日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

海嶺167

时间: 2020-03-18    进入日语论坛
核心提示:四 やや風はあったが、その日もロンドンは晴天であった。二頭立ての馬車に、三人は士官マッカーデーと共に乗りこんだ。御者《ぎ
(单词翻译:双击或拖选)
 やや風はあったが、その日もロンドンは晴天であった。二頭立ての馬車に、三人は士官マッカーデーと共に乗りこんだ。御者《ぎよしや》が手綱《たづな》を取ると、二頭の白い馬は首をふりながら、ゆっくりと歩きはじめた。車輪と馬蹄《ばてい》が石畳の上に快い響きを立てた。幌《ほろ》を外した馬車の上から、三人は心を躍《おど》らせてあたりを見まわした。
馬車は船着き場を出、テームズ河を左に見て進んで行く。川波が眩《まぶ》しくきらめく。漁船、帆船の行き来が絶え間ない。小型の客船がその間を縫う。
このあたりは、川やドックに沿って、倉庫、船員宿などが点在し、民家が少ない。道べに所々に空き地がひろがり、若草が六月の風になびく。枝をひろげたニレの大樹は、三人にフォート・バンクーバーを思い出させた。陽炎《かげろう》が燃え、三人は夢心地《ゆめごこち》で馬車にゆられていく。
「立派な道やなあ」
例によって真っ先に嘆声を発したのは、久吉だった。今日は三人共、バンクーバーで与えられた背広を着、蝶《ちよう》ネクタイをつけていた。いつもの黒シャツ、吊《つ》りズボンの船乗り姿とはちがう。ハドソン湾会社に挨拶《あいさつ》に寄るからだ。低いシルクハットもかぶっている。
「今はいい道だがね、しかしロンドンの悪路といったら、昔は有名だった」
マッカーデーが快活に言った。
「へえー、悪路?」
三人は驚いた。どのように悪路であったか、見当がつかない。見たところ、どこまでも石畳の道がつづいている。御者《ぎよしや》が言った。
「旦那《だんな》のおっしゃるとおりでさあ。昔のロンドンと申しましたらな、馬の足がぬかるみに埋まる。馬車が横倒しになる。そんなことも、珍しくなかったそうでございます。ね、旦那」
「そうだよ。ジョージ二世と王妃が、キュー宮殿からセント・ジェームズ宮殿まで行ったことがあった。僅《わず》か十二キロのその道を、夜通しかかっても着かなかったそうだがね、いまだに語り草になっているよ。何しろ馬車が倒れた、御者や客が首の骨を折った話は、始終あったようだ」
「信じられない話ですね」
音吉が相槌《あいづち》を打った。
「そうだろうね。それでね、そんな悪路に木製のレールを敷いて、馬をとことこ歩かせることになったわけだよ」
話を聞いているうちに、馬車はロンドン塔の門の前に着いた。イーグル号から見た時も大きな建物だと思ったが、目近に見ると尚《なお》のこと、見事な建物であった。
「ここがキングのお城ですか」
音吉が尋ねた。
「元はね」
マッカーデーは、灰色の塔を見上げながら、憂鬱《ゆううつ》そうに言った。
「元は? では今は、誰が住んでいるんですか」
「政治犯だよ」
「政治犯?」
三人には政治犯の意味がわからなかった。
「わかりやすく言うとね、おもに政府に睨《にら》まれた人たちが入る牢獄《ろうごく》さ」
「牢獄!?」
三人は驚いて、改めてその荘重《そうちよう》な建物を見上げた。
「よほどの悪人が入る所ですか」
牢と聞いて、灰色に煤《すす》けた建物が俄《にわか》に無気味に見えた。庭で啼《な》くカラスの声も無気味だ。門の前には、黒地に赤の線を縫い取った服を着、抜き身のサーベルを持った番兵がいかめしく突っ立っている。
「よほどの悪人か……」
マッカーデーはそう言い、御者《ぎよしや》に、
「さあ、行こう」
と促した。馬が歩き出すと、マッカーデーは言った。
「あのね、実はね、わたしの親友の父親が、去年ここで処刑されたのだよ」
三人は驚いてマッカーデーを見た。
「誰もが尊敬している立派な人だった。貴族だったが、貴族の中でもあんな立派な人は見たことがない。言ってみれば、そう言う立派な人も処刑される所だ」
三人にはマッカーデーの言葉の意味がわからなかった。マッカーデーは怒りを含んだ目でロンドン塔をふり返りながら、
「あそこにはね、裏切りの門と呼ばれる門があってね。テームズ河を運ばれて来た貴族や政治犯が、船のままその門を入るんだが、いったん入るともう二度と出てくることがないのさ」
「…………」
「二度と出られない!?」
「そうだ。斧《おの》でやられるわけだよ」
マッカーデーは、手刀で自分の首を切る真似《まね》をした。音吉は肌《はだ》の粟立《あわだ》つのを覚えた。
「どうしていい人まで殺されるんですか」
