日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

海嶺190

时间: 2020-03-19    进入日语论坛
核心提示:七 墓詣《はかまい》りを終えた三人は草に腰をおろして、丘の上からマカオの街を見おろした。ここからはモンテの城が見える。城
(单词翻译:双击或拖选)
 墓詣《はかまい》りを終えた三人は草に腰をおろして、丘の上からマカオの街を見おろした。ここからはモンテの城が見える。城を守る兵隊も見える。セントパウロ教会の焼け残った一枚の壁も見える。そして、茶色に濁る珠江《しゆこう》の水と、青い空を映す海が四月の光の下に広がっていた。
「なあ、舵取りさん、人間が死んだら仏さんになるんやろ。神さまにはならんわな」
久吉が傍《かたわ》らの草をむしりながら言う。
「そうとも限らんで、久。天神《てんじん》さまは神さまやけど、九州に流された菅原《すがわら》の道真《みちざね》だでな」
「そう言えば、そうやな。和尚《おしよう》さんがそう言うてたわな」
「けどな久吉」
海を眺《なが》めていた音吉が、視線を久吉に移した。
「けど、何や、音」
「けど、ミスター・ギュツラフの話を聞いたら、ますますわからんようになったわな。神は英語で、ザ・スピリットだと言うたわな」
「そうやな。わしら、ゴッドが神やと思うていたがな」
「ゴッドの説明は、何や面倒やったなあ。それでゴッドをゴクラクにしてみたけど、何や気に入らんわな」
「また始まった。ええやないか、音。ミスター・ギュツラフが気に入ったんやから、いいやろ」
「けど、それでいいんかな。神のほうがええと思うたけどな。な、舵取りさん」
草の上に寝ころんで空を見ていた岩吉が、真上を流れて行く雲を見ながら言った。
「わしもようわからんけどな。日本の国には神さまが多いでな。人を神にしたのもあるし、狐を神にしたのもあるし、船玉《ふなだま》さまは髪の毛や稲なんぞを埋めて神にしてあるしな。一言で神と言うと、かえってまちがうかも知れせんわな」
「そう言えばそうやな。日本には八百万《やおよろず》の神がいるだでな。この山や海を造ったのは神や言うても、ある人はお稲荷《いなり》さんが山や海を造ったんかいなと思うかも知れせんし、お伊勢さんが造ったんかと、みんなてんでに思うやろな」
「思ったって、ええでないか、音。面倒な話や」
「そうはいかんで、久吉。やっぱり、この世界を造られたお方と、造らんものと一緒にはできせんでな。とにかく、ミスター・ギュツラフは、ゴッドというのは高い所にあって、一番すばらしいものやと、何度も言うたわな、だからゴクラクやと決めたんやけど……」
「決めたんやから、それでいいんや。ゴクラクが一番の神さまや」
「けど久吉、ゴクラク言うたら、場所みたいな気がするけどな。仏さまのいる所のような気がするけどな」
もし日本に天国という言葉があったら、音吉たちはゴクラクとは言わずに天国と訳したろう。天国とは単に場所を意味するだけでなく、神の支配をも意味する。だから必ずしも突拍子《とつぴようし》もない訳ではなかった。
「仏さまも神さまも似たもんや。あんまり考えると、また頭が痛うなるわ。折角《せつかく》外に出てきたのにな」
「それもそうやな」
音吉は逆らわなかった。音吉たちは、ギュツラフの説明に従って言葉を探すより仕方がないのだ。昨日でようやくヨハネ伝の二章に入ったが、ギュツラフは今まで幾度も、ザ・スピリット(聖霊)とワードと、そしてゴッドは一つのものだと言っている。そうであるなら、ザ・スピリットを神と呼ぶように、ワードも、ゴッドも神と呼んでいいのではないかと音吉は思う。
「それはそうとな、音。ミスター・ギュツラフは、何でもかんでも拝んではならんと言うたわな。あれがわからんわな」
「わからんな。神棚《かみだな》があれば神棚を拝めばいいし、仏壇があれば仏壇を拝めばいいわな」
「そうや、そうや。道端《みちばた》の地蔵さんを拝んでもいいし、船玉《ふなだま》さまを拝んでもかまわんと思うけどな、音」
「エゲレスには神社や寺がないで、日本の事情がよくわからんのかな。どんな偉い人やって、お伊勢さんしか拝まんとか、熱田さんしか拝まんという人はあらせんわな」
