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海嶺143

时间: 2020-03-18    进入日语论坛
核心提示:六 グリーン夫婦の後について、黒いコーモリ傘《がさ》をさした子供たちの一団が近づいてくる。「あれ、何やろ、あの子たち?」
(单词翻译:双击或拖选)
 グリーン夫婦の後について、黒いコーモリ傘《がさ》をさした子供たちの一団が近づいてくる。
「あれ、何やろ、あの子たち?」
一番先に窓のほうを指さしたのは久吉だった。久吉は、このコーモリ傘が嫌《きら》いだった。金属性の骨に布を張った傘を、「アンブレラ」と教えられたが、
「何や、布を張った傘なんぞ、いややな。傘というもんは、油紙を張ってるもんやのに」
とけなした。音吉も日本の傘が好きだ。太い番傘に雨がばらばらと音を立てて当たるほうが気持ちがよかった。布に雨が沁《し》みこんでくるのが、何か頼りなく思われるのだ。それに、女が蛇《じや》の目《め》の傘をさして歩くのは、何とも言えない風情《ふぜい》がある。もっとも、音吉の家にせよ久吉の家にせよ、破れた番傘が一本あるだけだった。
とにかくその嫌いなコーモリ傘が並んで来る。一瞬久吉はギクリとしたような顔をしたが、
「あ、ダァ・カァもいるわ。ラナルドもいるわ」
と、うれしそうに言った。音吉もベッドの上に起き上がって、窓越しに子供たちを眺《なが》めた。間もなくドアをノックする音がして、グリーンの妻が入って来た。グリーンの妻は、いつもの明るい顔で、腹の具合はいいのかどうかと尋《たず》ね、たくさんの可愛《かわい》い友だちが見舞いに来たと告げた。
ダァ・カァを先頭に子供たちは少し恥ずかしそうに、肩を寄せ合いながら入って来た。子供たちは音吉と久吉を見て、にこっと笑い、何かひそひそと話し合っていたが、古新聞に包んだ野の花や、絵を差し出した。
「サンキュー」
二人はベッドの上にあぐらをかいて礼を言った。雨にぬれた黄色い花は、砦《とりで》に行く道べに咲いている花だ。絵は四、五枚あった。急いで描いて来たのだろう。りんごや梨《なし》を描いた絵、牛や羊を描いた絵、リボンをつけた人形の絵等々、どれも紙一杯に描かれてあった。久吉が、
「ワー、食べたいなあ」
と、大声で言った。日本語だった。子供たちはきょとんとした。音吉が久吉の言葉を英語でいった。子供たちは笑って、少し遠慮の取れた顔になった。ダァ・カァが何か言い、子供たちがうなずいた。帰るのかと思うと、子供たちは一斉《いつせい》に歌をうたいはじめた。音吉たちも幾度かうたった讃美歌《さんびか》である。
(もしかしたら、これがキリシタンのご詠歌《えいか》かな)
音吉は思った。久吉も落ちつかぬ顔で聞いている。岩松は窓に寄って、腕を組んだままじっと子供たちの顔を見つめている。インデアンの子二人を除いたほかは、イギリス人、フランス人、アメリカ人と、インデアンとの混血児であった。誰もがほとんど黒い目だ。茶色の目もいる。髪もほとんどが黒い。男の子もいる。女の子もいる。みんなで十人|程《ほど》だ。頬《ほお》を真っ赤にして一心にうたっている子供たちを見ながら、音吉は何か心を打たれる思いがした。
(これがここの国の病気見舞いやろか)
音吉は美しいと思った。日本では、絵を描いて見舞いに持って行くなどということはなかった。花を持って行くこともなかった。見舞いというものは、病人の口に合いそうなものを持って訪ねて行くことであった。むろん、病人の枕《まくら》もとで歌をうたうなどということもない。仮病《けびよう》の二人には、子供たちの歌声は少しもうるさくはない。只可憐《ただかれん》に思われた。
(父《と》っさまの所に、村の子がこんなふうに集まってうたったら、どんなに父っさまは喜ぶやろ)
ふっと音吉は、倦《う》み疲れたような父の武右衛門の顔を思った。
