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海嶺208

时间: 2020-03-19    进入日语论坛
核心提示:四 昼食を終えて岩吉たちは甲板《かんぱん》に出た。右手に白煙を吐く大島の三原山《みはらやま》が見え、船は伊豆半島に一|里
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 昼食を終えて岩吉たちは甲板《かんぱん》に出た。右手に白煙を吐く大島の三原山《みはらやま》が見え、船は伊豆半島に一|里程《りほど》の近さに迫っていた。下田湾《しもだわん》がすぐ目の前に見える。
「千石船《せんごくぶね》や!」
「千石船や!」
久吉と音吉が船縁に駈《か》け寄った。突如《とつじよ》二十|隻《せき》を超える千石船が海上に現れたのだ。小さな漁船も無数に見える。
「たくさんのジャンクですな。何かあったんでしょうか?」
キングと並んで何か話していたウイリアムズが、岩吉に尋ねた。どの船も西に向かって進んでいる。モリソン号とは行き交う形だ。岩吉は英語で答えた。
「ああ、あれらの船は、きっと下田の港に、風の変わるのを待っていたのでしょう。わたしたちも江戸を往復していた頃《ころ》、よくこのあたりで風待ちをしていたものです」
岩吉の言うとおりだった。いつしか風向きが変わっていたのだ。西南からの風を背に受けていたモリソン号は、今、北東の風に逆らって、間切《まき》り航法に移っていた。幸い潮の流れに乗っていたから、難航する程《ほど》ではなかった。が、今西に向かう千石船や漁船は、追い風を得てこのあたりの湾から出て来たらしい。
「小野浦の千石船はいないやろかな、音」
「わしもな、久吉。今そう思うていたところや」
「小野浦の船があったら、今すぐ乗せてってほしいわ」
「ほんとやなあ。みんな、自分の家に帰るんやろか、羨《うらや》ましいなあ」
「帰り船とは限らんで。江戸から大坂へ向かうのもあるやろ」
九州の寿三郎たちも、近づいて来る千石船を見て、何か声高に話し合っている。
「わしらの船は三本マストだでな。異国の船だとすぐにわかるやろな」
「けど、気にもとめんようやな。あんまり近づいて来るのもあらせんわ」
そう言ったが、それでもモリソン号のすぐ前を横切って、南下して行った千石船があった。
ウイリアムズがギュツラフに言った。
「日本と言う国は、なんと美しい国でしょうな。まるで山また山の一大画廊を見るようですな」
「全くです。パノラマを見るようです。あの山並みの向こうに見えるマウント・富士をごらんなさい」
「口にもペンにも言い現せませんな。こんな美しい国だから、岩吉や庄蔵たちのような、賢く、礼儀正しい国民が育ったのですね」
今またバウ・スプリットに登って行く七人の日本人に目をやりながら、ウイリアムズは言った。
「同様です、ミスター・ウイリアムズ。おそらく日本人は、心あたたかくわたしたちを迎えてくれることでしょう。そして、快く彼らを引き取ってくれることでしょう。そしてあるいは、アメリカとの通商に心を動かしてくれるかも知れませんよ。ねえミスター・キング」
メモ帖《ちよう》を片手に、日本の風景を眺《なが》めていたキングが、二人に向かって笑顔を見せ、
「そう願いたいものですな」
キングはこの時、メモに次のような走り書きをしていた。
〈午《ひる》過ぎわれわれは巨大な伊豆半島へ、二、三マイル以内に接近した。この半島の先端には、半島と同名の伊豆岬があり、アガチエ岬が西側にある。半島は崇高《すうこう》な山々の集塊《しゆうかい》で、中央には日本における最高峰の一つである富士山が、一万二千ないし一万五千フィートの高さに聳《そび》え、傾斜せる両側と、平らな頂上とで、大きな屋根の形をしている〉
しかしこの時、富士山の一部には、まだ雲がかかっていた。が、午後四時半には、モリソン号の北西に、全く雲の吹き払われたその姿を見せ、斜面の雪渓《せつけい》が、青空の下に七月の陽を受けて輝いていた。この雪を見たパーカーは、
