日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

海嶺168

时间: 2020-03-18    进入日语论坛
核心提示:五 岩吉たちを乗せた馬車は、ロンドン警視庁のすぐ傍《そば》の、ウエストミンスター・ブリッジ(橋)を渡って、テームズ河の対
(单词翻译:双击或拖选)
 岩吉たちを乗せた馬車は、ロンドン警視庁のすぐ傍《そば》の、ウエストミンスター・ブリッジ(橋)を渡って、テームズ河の対岸を通り、つづいてその上流のランバス・ブリッジを渡って右に折れ、ウエストミンスター寺院の前に出た。
士官マッカーデーと共に寺院の前に降り立った三人は、声にならぬ声を発して、青空を突き刺すように立っている四つの尖塔《せんとう》を見上げた。やや経《た》ってから、音吉が言った。
「ミスター・マッカーデー、何と大きな、立派な建物でしょう」
「見事でしょう、この建物は」
マッカーデーは満足そうにうなずいた。ウエストミンスター寺院は、巨大な四角の塔を両袖《りようそで》に持つ、荘厳《そうごん》なゴシック建築であった。
「高い塔やなあ! 一体何丈あるやろ、舵取りさん」
「うん、十四、五丈はあるやろな」
白いちぎれ雲が、ゆっくりと流れて来た。その雲の下に、塔が俄《にわか》にせり出すかのように見えた。久吉が思わず一歩退き、
「十四、五丈か、のしかかってくるみたいやな」
と、吐息をついた。
「ほんとやなあ。これも、みな石やなあ。釘《くぎ》を使ってせんのやなあ、久吉」
「そうや、音。日本の寺や城も、釘を使わんで、木を組み合わせるいうけどな、これは石だけやからな。一体どうやって造ったんやろ。何年かかったんやろ。なあ舵取《かじと》りさん」
うなずいて岩吉がマッカーデーに尋ねた。
「何年かかってできたんですか」
「そうだね……」
マッカーデーは、その長いまつ毛を上げて寺院を眺《なが》めながら、
「それがねえ、何年と、はっきりは言えないんだよ……」
「?……」
三人は怪訝《けげん》な顔をした。
「ここに一番先に僧院を建てたのは、ざんげ王という綽名《あだな》の王さまだった。一〇六五年|頃《ごろ》と聞いているがね。信仰が厚いのでざんげ王という綽名があったわけだが、しかしこの形に持ってきたのは、ヘンリー三世でね。ざんげ王の時から二百年は経っている」
「二百年!?」
「二百年で驚くかね。実はね、それから更《さら》に五百年後に、西側の塔が完成されたんだよ」
「じゃあ、初めから数えて七百年!?」
「そうだ。しかし、まだこの後誰かが手を加えるかどうか、それはわからないがねえ」
岩吉はじっと塔を見上げた。四角い塔の上には、更にそれぞれ二つずつの尖塔《せんとう》が立てられている。岩吉はその塔を建てた男たちの姿を思った。
(命がけの仕事だ)
幾人の職人が、この建築で命を失ったことかと、屋根瓦《やねがわら》職人の経験を持つ岩吉は思いやった。驚いている三人を、マッカーデーは中に誘った。
一歩堂の中に入った三人は、思わず声を上げた。吹き抜けの高い高い天井だ。その高さだけでも驚くのに、内部もまた悉《ことごと》く見事な石造りであった。二抱えもありそうな何本もの太い柱が、堂の左右に並んでいる。その円柱がすべて石を重ねて造った美しい柱だ。天井には撓《たわ》めたような石が組み合わされて美しいアーチをつくり、そのアーチが幾組にも組を成して天井を支えている。狭い谷底から見上げるような天井だ。石を自由自在に使っての壮麗な建築に、三人は只呆然《ただぼうぜん》とした。
岩吉たちは生まれて初めて、たった今ロンドンの建物の中に入ったのだ。その建物が、ウエストミンスター寺院であったことが、三人の驚きを大きくした。
「何やろ!? あの色ガラス」