「政府というのは、批判されると殺したくなるものらしくてね。批判してくれる者こそ大事にしなければいけないのだがね……。ところで三百年も前の話だがね、こんな話もあるんだよ。ヘンリー八世が、四人の妻を次々と、このロンドン塔の庭で処刑した。それはどんな理由からだったと思う?」
「さあ……」
音吉が首をかしげた。久吉が言った。
「間男《まおとこ》したのとちがいますか」
「間男? なるほどね。実はね、ヘンリー八世が最初の妃《きさき》を殺したのは、好きな女と結婚したかったからだ。イギリスでは離婚が許されていない。だから死別した時しか再婚ができないのだ。貞淑《ていしゆく》な妻をね、久吉が言ったように、間男したと言って処刑したのだよ」
「へえー、驚いたなあ」
「いや、驚くのはまだ早い。三番目の妻が欲しくなった。それで二番目の妻を殺した。こうして、へンリー八世は四人の妻を殺してしまったんだ」
「へえー、イギリスの帝《みかど》は、悪い帝なんやなあ」
久吉はうなった。
「いや、全部が全部、そんな悪い国王とは限らない。立派な国王もたくさんいた。しかし国王も人間だ。とにかく、権力を持てば持つほど、人間は大きな過ちを犯しやすいものでね」
岩吉がうなずいて、
「そうかも知れせん。日本のお上《かみ》やって同じや。無実の者がどれほど打ち首、縛《しば》り首、焙《あぶ》り殺しになったか知れせん。キリシタンなぞ、たくさん死んだ。考えてみればキリシタンになることが、本当に悪いことかどうか、わからせんでな」
岩吉は日本語で呟《つぶや》いた。その言葉を、音吉がマッカーデーに、英語で告げた。
「あなたたちの国にも、恐ろしい政府があるわけだねえ」
馬車はいつしか、魚市場の前にとまった。三階建ての石造りの立派な建物だ。テームズ河を背に建てられた魚市場の中は、活気に満ちていた。
「音! 音! 魚の匂いがするで! 懐かしいなあ」
馬車の上から伸び上がるようにして久吉が言うと、岩吉が言った。
「江戸の魚河岸《うおがし》に当たる所やな」
「舵取《かじと》りさん、どんな魚があるか、見たいなあ」
「いかん、いかん。みんな殺気立《さつきだ》っているでな。商売の邪魔になると、怒鳴られるで」
「ああ、刺し身が食いてえ。米のまんまが食いてえ」
このところ毎日言っていることを久吉は言った。長靴《ながぐつ》を履《は》いた男たちが建物の中を大勢|右往左往《うおうさおう》し、絶えず何か大声で叫んでいるのが、広い戸口から見える。が、マッカーデーは、すぐに御者《ぎよしや》を促した。マッカーデーにはさほど珍しい所ではないのだ。
「ええ所見たな、音」
「うん、珍しい所やな。小野浦にはあらせんな」
「あるわけないやろ。第一、あんな石造りの三階建てなぞ、わしら見たことあらせんで」
「江戸の魚河岸とはちがうわな。しかし、あの汚い河の傍《そば》に建っているのが、気に食わんな。刺し身にしては食えたもんやないやろ。あそこまで運んで来るうちに河の臭いが染《し》みこむやろ。エゲレスの人には悪いがな」
岩吉の言葉に、久吉がそれもそうだとうなずいた。音吉はマッカーデーに、その会話を告げることはためらわれた。
「ミスター・マッカーデー。二人は魚を生《なま》で食べたいと言っているんです」
「生で!?」
「はい。日本人は、活《い》きのいい魚を生で食べる習慣があるんです」
マッカーデーは肩をすくめ、両手をひろげ、
「珍しい習慣だが、わたしはその習慣にはなじみたくないね」
と笑った。
馬車が進むにつれて、道を行き交う人が多くなった。建物も多くなってくる。見る建物、見る建物、すべてが三人を驚かせる。そのほとんどが石造りだ。尖《とが》った屋根がある。丸い屋根がある。家々に多くの窓がある。一見、城とも見える建物がつづく。馬車が行き交う。が、今岩吉は、建物よりも、道を歩く女や子供に目を注いでいた。
(何という色白の肌《はだ》や)
岩吉は心の中に日本の女とひき較《くら》べて見る。和服を着た者は誰もいない。丸髷《まるまげ》や島田を結った女もいない。胴を細く絞り、腰の張ったスカートをまとって、ボンネットをかぶっている。小さな女の子も、母親と同じ形のスカートをはいている。金色や、鳶色《とびいろ》の縮れた毛が愛らしい。日本では縮れ毛はみにくいものとされている。それがこの国では、誰も彼も縮れている。縮れ毛でない者は一人としていない。
岩吉は、心の中で絹や岩太郎をしきりに思いながら、女や子供たちを目で追っていた。そんな岩吉たちを、誰もが珍しそうにながめていた。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%