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海嶺141

时间: 2020-03-18    进入日语论坛
核心提示:四「あいたた」「あいたた」久吉も音吉も、ベッドの中で腹をおさえて呻いていた。翌日の日曜日の朝のことだ。朝食に出て行かぬ三
(单词翻译:双击或拖选)
「あいたた……」
「あいたた……」
久吉も音吉も、ベッドの中で腹をおさえて呻いていた。翌日の日曜日の朝のことだ。朝食に出て行かぬ三人に、グリーンが部屋をのぞきに来た。グリーンの顔を見ると、久吉は、
「あいたた……」
と、一層大声を上げた。グリーンが、
「ホワッツ ザ マター ウイズ ユー?(どうしました)」
と驚いて駈《か》け寄った。腹をおさえている二人に、
「ああ、おなかがわるいんですか、それは困りました」
と、グリーンは心配そうに久吉と音吉の腹に、順に手をやった。音吉はそのグリーンの青い目に、申し訳ない気がした。だが、ふだんは正直者の音吉も、今日ばかりは別であった。嘘《うそ》をついているという呵責《かしやく》はなかった。必死だったのだ。岩松が、
「一度や二度、腹が痛い、頭が痛いと言っても、どうせここにいる限り、キリシタンの話は、きかにゃならんで」
と言ったのだが、一度でも二度でもいい、キリシタンの話など、とにかく今は聞きたくなかった。日本に帰って、万一キリシタンの疑いがかかった時、あの寝ている父も、働き者の母も、かわいい妹のさとも、火焙《ひあぶ》りか逆《さか》さ磔《はりつけ》になるのだと思えば、キリシタンと知ってその教えを聞くことは、到底《とうてい》できない気がした。
(嘘も方便と、仏さまでもおっしゃるだでな)
音吉はそう思いながら、しかし、大きなあたたかい手を腹にあてて、心配げに顔をのぞきこんでいるグリーンを見ると、やはり気の毒ではあった。だが一方、痛くない筈《はず》の腹が、少し痛いような気もして来る。
「すぐに医者を呼びましょう」
グリーンはあたふたと部屋を出て行った。久吉が頭をもたげ、
「ミスター・グリーンは、今何と言うて出て行った?」
と、音吉を見た。
「ドクターを呼ぼうと言うたんや。大変なことになったでえ、これは」
音吉はベッドの上に起き上がった。確かに今グリーンはドクターを呼ぶと言った。ドクターとはマクラフリンのことだと音吉は思っている。だから、マクラフリンがここに来るのだと思った。
「えーっ? ドクターだって? そりゃ困った。どうしよう舵取《かじと》りさん」
「どうしようもこうしようもないわ。こうなったら、じたばたせんで、腹痛《はらいた》の真似《まね》をつづけるだけや」
「そうやなあ、それしかあらせんな」
久吉も音吉も、神妙《しんみよう》に枕《まくら》に頭をつけた。と、やがて、グリーンと共にやって来たのは、マクラフリン博士ではなかった。マクラフリン博士も医師ではあったが、このフォート・バンクーバーには医師が幾人かいた。今、グリーンがつれてきたのはその中でも腕利《うでき》きのフランス人の医師だった。当時世界で、フランスの医学が最も発達していたが、むろん音吉たちは知らなかった。いや、それどころか、今入って来た男が医師であることも知らなかった。
グリーンの肩ほどしかない小男だったが、目が炯々《けいけい》と光っていた。
(何やろ、この人?)
音吉は久吉の傍《そば》に立った医師を見つめた。医師は久吉の胸を押しひろげ、まず打診を始めた。そして腹に手をやり、あちこちをおさえた。
(ははあ、これが医者というものかな)
小野浦にいた時も、音吉は医者にかかったことはなかった。長いこと足腰を病んでいる父親でさえ、人からもらった煎《せん》じ薬で間に合わせていた。音吉は緊張した。打診してから医師は、グリーンとグリーンの妻に、質問を始めた。
「昨夜の食事は何でしたか」
「別段変わったものは差し上げておりません。スープとビーフとパン、そして玉ネギです」
グリーンの妻は早口で答えた。
「あなたがたも同じ食べ物でしたか」
「はい、同じです」
「なるほど、わかりました。それでは、お宅の食事のせいではありませんね」
音吉には医師の言っていることが、少しわかった。
(仮病《けびよう》と悟られるかも知れん)
そう思った時、医師は鞄《かばん》の中から丸い筒《つつ》のようなものを出した。厚紙を丸めてつくったものだ。
(何や、あれは?)