青、赤、黄、緑、様々な色どりのステンド・グラスを久吉は指さした。両手を頭の上で合わせた人たちが描かれている。十字架にかかった男の姿もある。美しい花や鳥もある。それらがみな澄んだ色で描かれているのだ。
「あれがステンド・グラスだよ」
「ステンド・グラス?」
三人はおうむ返しに呟《つぶや》いた。
「そうだよ。千年も前からあるものだ」
「千年も前から!?」
「あれはね、ガラスに絵を描いたものではない。色のついたガラスを組み合わせて、人や花の形を作ったものだよ」
「へえー。描いたんではないんですか。偉いことをするなあ異人さんは。なあ舵取《かじと》りさん」
音吉は途中から日本語で言った。
「この建築様式は、ゴシック建築と言ってね。ゴシック建築にはステンド・グラスがつきものなのだよ」
「いったい、どうやってあのガラスをはめこむんやろ」
三人はややしばらく、首の痛くなるほど窓を見上げていた。
前方中央には、大きな金色の祭壇があった。祭壇には金属の十字架が置かれ、その両側に、背に羽を持つ天使や、聖人たちの像が安置されてあった。祭壇の上部は、何の金属か金色のすかし彫りで枠《わく》どられ、それが三人には黄金に見えた。祭壇両側の石柱に、それぞれ美しい女の像が飾られ、その女たちは大きな十字架を胸に抱えていた。
(ジーザス・クライストのチャーチやな)
建物への驚きがややおさまると、音吉はそう思った。と、同じことを久吉が言った。
「キリシタンのお寺やな、舵取りさん」
「うん、あちこちに十字があるわな」
「エゲレスでは、キリシタンを大事にしてるんやな。こんな立派なチャーチを建てて」
それには答えず、
「七百年もかかって建てた寺か」
と、岩吉が再び天井を仰いだ。鎖で吊《つ》るされた見事なシャンデリアに、何本もの太いローソクが立てられていた。
「日本のお上《かみ》に、このチャーチを見せたら、何と言うやろ。ここを見ても、キリシタンはやはり邪宗と言うやろか」
久吉が珍しく大人びた語調で言うと、音吉が答えた。
「どうやろうな。とにかくぶったまげるわ。久吉、何や、このチャーチの中に入ったら、心がしーんとするで。じっとここにいれば、いるほど、心がきれいになるような気がするで。キリシタンと聞く度《たび》に、只《ただ》恐ろしかったけど、どうしたんやろ。今日はどこかちがうわ」
「音吉、何と言ったかね?」
マッカーデーが笑顔を向けた。
「いえ、別に」
音吉はあわてて答えた。
「ここではね。国王や女王の戴冠式《たいかんしき》が行われるのだよ」
「戴冠式?」
三人には初めての言葉であった。
「王になった時、冠をいただく。つまり即位式だね。これは由緒《ゆいしよ》ある寺院《アベイ》でね。むろん王も王妃も、死ねばここに葬られる」
「…………」
「イギリス人はね、この寺院に葬られることを、最大の栄誉としているんだよ。政治家、学者、文学者、そうだ! 有名なシェクスピアもここに葬られている筈《はず》だ」
「シェクスピア?」
三人は顔を見合わせた。
「ああ、君たちは知らなかったか。彼も日本までは名がひびいていなかったとみえる」
マッカーデーは冗談を言い、
「彼はね、もう二百年以上も前に死んだ詩人でね、且《か》つ劇作家であり俳優でもあった。彼は三十七の戯曲を書いた。ハムレット、ベニスの商人、そしてマクベス。ああぼくは、彼と同じ国に生まれただけでも幸せだ」
三人は呆気《あつけ》にとられた。わからない単語が次々とマッカーデーの口から飛び出したからだ。
「岩吉、ぼくは思うけどね。君がもしイギリス人だったら、ここに葬られるかも知れないよ。君は実に絵がうまい。ユニークな絵だ。君は立派な芸術家だ」
マッカーデーは真顔で岩吉をほめた。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%