日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

海嶺136

时间: 2020-03-18    进入日语论坛
核心提示:七「音」窓ガラスを磨いている久吉に呼ばれて音吉はふり返った。音吉は今、マクラフリン博士の寝室で、床にモップをかけていた。
(单词翻译:双击或拖选)
「音」
窓ガラスを磨いている久吉に呼ばれて音吉はふり返った。音吉は今、マクラフリン博士の寝室で、床にモップをかけていた。暑い午後のひと時だ。グリーンの妻がズボンの裾《すそ》を上げてくれ、シャツの袖《そで》も詰めてくれたので、洋服姿がそれほど奇妙には見えなかった。金色の房の下がったビロードの天蓋《てんがい》つきの寝台が、部屋の中央に置かれ、その傍《かたわ》らに馬の毛で織ったソファがあった。今、音吉は、ガラス窓があるということは、何と家の中を明るくするものかと改めて驚きながら、油をひいた床を拭いていた。
フラッタリー岬のマカハ族の家は、天窓以外窓はなかった。昼日中でも夜のように暗い家《や》ぬちだった。小野浦の家にしても、戸をあけ放しておいてさえ家の中は薄暗かった。煤《すす》けた茶色の油障子《あぶらしようじ》が家の中をいつも陰気にしていた。だがここでは、光が真っすぐに差しこんでくる。それは、音吉たちにとって大きな驚きであった。しかも、家の中から戸外が丸見えなのだ。そのガラス窓を、久吉は今一心に拭いていた。そして拭きながら言ったのだ。
「なあ、音、何でこんなに透きとおるものが、日本にはないのかな」
「ほんとやな。こんな便利なものがあったら、どんなに家の中が明るくなることか……」
「そうやな。俺な、音、日本に帰る時、何ぞ土産《みやげ》をやると言われたら、このギヤマンの窓をもろうて帰りたいわ」
「全くや。だけど、途中で割れてしまうわ」
「何とか割れんように、一枚ぐらい持って帰れんかな」
このフォート・バンクーバーに来て、既《すで》に一か月は過ぎた。三人は日本に帰る日は今日か明日かと、毎日のように待っていた。だが、三人は知らなかった。イギリス本国からこのフォート・バンクーバーに船が来るのは、年に僅《わず》か一度であることを。しかも、その船はハワイに寄港し、南米のホーン岬を廻《まわ》ってロンドンに帰るには半年もかかる。更《さら》にロンドンから南アフリカのケープ・タウンを経、シンガポールを経由して日本まで行くには、更に長い月日がかかる筈《はず》であった。むろん、日本までがいかに遠いかは、一年二か月の漂流で、三人は身をもって知っている。だが、壊れた船でも一年二か月で着いたのだ。帆を張った船であれば、四、五か月もすれば着くのではないかと、三人の胸は明るかった。
三人はこの一か月、午前中二時間、グリーンから英語を習った。グリーンはマクラフリン博士から、出来得る限り言葉を教えるようにとの命を受けて、実に熱心であった。二時間が二時間半、時には三時間に及んだ。三人は飽きるほど同じ言葉を聞かされた。そのお蔭《かげ》で、僅か一か月の間に、かなり多くの名詞を覚えた。朝夕の挨拶《あいさつ》や、簡単な会話さえできるようになった。習い始めてすぐに岩松はこう言った。
「いいか、言葉だけは、どんなことがあっても覚えにゃならんで」
久吉が不満そうに、
「舵取《かじと》りさん、何でや。異国の言葉なんぞ覚えてみたって、すぐに日本に帰るんやで」
「むろんそれはそうや。明日にでも船が迎えに来れば、半年後には日本や。だがな、久公、わしは岬でつくづく思った。殺すと言う言葉を、もし音が覚えておらなんだら、わしは何も知らんで殺されたかも知れせんとな。目の前でわしらを殺す相談をしていても、言葉がわからんと、みすみす殺されるだけや。そのことが岬でようわかったのだ」
