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海嶺183

时间: 2020-03-19    进入日语论坛
核心提示:六「今日はうれしかったな。くたびれたけどな」久吉は木の椅子《いす》に腰かけて、上機嫌《じようきげん》に言った。今、三人は
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「今日はうれしかったな。くたびれたけどな」
久吉は木の椅子《いす》に腰かけて、上機嫌《じようきげん》に言った。今、三人はギュツラフやキャサリンと共に、マカオ見物から帰ってきたところだった。
「うん、懐かしいものをたくさん見たな。先《ま》ず、菊な。そして竹林な。あれを見た時、涙が出たわ」
「そうや。竹林が風に揺れているのを見たらな、何や胸が痛うなったわ」
「観音堂《かんのんどう》に行った時も、うれしかったな。な、舵取《かじと》りさん」
「うん」
岩吉は、観音堂の山門に掲げられていた「普済《ふさい》禅院」の文字を思い浮かべた。山門の左右に大きな紙提灯《かみぢようちん》が下がっているのも懐かしかった。それにもまして、山門をくぐった時に嗅《か》いだ線香の匂いには、日本に帰ったような、強烈な感動を覚えた。音吉と久吉が、
「線香やあ! 線香の匂いやあ!」
と、大声を上げて本堂のほうに走ったのだ。
音吉も今その観音堂を思い出しながら言った。
「舵取りさん、日本が近いんやなあ。お寺もある、竹林もあってな。すぐそこなんやなあ、日本は」
「うん。ここは日本のすぐ隣だでな」
「早う帰りたいな。な、音」
「うん。帰りたい。けど……ここにはお寺もあるけど、チャーチもたくさんあったわな」
「ああ、あった、あった。あったっていいやないか。お寺もあったんやから。アメリカにも、エゲレスにもお寺は絶対あらせんかったでな。お寺があっただけで、わしは満足や。やっぱり、アーメンよりナムアミダブツや、ナムミョウホーレンゲキョウはいいな」
「そうやな。わしはな、久吉、お寺を見た時、すぐに良参寺を思い出したわ。良参寺の和尚《おしよう》さん、元気やろか」
「元気や元気や。わしらが帰ったら、目をまるうして、わしらの位牌《いはい》をどうしようかと、あわてるやろな」
「それはそうと、ここの人らは、よう外へ出てものを食うとるわな。驚いたな」
「ほんとや。人の通る所に卓袱台《ちやぶだい》出してな、外でものを食うんやからな」
「日本であんなことしたら、阿呆《あほ》やないかと言われるわな」
「言う言う。日本は人前で、あんまりものは食わんわな。客が来たら、すぐに食うとるものをこそこそ片づけるでな」
「いろんな国があるもんやなあ」
「どんなにたくさん国があっても、やっぱり日本が一番ええわ」
「ほんとやな。どうして日本がええんかな。家なら、こっちのほうが立派に見えるけどな」
「なんぼ立派でもあかん。畳も障子《しようじ》もないでな」
久吉と音吉はとめどもなく話し合っている。岩吉はギュツラフのことを思っていた。最後に媽閣廟《マカオびよう》に行った時だった。香の煙に煤《すす》けて、真っ黒になった天井を見、岩吉はギュツラフに言った。
「額の文字も読めませんね、煤けて、よほど参拝の人が多いということですね」
ギュツラフは大きくうなずき、
「そのとおりです。ここは漁師や船乗りが一番信仰している寺でしてね」
それを聞いた音吉と久吉が、
「船乗りにご利益《りやく》のあるお寺やって。よう拝んでおかにゃなあ」
と言い、岩吉と共に、丁寧《ていねい》に手を合わせた。
目をあけてふり返った岩吉を、ギュツラフは両手を組んで、じっと見つめていた。その時、岩吉は思った。
(はてな?)
