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海嶺202

时间: 2020-03-19    进入日语论坛
核心提示:三 翌日も暑かった。船室の寒暖計は午前十時で華氏《かし》九十度を超えていた。昨日上陸したキングたちは、今朝も早くから、ボ
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 翌日も暑かった。船室の寒暖計は午前十時で華氏《かし》九十度を超えていた。昨日上陸したキングたちは、今朝も早くから、ボートを漕《こ》いで都の首里《しゆり》を訪ねて行った。が、昨日にまさる暑さに、遥《はる》かに浮かぶキラマ諸島を丘の森から眺《なが》め、東の首里の家並みを眺めただけで、引き返して来た。
船に戻《もど》るや否や、ウイリアムズが岩吉たちに告げた。
「漢字とひら仮名で書いた本を持っていた少年がいましたよ。あれは日本人でしょうか。それはそうと、琉球《りゆうきゆう》という所は、清国《しんこく》とは全然ちがいますね。清国では、物売りが大声で叫びながら売り歩きますが、そんな物売りは一人もおりません。いや、人だけではありません。犬がいるのかどうか、犬の鳴き声もしなかった。静かな町ですよ」
聞かされて岩吉たちは、甲板《かんぱん》から那覇《なは》の町を眺めた。焼けつくような太陽の光が、丘の緑をぎらぎらと照らしていた。
甲板から下りた岩吉たちは、ドアをあけ放したままの船室に、暑さを避けた。と、庄蔵が笑いながら、
「琉球の女子《おなご》は、なかなかよかとです」
と、故里で聞いた話を始めた。
「なかなかよかと? どんなふうによかとですか」
久吉が庄蔵たちの言葉を真似《まね》て、膝《ひざ》を進めた。
「それはのう、嫁入り前は遊び女《め》のようにどぎゃん男とでも交わるとです」
「へえー、それはええな。けど、親は黙っとるのかな」
「いやいや、親も娘も、これを恥とはせんとです。ばってん嫁いだが最期《さいご》、その堅いこと比べるものがないちゅうこつです。親戚《しんせき》の者が来ても、顔を見せんとです。亭主のほか、絶対に同席せんとです」
「ほう。どうしてそんなに堅くなれるんやろな。不思議やな」
「全く不思議なこつです。その上、嫁《か》したる以上は、自分で稼いででも、亭主を色里に遊ばすのが、ここの女の道とですたい。決して妬《や》きもちは焼かんとですたい。亭主を遊ばせんような者は、婦道を知らぬと、笑い者になるちゅうこつです」
久吉がまた庄蔵の言葉を真似て、
「こりゃあ、男の極楽たい。全く、ゆうべ聞いたように、ここは乙姫《おとひめ》さんの竜宮《りゆうぐう》たい」
昨夜庄蔵は、浦島太郎が亀につれて行かれた竜宮は、即《すなわ》ちこの琉球だと言っていた。六人が、久吉のひょうきんな語調に、思わず笑った時、あけ放ってある戸口から、昨日の役人が入って来た。七人は途端に押し黙った。
「おはんらは、まちがいなく日本人でごわすな」
いかめしい薩摩《さつま》の言葉だった。
「昨日も申したとおり、わしらは日本人ですたい」
きっぱりと庄蔵が答えると、役人たちは急に昨日のように早口となり、庄蔵もまた早口に答えた。昨日と同じく、ここでモリソン号から降りるのを勧めているのが、岩吉たちにもわかった。
が、やがて役人は出て行った。
「断ったんやな、船頭さん」
音吉が尋ねると、
「断ったとです」
庄蔵は微笑して見せた。
この日の昼、船長が役人たちに頼んでおいた新鮮な鶏卵やみずみずしい瓜《うり》が食卓を賑《にぎ》わした。
午後になって、日本の船が一|隻《せき》薩摩に向けて出て行った。砂糖が積まれてあるのだと、ウイリアムズが言った。日本の船に乗ることを拒んだ七人は、複雑な思いでその船を見送った。と、音吉が叫んだ。
「あ! 舵取《かじと》りさん。宝山丸と書いてあるわ! 宝順丸の弟分みたいやな」
岩吉は船尾に書かれた「宝山丸」の字に目をとめたまま、答えなかった。
十四日、通訳のアニヤと、役人たちが、肥《こ》えた三頭の豚と、同じく大きな二頭の山羊《やぎ》を、幾|桶《おけ》かの水と共に運んで来た。
そしてこの日、軍艦ローリー号がその姿を南の洋上に見せたのである。
「来た来た! ローリー号が来たーっ!」
岩吉たち七人をはじめ、キングもウイリアムズも、一斉《いつせい》に声を上げて手をふった。役人たちが驚いて船端に駈《か》けよる程《ほど》の歓声であった。キングがふり返って役人に言った。
「あの船から友人が乗り移ったら、われわれは明日にも出帆します」
