日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

海嶺21

时间: 2020-02-28    进入日语论坛
核心提示:己が家     五 今日も昨日にひきつづいて、朝からからりとした秋晴れである。久吉と音吉は、それぞれ大きな風呂敷を肩から
(单词翻译:双击或拖选)
己が家
     五
 今日も昨日にひきつづいて、朝からからりとした秋晴れである。久吉と音吉は、それぞれ大きな風呂敷を肩から斜めに結んで歩いて行く。音吉の風呂敷の中には、小作頭《こさくがしら》伝八への、源六の手紙が入っている。久吉の風呂敷は空である。
朝飯が終わるとすぐ、二人は源六に呼ばれた。
「この手紙はな、音吉。大事な手紙だでな、落とさずに伝八の所に届けるのだぞ」
言われて渡された手紙を、音吉は源六の前でくるくると風呂敷に包んだ。そして、途中でほどけぬように、音吉は風呂敷のまん中を細ひもで結んだ。
「うん、相変わらず音吉は周到じゃのう」
源六は満足げにうなずき、
「伝八はきっと、畠《はたけ》の物を何か背負わせてくれるにちがいない。久吉も大きな風呂敷を持って行くがええ」
言われて、二人は揃《そろ》って外へ出た。
外へ出るや否や久吉は、
「俺、使いが大好きや。走ろう」
と、音吉を促した。
「どうして走る?」
「どうしてって、音、走ったら時間が浮くがな。山には木《もく》まんじゅう(あけび)や、茸《きのこ》がたくさんあるだでな」
そう言いながら、久吉は走り出していた。が、たちまち二人共|片腹《かたはら》が痛くなった。
「いかん、食べてすぐ走るのは」
久吉ががっかりしたように言い、二人は顔を見合わせて笑った。
久吉が熱田から戻《もど》っておよそ四十日になる。長助が江戸に行ったと知った時、又平は激怒《げきど》した。そして長助の代わりに、久吉を源六の家に奉行させることにしてしまった。
今まで音吉がしていた庭|掃《は》き、水汲《みずく》み、拭《ふ》き掃除《そうじ》などは久吉がするようになった。が、音吉は樋口家の将来の跡取りとして、算盤《そろばん》や字を習うために、仕事の合間を見ては、良参寺の寺子屋にやられるようになった。音吉の仕事は、ほとんど源六の傍《そば》にいて、源六の小間使いをすることであった。
源六が外に出る時は、必ず音吉が供をする。こうして音吉は、源六から、千石船《せんごくぶね》の生活や体験、その他様々な知識を毎日のように与えられるようになった。
久吉は、琴と音吉が許婚者《いいなずけ》になったと聞いた時、目を丸くして驚いたが、すぐににやりとして音吉の耳にささやいた。
「音吉、俺とお前で、お琴ば仲間にせんか」
「仲間?」
「そうや。別に減ることあらせん。お前だけでひとりじめすることはないでな」
「そ、そんな」
驚く音吉に、
「何や、俺とお前は、友だちやないか。けちけちするな」
「けちとちがう!」
音吉が気色《けしき》ばむと、久吉は、
「阿呆《あほ》やなあ。冗談や、冗談や」
と、笑ったものだった。それ以来、音吉は何となく久吉の言葉が気にかかる。
(あれは冗談や)
そうは思っても気にかかる。
道べの白い芒《すすき》が秋日に輝く。松の幹に絡まる葛《つた》の葉はまだ色づかない。山道にかかった二人の耳に、潮騒《しおさい》がひびく。
同じ家に奉公するようになったが、二人がゆっくりと話し合う暇はない。音吉はいつも源六の傍《そば》にいるからだ。久吉が来てからは、音吉は源六の隣室に寝るように命じられた。
「なあ。音吉。今朝、お琴はみんなと一緒に飯食わなかったな」
久吉はにやにやした。
「そうやったな」
音吉もそのことは気になっていた。
「お琴は、ほかの部屋で、一人で飯食ってたな」
「ふーん。そうか」