子供たちの歌はすぐに終わった。何となく音吉は物足りない気持ちがした。フラッタリー岬では、ピーコーの初潮の時、子供たちは夜も昼もなく五日も六日もうたいつづけた。あれは魔除けの歌だとあの時岩松が言ったが、今、ここの子供たちも、魔除けの歌を長々とうたうのかと思っていたのだ。歌が終わると同時に、ダァ・カァがにこにこしながら言った。
「ではお祈りしましょう」
子供たちは神妙な顔をして、両手の指を組んだ。
「祈るんやな! どうする?」
久吉が、岩松と音吉を見た。
「じたばたするな」
岩松がおさえるように言った。
「けど……キリシタンの祈りやで」
口の中でもごもご言いながら久吉はダァ・カァを見た。ダァ・カァは既《すで》に目をつむり、祈り始めていた。音吉も久吉も観念してダァ・カァの祈りに耳を傾けた。ダァ・カァは、音吉と久吉の腹痛が早くよくなるように、故国を遠く離れた三人の上に、神が豊かな慰めを与えて下さるように、自分たちもこの三人を心からの友として愛することができるように、と祈った。その言葉の意味が、三人にもおおよそ理解できた。
(ふつうの言葉や。まじないでも魔法でもあらせん。やさしい言葉や)
音吉はふっと心の中で安堵《あんど》した。と同時に、自分たちが仮病《けびよう》を使っているとも知らず、可愛《かわい》い手を合わせて祈っているラナルドたちを見ると、ひどくうしろめたい気がした。
(キリシタンやって何も悪いことあらせん。すまんことをしたな)
(けどなあ、わしら日本人だでな。信じたら打ち首になるんや。だからスクール・チャーチは休みたいのや)
ダァ・カァにつづいて、次々と祈りつづける子供たちの短い祈りを聞きながら、音吉は心のうちに詫《わ》びたり、弁解したりしていた。
祈り終わる度に、子供たちは一斉にアーメンと唱《とな》えた。祈りが全部終わってから音吉は尋《たず》ねた。
「ダァ・カァ。アーメンて何のことですか」
音吉の英語はすぐに通じた。
「アーメンとは『ほんとうにそうです』ということです」
「ほんとうにそうです! では、アーメンは、神さまの名前ではないんですか」
音吉の言葉に、ダァ・カァも子供たちも笑った。
「神さまの名前ではありません」
その名の通り、丸い月のような顔に一杯の微笑を浮かべ、善意をこめてダァ・カァが答えた。
「何や、アーメンさまかと思うたら、そうやないのか。えらいまちがいやったな、音吉」
「ほんとやな。アーメンさまアーメンさまと、だいぶお詣《まい》りしたわな。アーメンさまなんて、いなかったんやな」
音吉も笑った。ラナルドが、
「もう、おなか、なおったの?」
と、ひたむきな目を音吉に向けた。
「ありがとう、なおったよ、ラナルド。ちっとも痛くない」
「よかった。じゃあパズルをしよう」
ラナルドは上着のポケットからパズルの箱を取り出した。時々遊んだことがあって、音吉たちも知っている。ラナルドは、いつもゲームの道具を持って歩く。音吉たちが、積み木という遊び道具を知ったのも、ラナルドによってであった。様々な形の木片を使って、家や乗り物や、動物らしき物をつくるのは、十六、七の音吉や久吉にも、おもしろい遊びだった。そしてパズルは尚のことおもしろい遊びだった。それを知っていて、ラナルドはパズルを持って来てくれたのだ。フラ・フープも子供たちの大好きな遊びだった。日曜学校の帰り、子供たちと一緒に、野原でやったこともあるが、久吉はずばぬけてそのフラ・フープがうまかった。大きな丸い輪を腰で巧みにまわすのだ。これは音吉も久吉にかなわない。が、パズルは音吉のほうがよくできた。
空腹も忘れて、しばらくの間音吉と久吉は子供たちと遊んだ。三十分|程《ほど》経って、ダァ・カァが、
「さあ、帰ろう。もう十二時だ」
と、柱時計を見上げた。子供たちはもっと遊んでいたいと言ったが、ダァ・カァは、
「オー! ノウ」
と、きっぱりと首をふった。と、ラナルドが音吉の首に手をまわして、
「オト、もうおなかを痛くしないで。スクール・チャーチを休まないで」
と言い、いつものようにその唇《くちびる》を頬《ほお》に押し当ててくれた。音吉は不意に胸が熱くなった。
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