「明日!? 明日ここを出るのですな」
おさえきれぬ笑みを浮かべて、いかにも安心したように、お互いにうなずきあった。
やがて役人たちはモリソン号を降り、錨《いかり》をおろしたローリー号に小舟を向けた。岩吉たちは暑い甲板《かんぱん》に出て、ギュツラフを待った。まもなくギュツラフがモリソン号に乗りこんで来た。
「おう、みなさん。ご機嫌《きげん》よう」
ギュツラフは、岩吉、久吉、音吉と、順々に握手をし、庄蔵から力松に至るまで、一人一人に言葉をかけた。音吉はうれしさの余り涙をこぼした。一年七か月、音吉たちはギュツラフの家に世話になったのだ。その間、一度としてギュツラフは三人を冷たくあしらったことはない。ギュツラフはいつも、三人を大切な友人のように扱ってくれた。
そのギュツラフと七人の様子を眺《なが》めていたウイリアムズとキングが感動の面持《おもも》ちで近づいて来た。
しばらくして、七人は船長室に呼ばれた。そこにはギュツラフとキングが待っていた。七人が椅子《いす》に腰をおろすや否や、ギュツラフが日本語で尋《たず》ねた。
「どうですか。あなたがた、日本に帰る心の準備、できましたか」
「はい。できております」
岩吉が答えた。ギュツラフは、音吉、久吉、庄蔵と、一人一人の気持ちを確かめて行った。一同が、帰る覚悟ができていることを順に述べると、更《さら》にギュツラフが言った。
「では、ほんとうに日本に帰りたいですか」
ギュツラフは、これまた一人一人に答えを促した。
「どんなことがあっても帰りたい。日本に帰るしか、望みはありません」
「日本のほかに、どこに帰るとですか」
「親と子の顔を見たら、その場で息が絶えてもかまいませぬ」
七人はそれぞれ真心から答えた。
「では最後に、もう一つ尋ねます。このモリソン号で、行きたいですか。それとも、日本の船で行きたいですか」
七人は口を揃《そろ》えて、モリソン号で帰りたいと告げた。日本の船が、嵐に弱いことも告げた。ギュツラフは、重ねて尋ねた。
「この船で日本に行っても、日本はあなたがたを受け入れますか」
「わしらは日本人です。きっと、情け深く、わしらの苦労を聞いてくれると思います」
岩吉が答えると、他の六人も、口々に同じことを言った。ギュツラフは英語でキングにその旨《むね》を伝えた。と、キングは英語で言った。
「あなたがたの気持ちはよくわかりました。あなたがたの意志を尊重して、日本に送り届けましょう。安心してください」
七人は、琉球の役人から薩摩の船に乗るようにと勧められたことは、ギュツラフに話さなかった。モリソン号のほうが、すべての面で安全に思われたからである。
七人が立ち去ると、ギュツラフとキングは、日本人のために一層力を尽くすことを誓い合って握手を交わした。
「今日、ローリー号で会議があります。終わり次第、わたしの荷物をこちらに運びたいと思います。多分、明日の午後にはここに移ることができるでしょう」
ギュツラフはそう言って、忙しげに立ち上がった。ギュツラフは、長官エリオットの計らいで、明日からしばらく、休暇が与えられることになっていた。つまり、ギュツラフはイギリス政府の官吏《かんり》ではなく、個人として日本を訪れるのである。
部屋を出ていこうとするギュツラフに、キングが言った。
「ミスター・ギュツラフ。恐縮ですが、ローリー号にお預かり頂きたい荷物があるのですが」
「おやすいご用です。どんな荷物でしょうか」
「船員に運ばせます。実は、わたしの知らぬ間に、キリスト教の小冊子がたくさん積みこまれてあったのです」
マカオを発《た》つ時の申し合わせでは、日本政府を刺激しないために、一切《いつさい》の宗教文書をモリソン号に乗せないことにした筈《はず》であった。だが、伝道熱心なギュツラフがひそかにトラクト(冊子)を何千部も積みこんでいたのである。
ギュツラフは少し顔を赤らめて詫《わ》びた。
「申し訳ありません」
「わかっていただけたらありがたい。ミスター・ギュツラフ。わたしは何よりも、彼らを安全に故国に帰してやりたいのです。そのためには、この度《たび》だけは、トラクト頒布《はんぷ》はあきらめてください」
「わかりました。お手数をおかけいたしました」
ギュツラフは、キングの真実に打たれたようであった。
サンゴ礁《しよう》の汀《みぎわ》に打ち寄せる波が白い。カモメが幾つも夕焼けを映した海の上に、低く舞っていた。
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