音吉はそこまでは気がつかなかった。
「なんでか、知っとるか」
御蔭参《おかげまい》りから帰って来た久吉は、体も一段と大きくなった。
「知らん。どうしてや?」
音吉が答えた時、久吉が、
「や、でんでん虫や」
と、傍《かたわ》らの茅《かや》の根に手を伸ばした。でんでん虫はついと頭をちぢめた。久吉は自分の肩にでんでん虫をのせ、
「音は何も知らん奴《やつ》やな。俺が来てから、お琴はこれで二度目の別鍋《べつなべ》やでえ」
「ふーん」
音吉は山道に映る自分の影を見ながら、ふっと母の美乃のことを思った。美乃は時々、別の部屋で、別鍋で炊《た》いた飯を食べる。それは音吉が幼い時からのことだった。
「母さま、どうしてこっちで一緒に食べせん」
音吉が尋《たず》ねると、
「定めやからなあ」
美乃はそう答えるだけだった。女の月の障《さわ》りには、鍋も席も別にする慣《なら》いだったのだ。が、音吉は何の定めか知らなかった。
「あのな……」
久吉は道べの芒《すすき》の穂をぐいと引きぬいて言った。
「音、お琴はもう女になっているんだで」
「女になっている? お琴は生まれた時から女でないか」
「阿呆《あほ》やな。この間までは子供だったわ。女ではなかった」
「けど、女の子でないか」
「わからんな、音は。女になったいうのはな、子を生める体になったということや」
「ふーん」
音吉は何のことか定かにはわからない。だが胸のあたりがもやもやと、妙な心地がした。
「音、女は嫁に行くまで、みんなのものだでな。いつ誰が夜這《よば》いに行っても、かまわんのやで」
「そんな……お琴は俺の……」
「許婚者《いいなずけ》だと言うんやろ。そんなのかまわん」
このあたりの若者たちは、時折《ときおり》大挙して、他の村に夜這いに行く。時には男同士が鉢合《はちあ》わせすることもあった。そんな話は音吉も聞いている。だが、琴の所に他の男がやって来るのは、理不尽な気がした。音吉のその困ったような顔を、久吉はニヤニヤ見ていたが、
「お、木《もく》まんじゅうや」
と、あけびを指さした。卵ほどの大きさのあけびは、紫色に熟していた。久吉は手を伸ばしてそのあけびを取ると、一つ二つ音吉にも与えて、たちまち自分の口を紫にした。音吉はあけびを手に持ったまま、木の間越しに紺青の海を左手に見おろした。まっさおな空を映して、海もまたあくまでも青い。その向こうに鈴鹿山脈がくっきりと見える。二人は頂上に立って少しの間景色を眺《なが》めた。音吉は、青い海を眺めているうちに、何かたまらなく琴がいとしくなった。胸をしめつけられるような思いなのだ。こんな気持ちになったのは初めてだった。
「何を考えとる。行こう行こう」
久吉は三つ目のあけびを口に入れながら言った。歩き出すと、向こうから子供が二、三人、竹鉄砲を打ちながらやって来た。すぽっ、すぽっと快い音がする。槙《まき》の実を弾丸《たま》にしているのだ。去年まで、音吉も槙の実で同じことをして遊んだ。が、今年はもう竹鉄砲をつくる気にはならない。音吉も少しずつ、子供の世界から大人の世界に移りつつあった。
やがて二人は小山を越えて、田上への田舎《いなか》道を歩いていた。両側に狭い稲田がつづく。右手の山に炭焼きの煙が白く立ちのぼっている。このあたりの炭はうばめがしを焼いてつくる。叩《たた》くと金属音を発するほどの硬さだ。うなぎの蒲焼《かばや》きに向く炭だ。
「あ、もう血の池だ」
音吉が言い、道べの池を指さした。
「血の池? ああ義朝《よしとも》の首を洗った所な。只《ただ》の古池でな。珍しくもないわ」
久吉は興味がなさそうに言った。が、音吉は小さなその古池に、良参寺の地獄極楽の絵を思った。ここでまさしく源義朝の首が洗われたのだ。何百年も前の話にせよ、その事実があったことに、音吉は感ずるものがあった。
