日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

海嶺216

时间: 2020-03-19    进入日语论坛
核心提示:一二 晴れた空だ。雲一つない空だ。が、海のうねりが大きい。昨日の朝浦賀を出たモリソン号は、激しい追い風を受けて一気に遠州
(单词翻译:双击或拖选)
一二
 晴れた空だ。雲一つない空だ。が、海のうねりが大きい。昨日の朝浦賀を出たモリソン号は、激しい追い風を受けて一気に遠州灘《えんしゆうなだ》を過ぎ、今日はもう鳥羽を目指していた。その甲板《かんぱん》に、音吉たち七人が生気《せいき》づいた顔を並べて立っていた。午《ひる》近い日の光がまばゆい。
「音、鳥羽からは小野浦の空が見えるで」
「ほんとや。きっと知っている船も鳥羽にはいるわ」
「そうやそうや。したら、家の便りも聞けるわな」
「うん、聞ける、聞ける」
音吉は声を弾ませた。琴のうわさも、そこで聞けるかも知れないと思う。
(どうせ、もう婿取《むこと》りをしたやろけど)
そうは思っても、鳥羽に錨《いかり》をおろすことはうれしかった。
「もしかして、うちの父《と》っさまが鳥羽に来てるかも知れせんで」
久吉は、幾度か鳥羽に行ったことを思いながら言う。
鳥羽のすぐ近くに菅《すが》島がある。そこから飛び石のように答志《とうし》島、海島、神島と伊勢湾の口を小島がつづく。鳥羽の社《やしろ》に登ると、それらの島が渥美《あつみ》半島に向かって延びているのが見えたものだ。その渥美半島と知多半島の間に、篠《しの》島、日間賀《ひまか》島、野島などが点々とつづき、今日のような晴れた日には、師崎《もろざき》のあたりもはっきりと見える筈《はず》だ。
(小野浦はすぐそこや)
音吉は胸苦しくなった。
「今度こそ帰れるやろな、音」
久吉が不意に不安げに言った。
「大丈夫や。大丈夫の筈や」
音吉は自分で自分を励ますように言った。自分の生まれ故郷のすぐ傍《そば》から追い帰されることはないような気がする。とは思いながらも、いやでも浦賀での砲弾の音が思い出される。
「けど……鳥羽には城があるだでな。やっぱり大砲があるかも知れせんな」
久吉がそう言った時、俄《にわ》かに風向きが変わった。
「おっ、向かい風になったな」
岩吉が呟《つぶや》いた。
「悪か風向きじゃ」
庄蔵も答えた。一同は眉《まゆ》をひそめた。
やがて岩吉が言った。
「この風では暇ばかりかかって、陸に近づくのは難儀やな」
「ひどい風やけど、舵取《かじと》りさん、今に弱まるとちがうか」
音吉が言う。
「そう願ったとおりになってくれると、ありがたいけどな」
言う間もなく、逆風がますます強くなった。激しい西風だ。立っている二、三人が吹き飛ばされそうによろめいた。潮流も船に逆らっている。モリソン号はしばらくの間その逆風と潮流に抗《あらが》っていた。
「何としてでも、鳥羽に行きたいな、な、音」
水鳥が矢のような早さで、船の前を風に煽《あお》られて過ぎた。
「まったくや、鳥羽を見たい。鳥羽をな」
宝順丸で鳥羽を出た夜の嵐を、音吉は思いながらうなずいた。
(あん時、鳥羽を出んとよかった。したら、兄さも、船頭さんも、炊頭《かしきがしら》も、みんな死なんですんだ)
「なあ、音。むごい風やな。風までわしらば追い帰すつもりやろか」
「まさか。間切《まき》りながら、今に鳥羽に近づくで」
絶え間なく動索が軋《きし》む。帆柱が青い空の中に大きく動く。船が右に左に傾き、水平線が左に浮かび、右に沈む。船員がきびきびと、命綱につかまりながら働いている。
半刻ほど経って、モリソン号は遂に向きを変えた。鳥羽に入ることを諦《あきら》めたのだ。浦賀で薪水《しんすい》の供給も受けなかったモリソン号は、時間を浪費するわけにはいかなかった。
「何やって、鳥羽にも寄れんのか!」
インガソル船長の、鳥羽を諦めるという言葉に、音吉も久吉も声を揃《そろ》えて叫んだ。
「久、音、仕方あらせん。この風や、この潮や。抗《あらが》うにも限りがあるだでな」
たしなめる岩吉の顔にも、ありありと失望の色があった。
船は紀伊半島の新宮に向かうとキングが言った。が、この新宮に近づくことも、風と潮が阻《はば》んだ。岩吉と庄蔵がキングの部屋に呼ばれた。
「残念です。あなたがたの望む港に入りたかったが、ごらんのとおりです」
キングの言葉を伝えるギュツラフに、二人は頭を下げ、庄蔵が言った。
「仕方なかとです。わしらも諦《あきら》めていたとです」
「そこで相談があるのですが、あなたたちはこれからどこの港に向かったらよいと思いますか」
岩吉と庄蔵は顔を見合わせた。新宮にも近づけないと見て取った時、七人は話し合った。日本中の大名の中で大きな力を持つ薩摩藩《さつまはん》に頼るがよいと、九州組が言い出したのだ。そのことを告げると、
「薩摩? では薩摩の鹿児島ですね」
キングが大きくうなずいた。ギュツラフが言った。
「ミスター・キング。薩摩藩の権威はご承知のように、九州はむろんのこと、先に寄った琉球、台湾に至るまで、まことに広い範囲に及んでいるのです」
「そうですね。鹿児島と言えば、ザビエルが初めて日本に上陸した所ですね」
「そうですそうです。二百九十五年前にポルトガル人が漂着したのも、確かこのあたりだと聞いています」
キングとギュツラフがうなずき合った。庄蔵が言った。
「鹿児島には、長崎に入った清国の船や、オランダの船が、いつも寄っておるとです」
「え? 長崎以外に外国船が入れるのですか」
「いいえ、お上に隠れて、残り荷を薩摩に売るとです」
「ほほう、薩摩はオランダや清国と、単独に貿易をしているということですか」
オリファント商会の重責にあるキングの目が輝いた。ギュツラフが思い出したように、
「そう言えば、わたしもそのうわさを一、二度聞いたことがあります」
「わかりました。とにかく、江戸の政府を恐れず、かなり自由にふるまっている領主ですね、薩摩の領主は。では、岩吉たちにも理解を示すでしょうし、わたしたちの望む貿易にも、話に乗ってくれることでしょう」
キングは江戸湾を出て以来、初めて晴々とした微笑を見せた。キングたちが話し合っている間にも、モリソン号は逆流に阻《はば》まれて、毎時一マイル半以上も速度が落ちていた。だが目的地を定めたキングの心は軽かった。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%