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海嶺159

时间: 2020-03-18    进入日语论坛
核心提示:二 サンドイッチ諸島を出て、二か月が過ぎた。来る日も来る日もの船上の生活は、しかし必ずしも単調ではなかった。三百人もの水
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 サンドイッチ諸島を出て、二か月が過ぎた。来る日も来る日もの船上の生活は、しかし必ずしも単調ではなかった。三百人もの水兵たちがいる。その水兵たちを別人種のように見下げる士官たちがいる。人間同士の摩擦も絶えない。が、人間を操るよりも船を操ることは更《さら》にむずかしい。気象は常に同じではない。穏やかな日もあれば、小山のような大波が叩《たた》きつけてくる日もある。それに応じて、水兵たちは号笛《ごうてき》と怒声に追いたてられながら、マストに登って展帆《てんぱん》をしたり、畳帆《じようはん》をしたりしなければならない。たとえ、いかに順風の日がつづいても、マストに登らずに終わる日はなかった。それは、一番高い所にある軽帆を、夜間は使わないからである。つまり、夜になると、軽帆をたたみにマストに登り、翌朝はそれを展《ひら》くためにマストに登るからだ。高いマストに登ることは、一回一回命懸けのことだ。
艦長は、岩吉たちに対して、ロンドンまでの艦内生活を自由にするように言ってくれた。サンドイッチ諸島を出る時、そう言ってくれたのだ。だが、その言葉によって、かえって岩吉は、音吉と久吉に言った。
「キャプテンの言葉に甘えちゃいかん。お客さん面《づら》をしていてはいかん。何でも自分でやりたいことを、体に叩《たた》きこんで覚えていくんだ」
岩吉はマストに登ることを自分から訓練した。岩吉自身、瓦《かわら》屋根の職人をしたことがある。瓦屋根職人は、町家の二階屋根にも上がる。神社や寺のとてつもない高いてっぺんまでも登る。高い所には、岩吉も馴《な》れていた。が、いかに高いといっても、これは地上のことであった。揺れ動くマストの上に登るのとは、事はちがっていた。だからこそ岩吉は、サムの後に蹤《つ》いて、マストに登ることを習ったのだ。
岩吉が登るのを見て、音吉や久吉も、登って見る気になった。とにかく帆船に乗る以上、全員の訓練は先ずこのマスト登りに集中された。マストに登れぬ者は一人前の水兵ではなかった。初めて登った時、三人は驚いた。猿のように身軽に駈《か》け登る水兵たちのようにはいかない。下で見ている時とは、全くちがうのだ。足も手も思ったようには動かなかった。先ずシュラウドと呼ばれる縦のロープを両手でつかむ。植物性繊維でできた太いロープだ。そして足は、このシュラウドに交叉《こうさ》したラットライン(横のロープ)にかける。ラットラインは、つまりは梯子段《はしごだん》の役目を持つ。
シュラウドを両手に握り、ラットラインに足をかけることだけで、もう大変なむずかしい動作なのだ。なぜなら、四肢《しし》に等分に体重をかけ、つとめて身軽にしなければならないからだ。万一、ラットラインが切れたとしても、転落することのないようにとの、万全《ばんぜん》の態勢なのだ。この、四肢に等分に体重をかけるこつがわからなければ、いつまで経っても確実に登って行くことはできない。
その点、岩吉は器用であった。身軽であった。下士官《かしかん》が日本の帆船も同じかと尋《たず》ねたほどの巧みさだった。万事に飲みこみの早い岩吉に、下士官や水兵たちの三人を見る目が変わった。音吉も久吉も真剣に訓練して、今では朝に夕にマストに登る作業に加わるようになった。何十メートルも下を見おろすことにも、今は馴《な》れた。もともと、日本人は手先も足先も器用だ。下駄《げた》や草履《ぞうり》を履《は》き馴れた足は爪先《つまさき》まで器用であった。足場であるフットロープに足をかけることもうまかった。丸太|程《ほど》の太い帆桁《ほげた》に身をもたせながら、帆をたたんでいくことも、帆足を帆桁に結びつけることも鮮やかだった。
マストに登ることと共に、もう一つ必ず覚えなければならぬことがあった。それはラーニング・ザ・ロープ(ロープを知ること)であった。ここで言うロープは、動索のことである。無数ともいえるロープの、そのどれを引けばどの帆がひらくか、どのロープがどの帆に通じるか、これを覚えねばならぬのだ。絞ろうと思う帆が絞られず、他の帆が絞られては航海に支障を来す。特に緊急の場合は、機械的に手が動かなければならない。これは、三人のうちで音吉が一番覚えが早かった。久吉の勘もよかった。少なくともこの二つは、水兵たちの必ず覚えねばならぬことであった。
マストの上の作業は、非常な危険を伴っている。万一、動索の操作を誤ると、帆桁にとりついて作業をしている者の命を奪う。慎重な性格でなければ、動索の操作は困難であった。この操作の最も巧みなのは「親父」であった。音吉は、この「親父」の傍《そば》について、その操作を習った。「親父」は、動索に手を触れる時、ふだんとは別人のようなきびしい表情を見せた。息を詰め、しっかと口を結んで、ロープを少しゆるめ、マストの上の者たちに目を走らす。そして更に少しゆるめる。また、ゆるめる。目はマストを見つめたままだ。「親父」のこの扱い方には、来る日も来る日も、初めてロープに触れる者のような緊張があった。「親父」はいつか音吉と久吉に、こう言った。
「人間、馴《な》れていいことと、悪いことがある」
その言葉を音吉はしっかと胸に納めた。そして思った。
(今日という日には、誰もが素人《しろうと》だ)
 イーグル号はいつしか、秋の終わりのような涼しさの中にあった。一月二月と南半球は夏であったが、その夏の気配《けはい》も次第に影をひそめた。
そうしたある日、目を覚ました岩吉は、船の動揺が極めて静かなことに気がついた。このところ、夜明けが早く、日没の遅い毎日のことで、ともすれば目の覚めるのが早かったが、今朝はひどく寝こんだような気がする。それは船が静かだったからかも知れない。
(はてな?)
岩吉は不吉な思いがした。音吉も久吉もハンモックの中で、まだぐっすりと寝こんでいる。そのハンモックが、極めてかすかに揺れているだけだ。
岩吉はハンモックから降りて、上甲板《じようかんぱん》に上がって行った。風がほとんどない。風が一時弱まったのとは様子がちがう。
岩吉は船尾のほうを見た。マストには見張りの者がい、当番の者たちもそれぞれの部署についている筈《はず》だ。が、朝のひと時、仮眠をしているのだろうか。風が落ちたことに気づいている様子はない。
イーグル号は軍艦だが、今イギリスに戦争はなかった。ハドソン湾会社の統治するカナダ一帯に、威を示すために出かけて来たに過ぎない。きびしいイギリス海軍ではあっても、戦時と平時とでは、艦内の気分はちがった。海賊の襲撃は警戒しなければならないが、この辺《あた》りはその危険もない。ということで、時としてこのように静かな朝もあった。
(下手をすると、べた凪《なぎ》になるかも知れん)
帆船にとってべた凪は、嵐よりも無気味な状態であった。帆船は風がなければ動けない。長い間の岩吉の航海の経験は、そのべた凪をいち早く感知した。波のうねりもひどく静かだ。海上のかなり広い範囲まで、風のない証拠だ。どの帆も風を失って、しおれた葉のようになっていた。
「風が落ちたぞーっ!」
岩吉はマストの上に向かって叫んだ。途端に艦上がざわめき始めた。
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