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海嶺119

时间: 2020-03-18    进入日语论坛
核心提示:四「船の一隻や二隻で、戦になるわけもないやろ」岩松が言った時、つづいてまた一隻、そしてまた一隻と、ボデルダ島の蔭からカヌ
(单词翻译:双击或拖选)
「船の一隻や二隻で、戦になるわけもないやろ」
岩松が言った時、つづいてまた一隻、そしてまた一隻と、ボデルダ島の蔭からカヌーが現れた。
「あれっ!? 舵取《かじと》りさん、まだまだ来るで」
久吉は岩松の脇腹《わきばら》を突ついた。
と、その時、アー・ダンクが大声で喚《わめ》きながら、家のほうに走った。つづいて男たちがより糸や材料を抱え、三人を置き去りにして走って行く。みんなが入りこむと、すぐに家の戸は閉ざされた。
「わしらも逃げなくてもいいのか」
久吉が顔色を変えた。
「さあな」
岩松は糸をよる手をようやくとめて、砂浜にいる人々の様を一|瞥《べつ》した。家の中に入りこんだのは、酋長の家の者ばかりで、他の家の者たちは笑顔さえ見せて、近づくカヌーを眺《なが》めている。
「けんかでも戦《いくさ》でもなさそうだな」
岩松は言って、再び糸をより始めた。
「そうやろか」
久吉は疑わしげにカヌーをみつめている。カヌーは全部で五|隻《せき》であった。どのカヌーにも、七、八人の男たちが乗っている。
「そうや。もしけんかか戦なら、他の家の者たちも、家ん中に逃げこむわ。さもなくば、弓矢を持って勢揃《せいぞろ》いするわ」
「そう言えばそうやな」
音吉も言い、ようやく安心したように久吉もうなずく。
何日か前から、岩松も、音吉も久吉も、髪をインデアンたちと同じようにうしろで結わえることにした。杉の皮の着物を着、髪の形もインデアン風になったが、やはり三人の顔は日本人の顔であった。
鴎《かもめ》がやさしい声で啼《な》きながら、今入って来た五|隻《せき》のカヌーの上を舞う。その上に、ひと所雲が切れて、薄青い空がのぞいていた。カヌーは静かに近づいた。と、乗っていた男たちが立ち上がって、櫂《かい》をふりまわしながらうたい始めた。太鼓が鳴り、鳴り物が鳴る。
「何や、お祭りやな!」
久吉がにこっと笑った。
「さあてな」
岩松は太股《ふともも》の上で糸をよりながら、視線はカヌーから離さない。
(遂に来たぞ!)
岩松は、この間書いた手紙を肌身《はだみ》離さず持っていた。杉の皮に包み、より糸で幾箇所か結んである。杉の皮は表皮の下の柔らかい部分である。この柔らかい皮からは、毛布よりも柔らかい布を織ることも出来る。敷物もできれば、上着を織ることも出来る。扱い易《やす》いその皮に包んで、手紙を入れて持っていたのだ。あの日以来今日まで岩松は、他の土地からやってくる者を待っていた。その待っていた他の土地の者が、今やって来たのだ。岩松の胸は躍《おど》った。
カヌーは、磯のすぐ手前でとまった。同時に賑《にぎ》やかな歌もやんだ。一瞬、浜は静かになった。うたっていた男たちはカヌーの中に坐《すわ》り、若い逞《たくま》しい男が、一人立っていた。その若者は、大声で何か喋《しやべ》り始めた。男はこう言い始めたのである。
「親愛なる諸君、わしは隣村からやって来た。何しにやって来たか。それは酋長《しゆうちよう》の娘、可憐《かれん》なピーコーをもらいにやって来たのだ。ピーコーをもらうために、わしは毛布を何十枚でも支払う。どうかわしの願いを聞いてほしい」
朗々《ろうろう》たる声であった。これが求婚の儀式の一つであった。
「何を言ったんやろな、音!」
「さあ、わからんわ。ピーコー、ピーコーとは言ったな」
「そう言えばそうやな。ピーコーをもらいに来たんやろか。な、舵取《かじと》りさん」
「なるほど、そうかも知れん」
もし、ピーコーの求婚者たちであったなら、手紙を渡すことは、危険なことだと岩松は思った。が、見たところ、カヌーの男たちも、この土地の男たちと同じ種族に思われた。同じ種族なら、字は読めないにちがいない。読めなければむしろ安全だと岩松は考えた。
若者の挨拶《あいさつ》が終わると同時に、全員がカヌーを渚《なぎさ》に引き上げた。そしてカヌーの中から毛布を手に手に持って、列をつくった。その先頭に立ったのは、六十近い呪術師であった。呪術師は、赤、青、黄色で彩色した鮮やかな衣服で身を包み、顔を真っ赤に塗り立てて、髪には束になった鷲《わし》の羽が風になびいていた。そして片手には木製の、もう一方の手には帆立て貝でつくった鳴り物を持っていた。そのあとに太鼓がつづき、毛布を持った若者がつづいた。挨拶をした若者は列の中ほどにいた。鳴り物に合わせて、一行は歌をうたいながら浜を練り歩いた。幅四、五十|間程《けんほど》の狭い浜だ。
「やっぱりお祭りやな、舵取りさん」
久吉は糸をよることも忘れ、立ち上がって眺《なが》めている。
「お祭りなら、お神輿《みこし》がある筈《はず》や」
音吉が言う。
「そうやな。お神輿のないお祭りはあらせんな」
小野浦では祭りに神輿はつきものであった。
毛布を担《かつ》いだ男たちが右に左に蛇行《だこう》しながらうたう。
「たくさんのヘイ・タイドやな」
音吉が感歎《かんたん》の声を上げる。ヘイ・タイドとは毛布のことだ。三人がフラッタリー岬に漂着して四十日程経った。今では三人共、幾つかの名詞や、短い言葉を覚えた。中でも、音吉が一番覚えが早い。
「ほんまにたくさんやな。ヘイ・タイドの大売り出しかな」
久吉が首をひねった。日本にはなかった毛布が、三人にも与えられている。毛布と言っても、所々擦り切れて、汚点だらけになった毛布だった。与えられた時は、小便の臭いが沁《し》みこんでいた。恐らく赤子の揺籃《ゆりかご》にでも使っていたぼろ毛布なのであろう。それを洗って三人は使っている。夜は掛け布団の代わりに体にかけ、昼は着物代わりにそれをまとうこともある。インデアンたちも、毛布をまとうことが多い。とにかく毛布は貴重な品であった。たとえぼろでも三人にとって毛布は大きな財産であった。その毛布を、男たちは何枚となく担いで、行列をつくっているのだ。
浜の者や、音吉、久吉が行列にみとれている間、岩松の心は波立っていた。
(今だ! 今のうちだ!)
岩松はさりげなく、酋長《しゆうちよう》の家の閉じられた戸口を見た。あの戸口がひらかぬ前に、何とかして誰かに書状を手渡したいのだ。が、浜には人の目が多い。どうしたら気づかれずに手渡すことが出来るだろう。よい思案も浮かばぬうちに、行列は酋長の家の戸口にとまった。と、戸が中からひらかれた。その入り口に、毛布が次々と積み重ねられた。が、中から顔を出す者は一人もいない。
男たちは再びカヌーに戻《もど》った。そしてまた同じように毛布を担《かつ》ぎ、歌をうたって、今度は入り口に向かって真っすぐに歩いて行った。毛布がまた積み重ねられた。依然として、酋長の家からは、顔を出す者がない。男たちは更に一段と声を張り上げてうたい、あたりを練り歩き始めた。男たちはこううたっていたのだ。
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