考えてみると、ギュツラフはどこの寺に行っても、一度も手を合わさなかった。教会に行っても頭を下げなかった。
(不思議な人や)
岩吉は怪訝《けげん》だった。この媽閣廟《マカオびよう》の境内《けいだい》に太い竹林があり、その木立越しに、青い海と船が見えた。その船を見つめていた三人に、ギュツラフは言った。
「どこに行っても、あなたがたは、手を合わせて頭を下げましたね。日本にいても、そうするのですか」
三人がうなずき、久吉が言った。
「はい。わしらは小さい時から、鳥居を見たら手を合わせるものと、教えられてきました」
「とりい? それは何のことですか」
岩吉は地面に、小石で鳥居の絵を描き、神社には必ずこのような門が立っていると説明した。久吉は、
「日本人は信心深いで、どの神さんにでも、どの仏さんにでも手を合わせるわな。お狐さんでも、馬頭《ばとう》さんでも、手を合わせるわな。だから、鳥居の絵を描いておけば、そこで立ち小便するものはあらせんわな。そのこと、音、ミスター・ギュツラフに英語で話してみい」
音吉は久吉の言葉をギュツラフに語った。ギュツラフは大きくうなずいて、笑いもしなかった。
三人は知らなかった。ギュツラフがなぜ忙しい中をマカオにある教会堂や神社仏閣に三人をつれ出したか。ギュツラフは思い立ったことを、直ちに着手する性格だった。ギュツラフは聖書を和訳するに当たって、先ず日本人の信仰のあり方を知りたいと思ったのだ。日本人の気質を知れば、聖書の中のどの書から訳すればよいかがわかる筈《はず》であった。それがわかった上で、翻訳《ほんやく》に手をつけたかった。
三人は確かに、信心深かった。何にでも手を合わせた。どこででも頭を下げた。その姿を見て、ギュツラフは新約聖書使徒行伝十七章のパウロの言葉を思い出していた。そこにはこう書かれている。
〈アテネの人たちよ、あなたがたは、あらゆる点において、すこぶる宗教心に富んでおられると、わたしは見ている。実は、わたしが道を通りながら、あなたがたの拝むいろいろなものを、よく見ているうちに、「知られない神」にと刻まれた祭壇もあるのに気がついた。そこで、あなたがたが知らずに拝んでいるものを、いま知らせてあげよう。この世界と、その中にある万物《ばんぶつ》とを造った神は天地の主《しゆ》であるのだから、手で造った宮などにはお住みにならない。また、何か不足でもしておるかのように、人の手によって仕えられる必要もない。神は、すべての人々に命と息と万物とを与え、また、ひとりの人から、あらゆる民族を造り出して、地の全面に住まわせ、それぞれに時代を区分し、国土の境界を定めて下さったのである。こうして、人々が熱心に追い求めて捜しさえすれば、神を見いだせるようにして下さった〉
ギュツラフは、三人と一日行を共にして、パウロの心情がよくわかった。ギュツラフの胸は、三人と、三人の背後にある日本の国への深い愛にみたされた。そのギュツラフのまなざしが、岩吉の胸に強く焼きついたのだ。
(不思議な目だ)
それは、いまだかつて覚えたことのないほどに、心にひびくまなざしであった。今、岩吉はその目を思って、改めてギュツラフに深い信頼感を持ったのである。
久吉は、そんな岩吉の思いとは関わりのない話をしていた。
「音、お前。あのキャサリンという、女子《おなご》な、どう思うた?」
「どう思うた?」
「うん、どう思うた? 可愛いと思わんかったか」
「まあな。ようは見んかったでな」
「これだから音は阿呆《あほ》や。折角《せつかく》一日ついて来たのに、見てやるもんや。それが礼儀というものだでな」
「へえー、礼儀なあ」
「そうや。あの、ぷりぷりっとした白い腕な。愛らしかったわ」
「腕いうたって、袖《そで》のついたものを着てて……」
「馬鹿やな、音。袖がついていようが、何がついていようが、あのまるまっちい手首見たら、中身の想像がつくやないか」
「つかんな。第一、手首なんぞ、よう見とる暇なかったわ。見るもん見るもん、珍しかったでな」
「わしはな、音。あのペニヤのチャーチに行った時な、もうたまらんくなってな、つまずいたふりして、二の腕にさわったんやで。知らんかったやろ」
「知るわけないで。あそこのチャーチからは、マカオがひと目で見渡せたやろ。緑がきれいでな。青い海と、泥色の海があってな」
「あのな、あの時キャサリンはな。ニコッと笑うたで。いやな顔せんとな。おれ、すましてな、エクスキューズ ミー(すみません)と言うたらな。向こうもやさしくな、ノット アト オール(どういたしまして)と言うてくれたで」
「それはよかったなあ。久吉には一番うれしいことやったろう」
「うれしかった、うれしかった。いや、うれしいどころじゃないわ。背中がぞくぞくしたわ。それからな、キャサリンはわしを見る度に、ニコッと笑うてくれたんや。どうや、羨《うらや》ましくないか」
「別に」
音吉は琴の顔を思い浮かべた。
「負け惜しみ言わんと、もう一人のイザベラに、ちょっと当たってみんか」
久吉の笑う声が、夕ぐれの部屋一杯にひびきわたった。
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