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海嶺197

时间: 2020-03-19    进入日语论坛
核心提示:六「雨やなあ。あいにくや」ベッドの上に起き上がった音吉が、浮かぬ顔で隣ベッドの久吉を見た。「うん。サンデー(日曜)だとい
(单词翻译:双击或拖选)
「雨やなあ。あいにくや」
ベッドの上に起き上がった音吉が、浮かぬ顔で隣ベッドの久吉を見た。
「うん。サンデー(日曜)だというのにな」
久吉は毛布を撥《は》ねのけた。庄蔵たち四人が来てから、初めての日曜日である。二、三日前から、三人は日曜日の来るのを恐れていた。毎週日曜日の正午には、岩吉たち、三人のための礼拝が始まる。フォード・バンクーバーにいた時以来、三人は日曜日に礼拝をすることには馴《な》れていた。
しかし、庄蔵たち四人が、マニラにいた時礼拝に出席させられたかどうか、三人はまだ聞いてはいない。それは、尋《たず》ねることさえ憚《はばか》られることであった。
昨日、夕食の時、ギュツラフは庄蔵たち四人に、明日は日曜日だから、教会の礼拝に出るようにと勧めていた。が、その言葉は、庄蔵たちにはよくは通じなかったようである。ギュツラフが英語で言う時は、岩吉たち三人の誰かが通訳した。が、ギュツラフも簡単なことなら日本語で伝えることができた。ギュツラフは昨夕日本語でこう言ったのだ。
「あす、チャーチに行きます。おまいりです」
あとで庄蔵たちは三人に尋ねた。
「あした、どこにお詣《まい》りするとですか」
思わず三人は顔を見合わせた。岩吉が言った。
「チャーチや。異人の寺や」
「異人の寺と!?」
叫ぶように寿三郎が聞き返した。
「キリシタンか!」
熊太郎の声が、更に大きかった。と、久吉が言った。
「ようわからんけどな。もしかしたら、そうかも知れせん。けどな、わしら三人はキリシタンではないだでな。心配は要らんわ。只《ただ》で食わせてもろうているで、義理で行くだけや」
船頭の庄蔵が大きくうなずき、
「事情はわかり申した。命あっての物種《ものだね》と言いますたい。国に帰るまでは、わしらも異人の言うなりになりますばい」
ものわかりのいい庄蔵に、三人はほっとした。が、熊太郎は、
「そぎぁんこつ! キリシタンは恐ろしか。お上の詮議《せんぎ》はきびしか」
と、頭を抱えた。そればかりか、熊太郎はこうも言った。
「あんたら、異人の言葉ぎょうさん使うけん、キリシタンでなかか!?」
岩吉ははっきりと首を横にふって、
「いいや、わしら日本人や。一日も早う日本に帰りたいでな。キリシタンになる訳あらせんやろ」
「そうや。舵取《かじと》りさんの言うとおりや。わしら異人の中にいただで、エゲレスの言葉をじねんと覚えてしもうたけどな。けど決してキリシタンにはなっておらんで。キリシタンになるにはな、キリシタンの水をかぶるんや。わしら、キリシタンの水にさわったこともあらせん」
「そうや。わしらの願いは只《ただ》、国に帰ることだけや。キリシタンになるわけはあらせん」
音吉もきっぱりと答えた。庄蔵は、
「これはこれは熊太郎が失礼なことば申して、すまんとですたい」
と、ていねいに詫《わ》び、それから四人だけで何か話し始めた。四人の言葉は、異国語のように耳|馴《な》れぬ言葉が多く、何を言っているのか、三人にはわからなかった。が、わからないながらも、四人が礼拝に出るか、出ないかを語り合っていることは、見当がついた。聞いていた久吉が言った。
「えらい早口やなあ。イングリッシュ(英語)よりむずかしいわ」
久吉の言葉に音吉もうなずいた。庄蔵も寿三郎も、字も言葉もよく覚えていて、三人に語る時はわかりやすく話すように努めてくれた。ギュツラフは、岩吉たちの言葉と庄蔵たちの言葉に驚いて、どちらが本当に多く使われている日本語か、見当がつかぬようであった。
やがて庄蔵が、岩吉たちに言った。
「異国には異国のしきたりがありますばい。わたくしどもをここへつれてきてくだされたキング先生も、ここの主《あるじ》ギツラフ[#「ギツラフ」に傍点]先生もキリシタンの先生と、初めから覚悟していたことですたい」
庄蔵は賢そうな目を岩吉たちに向け、落ちついて言った。
今、その時のことを思い出しながら、音吉は浮かぬ顔をしていた。
「何や、音。また何か考えているな」
久吉が釣《つ》りズボンのひもを肩にかけながら言った。
「けどなあ、あの四人もチャーチに行くわなあ。それがなあ」
「それでいいんやないか。わしらだけチャーチに行くんやったら、何や気味が悪いけど、これでほんとの仲間になるんや」
久吉の表情はむろん明るかった。
昨夜、庄蔵たちも確かに言っていた。
「わしらも、キリシタンの寺に行きますばい。ばってん、お上《かみ》にはお互い口が裂けても言わんとです」
そのことは音吉も忘れてはいない。
「けどなあ、久吉。ミスター・ギュツラフは、またわしらの手伝うたあのバイブルを使うにちがいあらせんで」
「あっ、そう言えばそうやな。それがあったわな」