この近在で、大人も子供も、義朝の名を知らぬ者はない。近くに内扇《うとげ》という村落がある。内扇では、正月の十五日間は餠《もち》を食べず、強飯《こわめし》を手づかみで食う習慣がある。それは謀殺《ぼうさつ》された源義朝への同情からであった。
平治《へいじ》元年(一一五九)十二月二十八日、源義朝は四人の従者を従えて都から落ちて来た。六波羅《ろくはら》の合戦で、平家に破れたからである。従者の一人|鎌田政家《かまたまさいえ》の舅《しゆうと》、長田忠致《おさだただむね》が野間の荘園《しようえん》の司《つかさ》であったからだ。
長田の館《やかた》に至る途中、義朝一行は内扇に着いた。折《おり》から農家では、正月の餠《もち》つきの為に米をふかしていた。空腹と疲れに義朝は餠のつき上がるのを待てず、その強飯《こわめし》を手づかみで食った。
その日義朝一行は長田の館に辿《たど》り着いた。長田一族は娘婿《むすめむこ》の主君義朝を、下へもおかぬもてなしをしたが、年が明けるや長田は変心した。義朝の首を平清盛《たいらのきよもり》に献じて、恩賞を得ようとしたのである。
こうして正月二日、先ず鎌田政家が殺され、翌三日、その変事を知らぬ義朝は入浴中不覚にも謀殺《ぼうさつ》された。
この義朝に、内扇の人々は同情して、今もなお正月に強飯を手づかみで食べるのだ。音吉も久吉も、寺子屋で、良参寺の和尚《おしよう》から幾度となく聞いて知っている。
「せめて木太刀《こだち》の一本でもあらば……」
と、義朝が無念の最期《さいご》を遂げた話は、幾度聞いても音吉の心に沁《し》みる。自分がその場にいたなら、鎌《かま》でも鍬《くわ》でも義朝に差し出して助太刀したものをと思うのだ。
義朝の首を挙げた長田は、池の水に首の血を洗って清盛に届けたが、この池が今も血の池と言われる九間に三間程の半月型の池なのだ。「只《ただ》の池」と久吉が言ったが、義朝の死後、世に凶事《きようじ》がある度に、この池は血のように赤くなると伝えられていた。音吉はなぜかそれが信じられるのだ。
血の池を過ぎて少し行くと、右手に磔《はりつけ》の松と言われる大きな松の木がある。長田は義朝の首を平家に献じたが、平|重盛《しげもり》の怒りを買って、何の恩賞をも与えられなかった。只、壱岐守《いきのかみ》という名を与えられたに過ぎない。やがて平家が衰え、頼朝の時代が来た。頼朝は義朝の長子である。長田父子は、最早《もはや》身の置く場所もない。止むを得ず自らの罪状を頼朝の前に申し出た。その長田に頼朝は言った。天下|平定《へいてい》の暁《あかつき》は美濃尾張《みのおわり》を汝《なんじ》に与えるであろう。感奮《かんぷん》した長田父子は大いに軍功を立て、やがて頼朝に召し出された。このくだりの話が、音吉は好きだ。和尚《おしよう》の言葉によれば、
「さあ喜んだのは長田|父子《おやこ》じゃ。約束どおり『美濃尾張』を賜《たまわ》る日が来たとな。長田父子は喜び勇んで頼朝公の前にまかり出た。するとな、頼朝公は長田父子をはったと睨《にら》み、この裏切り者|奴《め》が、今日こそ約束どおり、『身の終わり[#「身の終わり」に傍点]』を与えてやろうぞ、と縄《なわ》でぐるぐる巻きにし、磔《はりつけ》の松に打ちつけたのじゃ。長田父子は色を失ったがもう遅い。その時の辞世《じせい》がこうじゃ。
永らえて命ばかりは壱岐守《いきのかみ》
美濃尾張をば今ぞ賜《たまわ》る」
 子供たちはここで、げらげらと笑う。幾度も聞いているが、誰も飽きる者はない。
「あれが長田の松やな」
久吉は両手をひろげ、白目《しろめ》をむき、舌を長く出して磔になった姿をして見せる。
「磔になるのは悪人やなあ、久吉」
「そうよ。切腹《せつぷく》ならまだしも、磔は恥さらしやからな」
