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海嶺142

时间: 2020-03-18    进入日语论坛
核心提示:五「腹もいたくないのに、只《ただ》黙って寝てるのはかなわんわ」久吉は独《ひと》り言《ごと》を言った。音吉は窓ガラス越しに
(单词翻译:双击或拖选)
「腹もいたくないのに、只《ただ》黙って寝てるのはかなわんわ」
久吉は独《ひと》り言《ごと》を言った。音吉は窓ガラス越しに、じっと空を見ていた。
(空だけはおんなじやな。ここも小野浦も)
音吉はふっとそう思った。今見ている空は、雲の垂れこめた空だ。小野浦にもこんな空があったと、音吉は考える。雲が徐々に東に動いている。窓ガラスの一枚に凹凸があって、雲の動きがいびつに見える。それが何となく淋《さび》しい。
「舵取《かじと》りさん」
久吉が呼んだ。
「何や」
ベッドの上にあぐらをかいて、何か考えていた岩松がふり返った。髪の毛が額にかかって、ちょんまげだった岩松とは、別人のようだ。まなざしだけが今日の空のように暗い。
「今度のサンデーは仮病にもなれんわな。また飯が当たらんと、かなわんでな」
「一食や二食抜いたからというて、音《ね》を上げるな。嵐にもまれた時は、食べるも寝るもできんかったやろ」
「それもそうやな。しかしあの時化《しけ》の間は、腹が減ったとも思わんかったな。不思議なものや」
「そうや。今考えると、あの嵐の中で、よくもまああの帆柱を倒したものよ。自分でも信じられんわ」
二人の話を聞きながら、音吉は、
(ほんとや。あの雷の鳴る中で……)
と、帆柱に斧《おの》をふるった岩松の姿を思い出した。
「気をつけろーっ!」
と叫んだ重右衛門の声も聞こえるようだ。ふらつく足を踏まえて、斧を打ち込む間合いを計る岩松の姿、岩松につづいて斧を手に取った利七の、大きく肩で喘《あえ》ぐ姿、それらが昨日のことのようにありありと目に浮かぶ。
(あん時、辰蔵も斧をふるったっけ)
ざんばら髪をふり乱した辰蔵の、雨にぬれた顔も思い出される。
(みんな死んだのやなあ)
しみじみと音吉は思った。そして、自分たち三人が生き残ったことを、自分自身に言い聞かせずにはいられぬ思いだった。
と、ガラス窓に、雨粒が幾つか斜めに当たった。
(また雨か)
そう思った時、久吉が、
「あ、雨やな。もうチャーチの終わる頃《ころ》やろか」
と古い柱時計を見上げた。三人共、既《すで》に時計の見方を知っている。
「まだテン パースト テン(十時十分)や。イレブン(十一時)を過ぎなきゃ終わらせん」
と、音吉が言った。音吉や久吉はむろんのこと、岩松もここに来るまで一度も時計を見たことがなかった。それが、ここに来ると、どこの家にも時計があった。ようやく言葉がいくらかわかるようになって、「あれは何か」と尋ねてみたが、三人には何のことか要領を得なかった。タイムを知らせるものだと言われても、そのタイムがわからないのだ。タイム(時刻)は、物体とちがって目の前に取り出して見せることができない。だが、その時計の針が徐々に動いて、何かを指し示していることが、次第に三人にわかって来た。時計の針の形が、毎朝同じ形になった時に朝食が始まったし、教会に行く時も、必ずグリーンが時計を指して、
「オー! ナーオ イッツ ナインオクロック。レッツ ゴー トゥ チャーチ(おう、九時ですよ。教会に行こう)」
そんな言葉をくり返し聞くうちに、
「ああ、あれは何刻《なんどき》かを知らせるもんやな」
と、わかった。今では時計の見方にまごつくことはない。
「午《うま》の刻がヌーンや」
と、一番先に言ったのは岩松だった。
「まだテン パースト テンか。あーあ、腹が減った。何か食うものないやろか、舵取《かじと》りさん」
「それはあるやろ。ブレッドでも、牛の乳でも、廚《くりや》にはな」
「そうやな。したらこっそりもらってこ」
久吉がベッドから降りた。
「久! お前……牛の乳もブレッドも、グリーンさんのものやで。お前のものではあらせんで」
きびしい岩松の表情に、久吉は口を尖《とが》らせ、
「それはそうやけど、どうせわしらのために用意したもんやろ。したら、ちょっと腹が空《す》いたで食べたと、ことわればええやないか」
「あかん! 黙って人のものに手をつけるのは泥棒や」
「泥棒やないで。後でことわるんや。それでいいやろ、なあ、音」
黙って聞いている音吉に、久吉は助けを求めた。
「久吉、わしは舵取《かじと》りさんの言うこと、本当やと思うで。いくら腹が空《す》いていたからといって、人さまのものに手をつけるのは、それはあかんわ」
「なんや、音まで舵取りさんの真似《まね》をしちょる。あとでことわったらええのとちがうかな」
「ちがう。それにな、グリーンさんたちはチャーチに行ったんやで。日本で言えば宮詣りや。その留守に……慎まなならんで」
「ふーん、……けど、俺盗むんやないけどな」
「わかっとる。でもな、人のものに黙って手をつけるのを、盗むと言うのや」
「わかったわ。あーあ、腹が空いてかなわんわ」
久吉は再びベッドの中にもぐりこんだ。岩松と音吉は顔を見合わせて笑った。その二人に久吉が言った。
「したらな、舵取りさん、もう仮病《けびよう》はやめや。そして今度のサンデーには、チャーチに出るわ」
「チャーチになあ……」
音吉が浮かぬ顔をした。岩松が答えた。
「そのことや。さっきわしも考えていた。どうせわしらはキリシタンの国にいるんや。お上《かみ》から見りゃ、チャーチに出たも出ないも、同じことだでな。キリシタンの国にいたというだけで、お咎《とが》めはきびしいやろ」
「なるほどなあ。キリシタンの国に世話になったら、チャーチに行こうが行くまいが、同じことかも知れせんな」
音吉はがっくりした。
「そうやで、音。だからな、国に帰ったらチャーチに出たも出ないも、そんなことは言わんでもええのや。只《ただ》な、わしらは、キリシタンに決して帰依《きえ》せんかったと、きっぱり言うより仕方ないのや。びくびくするな」
「びくびくするなと、舵取《かじと》りさんは言うけど、なあ、音……」
「そうやなあ。わしらはお伊勢さんや仏さんに手を合わせていたと言い張っても、お上が信用してくれるか、どうか……」
「そうよな。こんなものを着て、こんな頭になって、キリシタンの国にいて……中身まで変わったと思われるな」
「ああ大ごとや、困ったことになってしもうた」
音吉も力なく言った。岩松はその二人を励まして、
「くよくよしても始まらんで。国に帰ったら帰った時のことや。それまでは、あんまり気に病まんことだな」
「気に病まんと言うたって、わしらがキリシタンになったと思われたら、父《と》っさまも母《かか》さまも、妹も、縛《しば》り首になるんやで」
「だからそうならんよう、お伊勢さんにでも熱田さんにでも毎日おねがいしておけばいいやろ」
「そりゃまあ、おねがいしてみるけど……親方さんも、水主頭《かこがしら》も、あんなに祈っても、とうとう故里《くに》に帰らんと死んでしもうたしな」
「全くや。どの神さまに頼んだらええんやろ。キリシタンの国で、日本の神さんたちに頼んだかて、何や心もとないなあ」
いつしか細い雨が窓をぬらしていた。音吉はその窓に、ぼんやりと目をやった。
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