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海嶺160

时间: 2020-03-18    进入日语论坛
核心提示:三 べた凪《なぎ》になって二昼夜が過ぎた。今朝も見渡す限り、のっペらぼうの海だ。士官をはじめ水兵たちは、舷側《げんそく》
(单词翻译:双击或拖选)
 べた凪《なぎ》になって二昼夜が過ぎた。今朝も見渡す限り、のっペらぼうの海だ。士官をはじめ水兵たちは、舷側《げんそく》に寄って、小波《さざなみ》ひとつ立てない水銀のような海を、不安な顔で見つめていた。白い海面に、灰色の斑《まだら》がある。死んだように無気味な海だ。息づかいがとまっている。海は動いてこそ海だ。うねり、逆《さか》まき、怒ってこそ海だ。が、海には、かすかな一筋のしわさえもない。空に輝いている太陽までが、なぜか無気味に見える。
岩吉の傍《かたわ》らに、久吉と音吉が並んで海を見おろしていた。
「音、この海の上、歩いて行けるような感じやな」
久吉の言葉に、音吉がうなずいた。
「歩いて行けるような、か」
岩吉が呟《つぶや》いた。確かに、今見つめている海は、水には見えない。三人もかつて、千石船《せんごくぶね》に乗っていた頃《ころ》、べた凪に遭《あ》ったことはある。だがそれは、何刻《なんとき》かのことであった。このように、水面がねっとりとした固い凪ではなかった。どこかに小波はあった。
(不吉な海の姿やな)
音吉は思った。
(何や、悪いことが待っているのではないやろか)
そうも思った。水兵たちも、だらりと萎《な》えた帆を幾度も見上げる。ヘッドヤードとアフターヤードが、それぞれ反対|舷《げん》一杯にひらいている。いつ風が吹いて来るかわからない。しかも、どの方向から吹いて来るか、わからない。その風に備えて、風が吹くや否や、直ちに走り出せるように、ヘッドヤードとアフターヤードを、反対舷一杯にひらいておくのだ。こうして用意さえしていれば、船はうろたえる必要はない。
が、水兵たちは、既《すで》に丸二昼夜、風を待って疲れていた。今に吹くか、今に吹くかと、海を見つめ、帆を見上げて過ごした二日は長かった。幾日も経ったような気がするのだ。だが海は依然として、呼吸を忘れたようであった。海水が、何物かに変わってしまったようであった。
「何や、突然、世の中が金しばりに遭《お》うたような感じやな」
また久吉が言う。
「金しばりとは、うまいことを言うで、久」
岩吉がかすかに笑った。
「なあ、舵取《かじと》りさん。こんな絵に描いたような、動かん海は見たことないわ。気が滅入ってしまうわ」
音吉も言った。
「心配するな。まさか風の神が死んだわけでもあるまい」
岩吉が二人の肩に手を置いた。と、久吉が言った。
「ほんとに、風の神が死んだのかも知れせんで。風の神が死んだら、こりゃ大変だでえ。この船に何百人、人がいても、風の神代わりにはなれせんしな。一、二の三で、みんなで息を吹きかけたところで、帆がふくらむわけもなし……」
久吉の言葉に、岩吉も音吉も笑った。
午後になっても、海に何の変化もなかった。風が絶えて以来、水兵たちの動きも鈍った。甲板《かんぱん》磨きにも、大砲磨きにも身が入らない。ふだんは気合棒《きあいぼう》を鳴らして水兵たちを追いまわす下士官《かしかん》たちにも気魄《きはく》がない。無気味に静まり返ったべた凪《なぎ》の海が、人々の心を侵しはじめていた。風を待つことに、次第に疲れてきたのだ。小波ひとつ立たない海への不安が大きくなってきたのだ。今の状況が、限りなくつづくような不安を、水兵たちは感じはじめていた。それは陸にいる者には想像できない心理であった。
午後一時の時鐘《じしよう》が鳴った。と、突如《とつじよ》、号笛《ごうてき》が鳴りひびいた。掌帆長《しようはんちよう》の鳴らす号笛は、下士官《かしかん》たちによって、次々に伝えられた。「総員集合!」の号笛だった。
艦長は、水兵たちの気分を、いち早く察知していた。過去において、べた凪の時に叛乱《はんらん》があった例を、艦長は幾つか知っていた。水兵たちの関心を、べた凪から外《そ》らさなければならない。マストに登らせる訓練もその一つだ。ふだん使わぬ大砲発射の訓練もその一つだ。が、艦長は、今水兵たちに訓練を課そうとは思わなかった。水兵たちばかりか、下士官たちも、することなすことに、身が入っていない。このような時に、無理に駆り立てても、不満を募らせるだけである。
掌帆長は全員に坐《すわ》るように命じた。いつもと全く様子がちがう。水兵たちはさっと緊張した。誰かが、鞭《むち》打ちの刑にでも処せられるのではないかと思ったのだ。ヤードからロープを垂らして、海に水漬けにする処罰の方法も、水兵たちは伝え聞いている。
(何かが始まる!)
水兵も下士官も、一様にそう思った。
が、艦長に代わって、金髪の若い士官が一同の前に現れた。岩吉たち三人は、その士官を知っていた。サンドイッチ諸島のブラウン牧師宅での晩餐会《ばんさんかい》で同席した士官だったからだ。この士官は、岩吉の描いて見せた絵に驚いて、
「ベリ ナイス ベリ ナイス」
と、幾度もほめ、
「わたしの従弟《いとこ》にも絵のうまい男がいるが、それよりも更《さら》に岩吉はうまい」
と、手放しでほめた。絵のうまいことが、こんなにも尊敬の念をもって見られるとは、思っても見ないことだった。あの後、岩吉は幾度かこの士官から私物のジャムやバターを与えられた。士官の名はマッカーデーと言った。
士官マッカーデーは、水兵たちに向かって言った。
「この船の近くに、ファンフェルナンデス諸島がある。君たちはその島を知っているね」
何人かがうなずいたが、他の水兵たちはマッカーデーが何を言おうとしているのか、疑い深い顔で見つめていた。
「そうか、その島の名を知らない者でも、ロビンソン・クルーソーの名を知らない者はあるまい」
水兵たちの中にざわめきが起こった。
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