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海嶺198

时间: 2020-03-19    进入日语论坛
核心提示:七 紗《しや》のような薄雲を透かして、六月の赤い夕日が大きかった。その夕空の下に、幾十もの砲門をつらねたイギリス軍艦ロー
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 紗《しや》のような薄雲を透かして、六月の赤い夕日が大きかった。その夕空の下に、幾十もの砲門をつらねたイギリス軍艦ローリー号が停泊していた。
「まちがいなくエゲレスの戦船《いくさぶね》や。待ちに待った船や。な、音」
「全くやなあ。とうとう来てくれたんやなあ」
岩吉、音吉、久吉の三人は、今、船着き場に横たわっているローリー号をまたたきもせずに見つめていた。三人の傍《かたわ》らに、庄蔵たち四人が口々に何か言いながら、甲板《かんぱん》を走りまわる水兵たちを指さしている。
庄蔵たち四人がフィリッピンからマカオに来て、三か月経っていた。ボルネオに向かったヒマレー号が帰ってくれば、日本に帰れるという話や、イギリスの軍艦が来れば、その軍艦で帰れるかも知れないという話を、庄蔵の来た頃《ころ》から聞かされていた。だが、イギリスの軍艦も、ボルネオに向かっていた福音船《ふくいんせん》ヒマレー号も、いっかな姿を見せようとしない。
一時は、清国の船で日本に帰るという話もあった。それは、イギリス政府から商務庁長官に対して、
〈三人の日本人は、日本向け清国帆船によって送り帰すこと〉
という指令があったからである。だがこの話は、いつとはなく立ち消えになった。
事は、イギリス政府の考えているほどには容易に運ばなかった。早くから日本と通商を許されていた清国は、日本の事情に詳しかった。漂流民に対する異様なまでの幕府のきびしさを、清国側は知っていた。たとえ漂流民を送り届けたとしても、それはあたかも疫病神《やくびようがみ》を運びこんだかの如くひんしゅくを買う。ばかりか、送って行った船に対してまで、日本の幕府はうさん臭げに扱うのである。まちがっても喜ばれないこの役目を、清国が引き受けるわけはない。こうして、三人を清国船で送り帰すイギリス政府の方針は、変えざるを得なかった。
初め、アメリカのオリファント商会のキングは、その商会の福音船ヒマレー号によって、三人を日本に送り届けるつもりでいた。それはギュツラフの強い希望であったから、キングはそれをイギリス側の意向として受けとったのである。
だが、キングはその後、イギリス政府の方針をはっきりと知った。特に、ロビンソンに代わって商務庁長官になった前次官エリオットが、アメリカの船で岩吉たちを日本に帰すのを好まぬことを知った。岩吉たち三人は、フラッタリー岬で、インデアンの手から買い取られて以来、イギリスの保護下にある。その三人を、イギリス政府の意向に反して送り帰すことは、アメリカ人のキングにはできないことであった。
そんな成り行きになっているとは知らずに、岩吉たちは、ヒマレー号か、イギリス軍艦かの何《いず》れかが、自分たちを日本に送り帰してくれるものと思っていた。が、ボルネオ方面に行ったヒマレー号も、イギリス軍艦も一向に姿を見せない。
「もうそろそろ来てもいい頃《ころ》やな」
久吉はそう言い、この半月|程《ほど》、毎朝、音吉と共に港に出かけた。しかし、来る日も来る日も、二人はむなしく戻って来た。
今朝も、音吉と久吉はむなしく港から戻《もど》って来た。戻ってくるなり久吉は、ベッドに仰向けになって、
「舵取《かじと》りさん、わしらほんとに帰れるんやろか。ヒマレー号はどこぞで嵐に遭《お》うて、流されたんやないやろか」
と、元気のない声で言った。
それが夕刻になって、ローリー号入港の知らせを、キャサリンから聞いた。三人は、庄蔵たちと共に漢字の手習いをしていたが、筆や硯《すずり》をしまうのももどかしく、港に駈《か》けて来た。正《まさ》しく軍艦ローリー号は入港していた。
「舵取りさん、今度こそ大丈夫やな。きっとあれで帰れるんやな」
弾んだ久吉の声に、岩吉は石の上に腰をおろして、
「とは思うがな、乗ってみるまでは喜べんで」
と、それでも明るい声で言った。
「そりゃあ乗ってみなければ、わからせんけどな。ヒマレー号は帰って来んのやから、この軍艦に乗るより仕方あらせんわな」
シュラウドを駈《か》け登る水兵たちの姿を見ながら、久吉が言う。
「けどなあ。ずいぶんたくさんの大砲を乗せとるな。あんな船で帰ったら、お上《かみ》のお咎《とが》めがきつうなるのとちがうか」
「音の言うとおりや。あまり喜べんかも知れせんな」
岩吉がうなずいた。
「また、そんなことを言う。エゲレスはよその国やで。よその国が船を仕立てて、送ってくれるんや。日本のお上は、そんなに話がわからんやろか」
「お上というものの腹の底は、わしらにはわからせんでな」
「そうやろか。そんなに闇《やみ》くもに咎めるやろか」
「何せ流されたことが大きな罪だでな、久」
軍艦ローリー号入港と聞いた時の喜びが、音吉の胸の中で次第にしぼんでいった。
「けどな舵取《かじと》りさん、まさか殺しもせんやろ。キリシタンにさえなっていなければ、家に帰してくれるのとちがうか。な、音」
「久吉にそう言われれば、そんな気もしてくるしな」
と、音吉も少し元気を取り戻《もど》す。
「ま、久の言うとおりかも知れせん。異人でさえわしらを大事にしてくれたでな。それに、案ずるより生むが易《やす》しと言うでな。取り越し苦労してもきりがあらせん。無事に帰れると喜んでいたほうがいいやろ」
岩吉の言葉に、音吉は深くうなずいて、
「そうやな。一日の苦労は、一日だけでたくさんやって、バイブルに書いてあったわな」
「音! まちがっても、そんなこと言うたらいかんで、ナムアミダブツ、ナムアミダブツ言うていたら、まちがいないんや」
庄蔵たちのほうを盗み見ながら、久吉は低い声で音吉をたしなめた。
久吉は、庄蔵たちがマカオに来てから、食膳《しよくぜん》に手を合わせて、ナムアミダブツと言うようになった。一緒に庭仕事をしていて、般若心経《はんにやしんぎよう》を口ずさむこともある。
「久吉は賢いわ」
音吉はうなずいて、
「ナムアミダブツ、ナムアミダブツ」
と、庄蔵たちのほうを見ながら言った。
「あのな……」
久吉が明るい声で、庄蔵たちに話しかけた。七人は、仲はよいのだが、つい三人と四人に別れてしまう。言葉が聞き取りにくいからだ。船頭の庄蔵と寿三郎は、かなりわかりやすく話してくれるのだが、それでも聞き覚えのない言葉がひょいひょいと口から出る。それはおもしろく、珍しくもあったが、聞き取るのに苦労もした。話に熱中してくると、ほとんど言葉がわからなくなる。それでつい、二組に別れてしまう。
久吉の声に、四人は久吉を見た。
「あのな……わしらがアメリカからエゲレスまで行った船は、ちょうどこんな戦船《いくさぶね》でな」
「ほほう。こぎゃん大きか船に乗ったとですか」
四人は三人を取り囲むようにして、腰をおろした。
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