「なるほど、それもそうやな。だけどな舵取りさん、ここの人は親切やで。言葉は教えてくれる。毎日寺子屋にはやってくれる。仕事はろくにさせんし、食物も残飯《ざんぱん》ではないで。まっさらなものをたんとくれるでな。殺される心配はあらせんわ」
久吉の言うとおりであった。三人は客人扱いであった。博士は三人を日本に送り届けて、出来れば通商を申しこみたいと思っている。だから三人は、博士にとっての大事な客人であった。
毎朝一時間、博士の家で学校があった。それはフランス人や、インデアンたちのための学校であった。やはり言葉を教えるのが主たる目的であった。新開地であるこのフォート・バンクーバーには、ヨーロッパの女はほとんどいなかった。フランス人、ロシヤ人、インデアン、そしてイギリスの男たちが、何れもそれぞれの国語で語っていた。だから、チヌークジャーガンと呼ばれる商取引用語は、これらの言葉が雑多に組み合わされ、共用語として使われていた。そのために毎朝の一時間は、この博士の家で学校が開かれた。それを久吉は寺子屋と呼んだのだ。日曜日には、同じく博士の家で子供たちのための日曜学校があり、つづいて大人たちの礼拝もあった。この礼拝にはフランス語が使われた。フランス人が多かったからである。
毎朝ひらかれる学校では、英語と共に道徳や作法《さほう》も教えられた。こうして異国の子供たちと共に、岩松たち三人も学んでいたのである。
「そうや、殺される心配はないかも知れせん」
岩松はちょっと間を置いて、
「しかしなあ、情けないことに、人間という者はわからんもんでなあ。今は親切にしてくれていても、いつ心が変わるかわからんでな」
三十歳の岩松は、十六、七の久吉や音吉たちとはちがって、単純ではなかった。
その時の岩松の言葉を思いながら、久吉は窓を拭く手をとめて、
「なあ音……」
と、一心に床にモップをかけている音吉を見た。
「何や? 手を休めんとものを言え」
音吉は、仕事の手を全くとめて話をする久吉をたしなめた。久吉は気にもせず、
「なあ、音、舵取《かじと》りさん、大丈夫やろな」
「大丈夫? 大丈夫って何のことや」
「ミスター・グリーンのご新造さんとよ」
「何を言う、くだらん」
「だってな、蝮《まむし》のご新造の例があるでな。大体舵取りさんは、女に好かれる質《たち》だでな」
「それはそうやけど、舵取りさんは、女など見向きもせんわ」
「だけど音、覚えているやろ。いつか千石船《せんごくぶね》に握り飯を食いに行った時のことな」
「…………」
「お琴の乳ば、ぎゅっとひっつかんだの、あの舵取りさんやで」
「ああ、覚えとるわ。けどな、あん時は舵取りさん、きっとどうかしてたんや」
「音、男は時々、あんな気持ちになることがあるでな。だけど、女子って、気持ちのわからんもんやな。舵取《かじと》りさんは滅多に口も利かねば、にこっともせん。それなのに、熱田にはあんないいご新造がいるし、岬では蝮《まむし》のご新造にはえらい惚《ほ》れられようやった。それに、あの拝み屋の女な、あれも舵取りさんに色目《いろめ》を使うたで。一体、舵取りさんのあの愛想のない顔のどこがいいんかな。俺のほうが、よっぽど愛嬌《あいきよう》あるのにな」
そう言って、久吉は声を立てて笑った。音吉も笑って、
「舵取りさんとわしらでは、月とスッポンや。舵取りさん苦味《にがみ》走った男前だでな」
「そんなら、俺は苦味が足りん言うことか」
久吉は軽口を叩《たた》いて、
「とにかくな。あの岬で蝮を怒らせたのは、ご新造とのことがもとだでな。ここでは誰にも惚れられんで欲しいわ」
「それはそうや」
音吉もうなずいた。牧場のほうで牛の鳴く声がした。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%