「そうやでえ、久吉。あれ読んだらなあ。誰が日本の言葉に直したか、すぐに気づかれるやないか」
「うーん。そうやなあ」
二人のほうに背を向けて、まだ眠っている岩吉に目を向けながら、久吉は声をひそめた。
「わしらの仕事とわかったら、どうするんや久吉」
「だがな、音。ミスター・ギュツラフは、日本の言葉がうまいでな。それでな、ミスター・ギュツラフのした仕事だと言えばいいんや。わしらは何も知らん顔をしていればいいんや」
「そうかな。それで通ればいいけどな」
音吉は毛布をたたむ手をとめた。
午《ひる》になった。
すぐ近くにある小さな教会堂に、雨の中を七人はつれ立って行った。七つのコーモリ傘《がさ》が、背の高さに従って、高く、また低く動いて行く。
家から教会堂までは、五分とかからない。五十人入れるか入れないかの、小さな会堂である。会堂の正面に「太初有道」と書かれた額が掛けられてある。読み書きの達者な庄蔵が、すぐその額に目を注《と》め、口の中で低く読んだ。講壇の左手にある小さなオルガンの傍《そば》に立っていたキャサリンが笑顔で七人を迎えた。四人掛けのベンチが何脚か二列に並んでいる。七人は前から二番目のベンチに坐《すわ》った。オルガンの前奏が始まると、庄蔵たち四人はその音色《ねいろ》に驚いて目を見張った。が、熊太郎はすぐにうつむいた。
ギュツラフの祈りが終わり、音吉が案じていたように、和訳の聖書が読み上げられた。まだ印刷された聖書は、シンガポールから届いてはいない。ギュツラフは自分のノートをひらいて読んだ。
「アノヒトワ ワシノツミユヱ ミガハリニタツ。ワシドモバカリワナイ タダシミナセカイユヱ。(彼は、わたしたちの罪のための、あがないの供え物である。ただ、わたしたちの罪のためばかりではなく、全世界の罪のためである。ヨハネ第一の手紙二章二節)」
読み終わったギュツラフは満面に笑みを湛《たた》えて、七人の顔を順々に見た。
「きょうは、わたしたいへんうれしいです。さいわいです。七人の日本人とおまいりをすること、思いませんでした。このうれしいきもち、わかりますか」
ギュツラフにとって、今日の日は確かに想像もしないことだった。七人もの日本人の前に、自分の訳した聖書を読む日が、これほど早く来ようとは、夢にも思わぬことであった。ギュツラフは、神の深い恵みを感じていた。
「にんげん、罪あります。誰も。人をにくみました。うらみました。これ罪です。そしりました。心の中に。わたしたちの心、毎日毎日、罪を持ちます。罪、たくさんになります。罪ない日、ありません。この罪持って、にんげん死にます。それゆえ、ゲヘナ(地獄)に行きます」
熊太郎は指で両耳をふさいでいた。しかし庄蔵も、寿三郎も、そして一番年少の力松も、ギュツラフの顔をしっかりと見て、話も聞いていた。音吉と久吉は、その四人の様子をそっとうかがっていた。
「……罪の人、ほろびます。けれど、罪の人ほろばない道あります。それは、ジーザス・クライストです。この人、わたしたちの身代わりです。わたしたち助かります。ジーザス・クライスト、みんなの罪の身代わりになりましたから、助かります。にんげんは、このことだけ、忘れてはなりません。……あなた罪ありますか」
突然ギュツラフは、熊太郎を指さした。熊太郎は両耳に指を突っこんだままだった。
「あなた、罪ありますか」
ギュツラフは寿三郎を指さした。寿三郎は大きくうなずいて、
「あるとです。船が流されたは大きな罪とです」
「船流された?」
ギュツラフは問い返した。音吉が英語で、漂流のことだと告げた。
「おう、流された。それ、人の罪でありません」
「いや、ミスター・ギュツラフ。日本では、それは大きな罪です」
岩吉が英語で言った。
「どうして? 嵐に遭《あ》った、それ人の罪ですか」
「ミスター・ギュツラフ。日本では、人を恨んでも、悪口を言っても、牢《ろう》には入れられません。しかし、日本の海から流れ出た者が日本に帰れば、牢に入ります。もしかすると、殺されます。日本では、船が流れたことは、大きな罪です」
以前にも、岩吉はこのことをギュツラフに話した筈《はず》であった。が、ギュツラフにはよく理解されていないように、岩吉には見えた。ギュツラフが、日本語で答えた。
「おお、それ、罪でありません。罪、そんなことではありません。バイブルにある罪はにんげんの心の罪です。憎むこと、ねたむこと、人の妻ほしいこと、これ罪です。殺すこと、ぬすむこと、これ罪です。けれども、ジーザス・クライストが、わたしたちの罪をかぶります。全部かぶります。わたしたち安心です」
そう言った時、寿三郎が大声で言った。
「そぎゃんこつ……人の罪をかぶる……そぎゃんこつ、信じられんとです!」
その時、音吉は思わず、心の中に叫んだ。
(なぜ、信じられせん!? ジーザス・クライストは、ほんとに罪をかぶってくれたんや)
音吉はそう思って、思わずはっとした。
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