と思う間もなく、医師はその筒を、久吉の胸に当て、自分の耳をその筒に当てた。しばらく聞いてから、別の位置に筒を移す。実に慎重な診察ぶりである。やがてその筒が腹の上に置かれた。
(あれで聞いたら、何でもわかるんやろか)
音吉の胸は動悸《どうき》した。久吉は顔をしかめて、かすかにうなって見せた。
「痛いですか。困りましたね」
筒から耳を離すと、医師は久吉と音吉に言った。
「どこかで、何か食べませんでしたか?」
久吉も音吉も、言葉がわからないという顔をした。医師は、
「言葉がよく通じなくて、困ったものだ」
とグリーンに言い、次に同じように音吉の体を見はじめた。そして、グリーンをふり返り、
「この少年は動悸が早い」
と言った。音吉の腹音も、厚紙の筒《つつ》で医師は聴診した。そして、
「大したことはないようです。今日一日スープを与えるだけにして、少し様子を見ましょう」
医師がそう言い、立ち去ろうとした時、久吉が言った。
「あの……スクール・チャーチ……」
言いかけると、「オウ ノウ!」とグリーンが大きく手を横にふり、
「今日は無理です。お休みなさい」
と言い、
「イワ、あなただけ食事をしましょう。二人は夜まで食べないほうがいいと思います」
と、やや安心したように出て行った。
ドアがしまると、久吉が、
「うまくいったわ」
と、にやりと笑った。音吉が、
「舵取《かじと》りさん、ご飯だそうです」
と促した。岩松は笑って、
「俺だけが飯にありつけるわけやな」
と、部屋を出て行った。
「何や!? 俺たちには飯は当たらんのか」
「当たらんわ。晩までな」
「晩まで? そんな殺生《せつしよう》な! 俺、朝飯《あさめし》食わんと、目のまわる質《たち》やで。いやあ、失敗したわ」
久吉が音《ね》を上げた。
「しようもないわ。飯は食わんでも死にはせん。キリシタンの話を聞かんですむだで、喜ばにゃならん」
音吉も空《す》きっ腹をおさえて言った。
「それもそうやな。けど、これから仮病使う時、腹痛はいかんな」
「そうやな。けど、頭が痛うても、おんなじや。どこか具合が悪くて、ふつうに食べるわけにはいかんでな」
「ほんとに、もう、キリシタンご法度《はつと》が恨めしいな、音。神さんなら、どこの神さんを拝んだって、ええやないか。けちけちせんと」
「けど、ご法度はご法度や。首を切られるのは怖いでな」
「信じてもおらん者が、首切られるわけないやろ」
「いやいや、怪しいとなったら、とことん責め上げるのが番所だでな」
「キリシタンの怖いことは誰も知っとるがな。異国に流れたからと言うて、誰がそう易々《やすやす》とキリシタンになるかいな。そこのところがお上《かみ》にはのみこめんのかな」
「のみこめんのやろな。ところでな、久吉、わしも大きい声では言えんが、あの羊を助けたジーザス・クライスト(イエス・キリスト)な。あれが、キリシタンの神さまやろか」
「神さまが磔《はりつけ》になるわけないやろ。そうやろ音吉」
「けどな、衆生済度《しゆじようさいど》という言葉を聞いたことがあるで。とにかくな。あの羊を助けたジーザス・クライストという、神さんか人間かわからんが、あの人はええ人に見えたわな」
「うん、あの人形はええ人に見えた。けど、あれは人形芝居だでな」
「そうは言うがな、久吉。ジーザス・クライストという名前は、もう何遍《なんべん》も聞いているで。わしは、ジーザス・クライストが、キリシタンに関係あるとは知らなんだなあ。アーメンさまかと思っていたんや。アーメンて、いったい何やろな、久吉?」
「何や知らんわ。それより、わしは腹がへってかなわんわ。……けど、音、これこそキリシタンの天罰《てんばつ》てき面とちがうか。事は神さんのことや。それを仮病《けびよう》使ったんやからな」
久吉が俄《にわか》に不安な顔をした。
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