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海嶺182

时间: 2020-03-19    进入日语论坛
核心提示:五 細く曲がりくねった石畳の道である。両側には人家が立ち並び、八百屋《やおや》、小間物屋《こまものや》、陶器店、薬屋など
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 細く曲がりくねった石畳の道である。両側には人家が立ち並び、八百屋《やおや》、小間物屋《こまものや》、陶器店、薬屋などが目につく。
「ここが日本人町です」
ギュツラフが岩吉たち三人に言った。
「日本人町? 日本人の町ですか」
驚く三人にギュツラフは微笑して、
「そうです、日本人町です」
と、くり返した。
「では、今ここにいる人たちは……」
三人は改めて行き交う人々を見た。弁髪《べんぱつ》の男、白人の女、纏足《てんそく》でよちよち歩く女、褐色《かつしよく》の肌《はだ》をした男、縮れた黒い髪の子供、どの一人も日本人とは見えない。
「今も、日本人の血を引いた人がいる筈《はず》ですよ。但《ただ》し純粋な日本人は今はいないでしょう。純粋な日本人がいたのは、もう二百年も前のことですからね」
ギュツラフの言葉に、三人はうなずいた。
一六一四年(慶長十九年)九月、徳川幕府はキリシタンの国外追放を命じた。その時、百四十八名のキリシタンが、マカオ、マニラに逃れて来た。その中には、マニラ到着後間もなく死んだ高山|右近《うこん》がいた。その日本人たちが、これから行くセント・パウロ寺院を二十年がかりで建築したのだと、ギュツラフは三人に語った。
「へえー。ではこのあたりには、とにかくわしらと同じ日本人の血の流れている人間がいるんやな」
久吉は懐かしそうにあたりの人々を見まわした。音吉も一緒になってあたりを見たが、
「舵取《かじと》りさん、追われて来た日本人を、ここの人はよう置いてくれたわな。追い帰しもせんとな」
と、感じ入った。
「ほんとや。見も知らぬよそものをよう置いてくれたものや」
「けど、追われた人らは、なんぼ泣いて暮らしたか知れせんな。国を追われるのは、死ぬのも同然だでな」
久吉が珍しくしみじみと言い、音吉も、
「全くや。この道を歩きながら、どんなに日本恋しさに泣いたことか……」
と、声をくもらせた。ギュツラフは言った。
「実はね、その百四十八人のキリスト信者たちが追われて来た前の年、マカオにいた日本人が、百人近くもマカオから追い出されているんですよ」
「へえー? それはまたどうしてですか」
音吉が聞き返すと、
「この辺にはびこっていた海賊はほとんど日本人でしたからね。マカオ人たちは、日本人を嫌《きら》っていたわけです」
ポルトガルが海賊|平定《へいてい》に功があって、マカオの居住権を獲得したわけだが、その海賊が和寇《わこう》であった。
「それでも、追われて来た日本人を追い帰さんかったのですか」
「彼らはキリスト信者でしたから……」
「キリシタンといっても、日本人ですから、海賊の仲間みたいなものでしょう。追い帰されても仕方のないことです」
久吉がまじめな顔で言った。
「むろん、日本人というだけで、毛嫌《けぎら》いした人たちは多かったでしょう。けれどもマルチニョ原が先頭に立って、よい信仰生活を送りましたから、次第に日本人たちは信用を回復して行ったのです。神を仰ぎ、苦しみを堪《た》え忍んだのですね」
石畳の道は次第に坂道になっていく。道幅も少しひろがった。
やがて、広い階段が現れ、ギュツラフ、キャサリン、そして岩吉、音吉、久吉の五人が、その階段を登って行った。
七十段|程《ほど》の階段を登りきると、壮麗《そうれい》な壁面の全容が現れた。五層の壁は、十本の太い円柱《えんちゆう》に支えられ、幾つもの像が柱と柱の間に彫刻されてあった。三層、二層と高くなるにつれて幅が狭くなり、一層の三角屋根の頂に十字架が光っていた。
「何や!? 壁だけや。これがセント・パウロ・チャーチか」
久吉がぼやいた。と、ギュツラフが、その日本語がわかったかのように言った。
「残念ながら、今年、大風の夜、火が出てこの壁一枚だけが残ったのです」
「今年ですか!」
音吉は、石造りの家でも、焼け落ちることがあるのかと不思議に思いながら、高い壁を見上げた。白い雲がひとつ浮いているだけの、青空の下に、只《ただ》一枚の教会堂の壁が、不思議なほどに美しかった。第一層には三つの入り口があった。その三つの入り口の向こうに海が見え、大陸の山々が見えた。第二層には三つの大きな窓があり、そこには青空だけが見えた。
「この方はイグナチオ・ロヨラです」
ギュツラフは二層目の右端に刻まれた、どっしりとした男の像を指さして言った。つづいて、次に立っている像を指し、
「彼がフランシスコ・ザビエルです」
と言った。フランシスコ・ザビエルの裾《すそ》は、風にあおられているかのようにひるがえっていた。
「二人共、イエズス会の創始者です」
ギュツラフは感慨深げに言ったが、三人にはその感慨がわからなかった。
「舵取《かじと》りさん! あれ船とちがうか?」
三層目を音吉が指さした。
「ほんとや。船や」
岩吉も興味深げに見上げた。その近くに聖母マリヤの像があった。そして四層目にはキリストの像があった。が、三人は何よりも船の彫刻に心|惹《ひ》かれた。
「何でチャーチに船など彫ったんやろ?」
「ほんとにな。キリシタンとは関係ないやろにな」
久吉も首をひねった。と、岩吉が、
「いやいや、これを建てたのは日本人やと言うたわな。その日本人は、船に乗ってはるばるやって来たのや。その船に乗ってきたということは、大変な事だで。日本にいたければ信仰を捨てればいい。船に乗ったということは、つまりは信仰を捨てなかったということだでな」
「そうか、舵取りさん。これを建てた日本人には、船を彫ったわけがあるんやな。わしらは信仰を捨てられなかったと、叫んでいるのかも知れせんな」
音吉が答えると久吉が言った。
「けど音、ちがうかも知れせんで。またあの船に乗って帰りたいと、ジーザス・クライストの神さんに願ったことかも知れせんで」
「とにかく立派なものを建てたもんや。音、久、そう思わんか」
「うん。二十年以上もかかってなあ。こんな立派なチャーチを建ててなあ。ここの人らも、日本人かて偉いと思うたやろな」
三人は神妙《しんみよう》に壁を見上げて手を合わせた。その三人をギュツラフはじっと見つめていた。キャサリンは少し離れた所で、すぐ傍《かたわ》らのモンテの砦《とりで》を眺《なが》めていた。小高い丘のその砦には、砲台が何門か、黒々と海に向けられ、ポルトガルの兵士が、身じろぎもせずに立っているのが見えた。
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