るものがあった。
「何て情けねえことを言うんだ、岩松。お前は、俺たちのたった一人の倅でないか。あんまりなことを言って、親を歎《なげ》かすもんでないで」
さすがの仁平の声もふるえた。と、絹がついと立ち上がった。かと思うと、障子《しようじ》をあけて暗い外に出て行った。
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