「音の言うとおりや。どこにでも頭を下げておかんと、神さまに義理が立たんわな。どれほどの時間がかかるわけでなし。な、舵取《かじと》りさん」
岩吉は空を見ながら、自分が帰った時のわが家の様子を思い浮かべていた。まさかここに、自分が生きているとは知らずに、絹や親たちは幾度も墓詣《はかまい》りをしたにちがいない。その自分が帰って行ったら、一体家の者たちはどんな顔をして驚くことか。
(まさか、銀次と一緒になってはいまいな)
ふっとそう思った時に、久吉に声をかけられたのだ。
「何やって、久」
「ミスター・ギュツラフが何でもかんでも拝んではならん言うてたわな。けど、わしらは日本人だで、どの神さまにも仏さまにも、義理を立てねばいかんのやないかと、言うていたんや」
「まあ、それはそうだわな。けどな、この頃《ごろ》わしは、ミスター・ギュツラフの話を聞いていて、ちょっと考えが変わってきたで」
「へえー、どんなふうにや、舵取りさん」
白い蝶《ちよう》が二つもつれ合いながら、丘の下のねむの木のほうに舞って行った。
「日本だけでも八百万《やおよろず》の神があるわな。世界中にはどれほど多くの神がいるかわからん」
「そうやろ。わしら日本の神さまとキリシタンの神さましか考えんかったけど、ポルトガルとやら、オランダとやら、清国とやら、国はまだまだあるわな。世界中の神さまを集めたら、仰山《ぎようさん》な数やろな」
「そうや。けどな、人間の世界にも位があるように、神さまの世界にも、位があるのかも知れせんと思うてな」
「位なあ……」
久吉が頭をひねった。
「ほら、日本ではお伊勢さんが一番格が上やろ。田舎の、小さな祠《ほこら》だけの神さまとちがうやろ」
「それはそうやな。そう言えばお稲荷《いなり》さんと天神《てんじん》さんとどっちが偉いんやろ。お稲荷信者も多いと父っさまが言うてたで」
「人と狐じゃ、天神さまのほうが上やろ」
黙って聞いていた音吉が、
「な、舵取りさん。位の低い高いもあるかも知れせんけどな、ほんものの神さまと、にせものの神さまとあるんやないやろか」
「うん。わしも今それを言おうとしていたところや。ミスター・ギュツラフは、この天地を造ったのがジーザス・クライストを遣《つか》わした方だと言うたわな。つまりわしらに言わせれば神さまやわな。この天地を造ったのは、その神さましかいないとしたら、これはたった一人やな。あとはみんな、ほんとうの神かどうか、わからせん」
「そうやなあ、舵取《かじと》りさん。ほんものいうのは一つやなあ。ほんものの神さまに頭を下げんで、ほかのほうにばかり頭下げてたら、こりゃ一大事だな」
音吉は不意に気づいたように言った。久吉もうなずいて、
「ほんとやな、ご新造がな、自分の亭主をそっちのけにして、ほかの男に愛想ようしたら、こりゃことだわな、音」
「なんや、久吉ったら、何でも色恋に置き換える。けど、まあそんなもんやろな。ここにほんとの神さまがいるのに、あれもほんと、これもほんと言うてたら、ほんとの神さまが怒るやろな。これは大変なことになったわな」
音吉が浮かぬ顔をした。その音吉に久吉が言った。
「だからな、音、考えるなと言うんや。あんまり考えるから、大変なことになるんや。わしら船乗りは、板子《いたこ》一枚下は地獄だでな。誰も彼も信心深いわ。毎朝|水垢離《みずごり》とって、神棚《かみだな》に手を合わせたり、船玉《ふなだま》さまに手を合わせたり、ようしたもんや。それでええやないか。やっぱり、しきたりどおりに、何にでも頭下げといたほうが無難《ぶなん》と言うもんや、音」
「それもそうやけど、もしほんとの神さまにご無礼したら、これはもう申し訳あらせんことやで。わしは何だか、恐ろしいような気がしてきたわ」
音吉の言葉にうなずいた岩吉が、むっくりと起き上がって言った。
「とにかくな、あれもこれもというのは、ほんとの信心とは言えせんような気がする。あれもこれもではいかんのや。ほんとの信心はあれか、これかでなければならんのや。きっとな」
またしても爆竹《ばくちく》が激しく鳴った。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%