〈この間からわれわれは雪が近くにあることを感じていたが、水銀柱は七十七度半(摂氏《せつし》二十五度強)を示していたにも拘《かかわ》らず、寒くて外套《がいとう》を着たいほどであった〉
と、その日の日記に記してある。
 モリソン号は今、浦賀水道《うらがすいどう》に向けて相模灘《さがみなだ》を静かに進んでいた。日はすっかり暮れて、一日中|眩《まぶ》しく日を返していた海は、闇《やみ》の中にくろぐろと静まりかえっていた。右手の大島も影のように黒い。波に見えかくれしていた漁船も水鳥も、いつしか影をひそめた。美しい緑の山々も最早《もはや》その姿を消した。海岸の遠く近くに常夜灯が見える。
「日本の夜や」
船室の窓に寄っていた岩吉が呟《つぶや》いた。
「まことに日本の夜とです。マニラにも、マカオにもなかった夜とです」
庄蔵も、隣の窓から、暗くなった陸地を飽かずに見つめていた。
「これでお上《かみ》が吟味をゆるうしてくれたら、言うこつなかとですたい」
手枕をしたまま、寿三郎が言う。
「ミスター・ギュツラフは、日本人は大丈夫話が通ると言うていたがな」
岩吉もギュツラフの言葉に、いささか安堵《あんど》していた。わざわざ異国の人々が、手間ひまかけて送り届ける者を、無下《むげ》には扱わないと思いたかった。一番年下の力松が、もう寝息を立てている。まだ十五の力松には不安が少ないのだ。
「おや? 舵取《かじと》りさん、あの火は何やろ?」
音吉が訝《いぶか》しげに言った。
「火? 常夜灯とちがうか」
岩吉も、庄蔵も寿三郎も、音吉の指さす方に目を凝らした。
「何や、見馴《みな》れぬ火やな」
岩吉が素早く立ち上がった。と、みんなが岩吉の後につづいて甲板《かんぱん》に出た。幾つかの高台に、赤々と燃え上がる火が見えた。
「常夜灯ではあらせん」
岩吉はきっぱりと言った。
「とすると……狼火《のろし》かのう」
庄蔵の言葉に、一同が口々に叫んだ。
「狼火や! 狼火や!」
いつの間にか、ギュツラフやインガソル船長が近づいて来た。
「のろし? それ何ですか」
ギュツラフの問いに岩吉が答えた。
「のろしはサインです。敵が来た時、兵隊を集める時、何か変わった事がある時、遠い所に知らせる方法です」
「わかりました。なるほど、ではあの火は、モリソン号を都に知らせるサインかも知れませんね」
「そうかも知れません」
音吉と久吉は不安な顔を岩吉に向け、ギュツラフに向けた。
「一体、どういうことになるんやろ」
次々と増える狼火を見て、音吉は心細げに言った。
「心配なかとです。ミスター・ギュツラフが話をつけてくれるとです」
船頭の庄蔵はあわてなかった。
「そのとおりや。ミスター・キングも、帝《みかど》に貢物《みつぎもの》を持ってこられた。そのうえ、お上宛《かみあて》に書いた詳しい手紙も持って来られたでな」
その手紙には、漂流民七人のことが述べられてあり、アメリカという新しい国についての説明が述べられていた。贈り物は、初代大統領ワシントンの肖像画、手袋、百科辞典、望遠鏡、アメリカ史、アメリカ条約集などであった。またドクター・パーカーは、数々の薬を贈り物として用意して来た。
「この船は、日本に何の害も加える船ではなか」
「船頭さんの言うとおりや。大砲《おおづつ》はみんな外《はず》した。キリシタンのちらしは一枚ものせてあらせん。ミスター・キングはご新造をつれて来たしな」
「ほんとやな。この船は戦《いくさ》船ではあらせん。ただ親切で、わしらを送ってくれているだでな。いくらお上やかて、遠い国のお客さんを、手荒くは扱わんわな」
久吉の明るい声も、しかし音吉の不安を静めはしなかった。音吉は狼火《のろし》の赤い火を、言いようのない、いやな心地《ここち》で見つめていた。
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