音吉は、ひときわ太い老松に目をとめる。長田父子の最期《さいご》の形相《ぎようそう》が目に浮かぶ。血の池と言い、磔の松と言い、生まじめな音吉には、血なまぐさい地獄の中を行くような気持ちだ。が、久吉は不意に、手ぶりもおかしく踊りはじめた。
「御蔭《おかげ》でさ、するりとな、脱《ぬ》けたとさ」
踊りながら久吉は、音吉にも踊れと言う。音吉は首を横にふった。
「あっちから人が来るでえ」
向こうから竹馬に乗った子供が二人やって来る。
「かまわんがな」
久吉は言ったが、ひょいと思い出したように、
「音吉、お前、お琴の乳房《ちち》をつかんだ男を覚えているやろ」
と、踊りをやめた。
「ああ、知っとる。岩松と言う舵取《かじと》りやろ」
「へえー、岩松と言うのかあの男。俺な、あの男に熱田で会ったわ」
「熱田で?」
「そうや。あの男、強いでえ」
久吉は截断橋《さいだんばし》の上で、岩松に助けられた時のことを詳しく話した。
「そうかあ。危なかったなあ」
「なあに、いざとなりゃあ、川に飛びこむつもりだったでな」
久吉は威張って見せた。そして不意に声を低め、
「音吉、あの人の嫁さんな、観音《かんのん》さまみたいだで。きれいで、やさしうて」
大げさにうっとりした顔を、久吉は空に向けた。白い小さな雲がひとひら、北のほうに遠く浮かんでいる。
「ふーん。そんなにきれいか」
お琴より美しくはないだろうと音吉は思った。
「きれいも何も、あんな顔は見たことないわ。小野浦にも野間にも、あんなのは一人もおらん」
「一人も?」
音吉は不服だった。
「お琴なんか、及びもつかんでえ」
久吉はからかうように言った。音吉は赤くなって足を速めた。が、あの岩松の妻が美しくやさしいと聞いて、何かひどく不思議な気がした。
「久吉、あの岩松って、いい人やろか、悪い人やろか」
「そうやなあ。多分悪い男やろ」
けろりとして久吉は言う。
「だって、お前助けられたんやろ」
「助けたは助けたけど、あれは気が向いたからやったことよ。あの後な、あいつ、つばもひっかけんでえ」
久吉は岩松に冷たくあしらわれたことを、忘れてはいない。
「俺はそんなに悪い人やないと思うがな」
「お琴の乳房をつかんでもか」
「そんなこと、久吉でもするやろが」
「なにい? 音吉、お前いつから一人前の口を利くようになったんや」
久吉は目をむいて見せたが、
「音の言うとおりや。お琴の乳房をつかむくらい、朝飯前や。音吉気をつけるとええで。俺は何をするかわからん男だでな」
と、げらげら笑った。音吉は、久吉を不思議な人間だと思う。いつも喧嘩《けんか》になりそうな所で、喧嘩にならない。強引《ごういん》かと思うと、ひょいと退《ひ》く。怒ったかと思うと、急に笑う。久吉は憎めない友だちだった。
「あのな、音吉。あの岩松という男は、もう千石船《せんごくぶね》に乗らんそうや」
「ふーん、なしてや」
「長助と同じや。御蔭参《おかげまい》りに脱《ぬ》け出して、もう船に乗りとうなくなったんや。無理もないわ。あんなやさしい嫁さん持っていたら、そりゃあ、自分の家にいるのが一番いいでな」
久吉は岩松の妻絹から、岩松はもう千石船に乗らないと聞いて来たのだ。だが久吉は知らなかった。岩松が家に帰って半月後に、同じ長屋の銀次が引っ越して行ったことを。そしてその銀次のために、岩松が千石船に戻《もど》らなかったことを。
「したらもう、あの人には会えせんのか」
音吉は、兄の吉治郎と共に、宝順丸にしのびこんだ夜のことを思い出した。どっしりと重い米包みを、音吉に返してくれた岩松に、もう一度会いたいような気がした。
いつの間にか二人は、一里近い道を歩いて、小作頭《こさくがしら》の伝八の家に近づいていた。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%