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海嶺220

时间: 2020-03-21    进入日语论坛
核心提示:一六 その日一八三七年、天保八年八月十二日、前日の霧は朝から小雨《こさめ》に変わっていた。鹿児島湾の上には雨雲が低く垂れ
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一六
 その日一八三七年、天保八年八月十二日、前日の霧は朝から小雨《こさめ》に変わっていた。鹿児島湾の上には雨雲が低く垂れこめ、肌寒《はだざむ》い日であった。
「いいか、みんな。今日はこのモリソン号ともお別れかも知れせんで、きちんと荷物を取りまとめてな。最後のお礼や、この部屋もほかの部屋もよう清めておくんやで」
朝食が終わるや否や岩吉が言った。庄蔵たち六人が「おう!」と弾んだ声で応じた。その六人を置いて、岩吉一人雨の甲板《かんぱん》に上がった。岩吉と庄蔵が佐多浦に上陸し、役人に事情を聴取されてから今日が三日目であった。
「遅くとも三日目には、鹿児島から役人がおはんたちを受け取りに参る」
と、二人は役人から言い渡されていた。その三日目が今日なのだ。岩吉は、昨夜のうちにも鹿児島の役人が到着してはいまいかと、眼をこらして、十二|丁程《ちようほど》向こうの児《ち》ケ水《みず》の村に目をやった。
モリソン号は、一昨日の夕刻、東岸の佐多浦沖から、西岸の児ケ水の近くに移っていた。役人の指令に従ったのである。
鹿児島から役人が到着すれば、児ケ水の村に何らかの気配《けはい》がうかがえる筈《はず》だった。が、今見る児ケ水の村は、四、五丈の切り立った崖《がけ》の上にひっそりと静まりかえっていた。小さな森や果樹の木立が村の中に散在し、その間に民家の白壁が、雨雲の下にも清らかであった。白波が切岸の裾《すそ》に絶えず沫を上げてい、カモメが低く波の上を飛んで行く。なだらかな丘が、この児ケ水ののどかな村を取り囲むようにして、その豊かな緑を見せていた。この児ケ水の風景を昨日、キングたちは龕《がん》に納まったようだと、しきりに興がっていた。
村の一劃《いつかく》に墓原が見え、その墓原のめぐりにも木々が丈高《たけたか》く繁っている。岩吉はふと、マカオで見た日本人の墓を思い浮かべた。
(どうやらこれで、わしは日本の墓におさまることができる)
五年にわたる長い年月であっただけに、感慨はひとしお深かった。しかも、浦賀で撃ち帰されただけに、岩吉の喜びは大きかった。今、岩吉はしきりに、鹿児島からの役人の到着が待たれてならなかった。
「お!? あれは?」
磯舟《いそぶね》が一|隻漕《せきこ》ぎよせて来るのが見えた。役人たちの舟かと、岩吉は胸をとどろかせて、身を乗り出すように手摺《てす》りに寄った。岸近くには監視船が三隻、昨日以来依然として近寄りもせず、遠ざかりもせず波の上に漂っている。今近づいて来るのは、その監視船とはちがっていた。
近づくにつれて、乗っているのが役人ではないことに岩吉は気づいた。蓑笠《みのかさ》をつけた漁師ふうの男たちであった。
(何や、がっかりさせるで)
岩吉は呟《つぶや》いた。磯舟は監視船からは見えぬモリソン号の右舷《うげん》に廻《まわ》った。岩吉は思い立って、右舷に駈《か》け移って手をふった。磯舟の一人が、手を上げて岩吉に応《こた》えた。折から、ウイリアムズとギュツラフが甲板《かんぱん》に出て来た。三人は並んで磯舟を見おろした。
風はさほど激しくはないが、波が荒い。その荒波の中を、磯舟はモリソン号に近づいて来た。
「おいどんたちゃ、これから釣《つ》りに行くとじゃ」
三人の中の一人が、日に焼けた顔を上げて、大声で呼びかけた。
「釣りに? この波の荒い時にかあ」
折しも七時半の時鐘《じしよう》が鳴った。今日はまだ、磯舟《いそぶね》が一|隻《せき》も姿を見せていない。
「おう、波の荒いのには馴《な》れちょるでのう——」
「ちょっと上がって、遊んで行かんか」
岩吉が誘った。佐多浦では、百人からの住民たちが、浦賀でのようにモリソン号に上がって来た。だが、ここ児ケ水では、住民は一人として訪ねて来ない。
「遊んで行きたいがのう、異国船には近づいてはならんと、お上《かみ》から禁じられとるでのう。ま、ここから見物させてもらうとじゃ」
「見物——? そうか。ではちょっと聞くがなあ。鹿児島からのお役人は、まだ児ケ水にお見えにならせんのやろか」
なぜか磯舟の三人は顔を見合わせた。が、真ん中の年嵩《としかさ》の男が、何かうなずいてから言った。
「まだじゃ。噂《うわさ》によるとのう、鹿児島からはお役人が来んちゅうこつじゃ」
「何、お役人は来んと?」
「そうじゃ、お役人は来んちゅう噂じゃ。そしてのう……」
男は言いよどんだ。
「そして何やぁ」
「言いにくいこつじゃが、この船は大砲《おおづつ》で撃たれるっちゅうこつじゃ」
「大砲!? 大砲で撃つ?」
岩吉は耳を疑った。他の男が言った。
「そうじゃあ。大砲で撃つとじゃ」
「そ、そんな馬鹿な。からかってはいかん、からかっては。冗談にも程《ほど》があるでな」
岩吉は笑って見せた。磯舟の三人は押し黙った。蓑《みの》を着ている三人の上に、小雨《こさめ》が降りそぼつ。舟が波のうねりに大きく上下する。黙りこんだ三人に、岩吉は怒鳴った。
「冗談も程々《ほどほど》にせい。わしはまじめに聞いとるだでな」
岩吉の言葉に、思い切ったように年嵩の男が顔を上げた。
「気の毒なこつじゃが、これは決して冗談ではなか! おいどんもまじめに話しとるとじゃ!」
「それでは……ここでもお上《かみ》は、わしらを撃ち帰す言うのか! 大砲で撃つと言うのか!」
「…………」
三人は只《ただ》岩吉の顔を見つめた。
「そんな……嘘《うそ》や! 嘘に決まっとる。佐多浦のお役人はな、わしらは無事に帰れると、請《う》け合《お》うてくれたんやで」
岩吉は必死だった。磯舟の一人が声を励ますように言った。
「いや! おはんらは故里《くに》に帰るこつはかなわんとじゃ。故里に帰るこつはできんとじゃ」
「故里に帰れせん!?」
岩吉には信じられなかった。
「気の毒なこつじゃけん……今の話は嘘ではなかーっ」
年嵩《としかさ》の男が声を張り上げた。岩吉の体がふるえた。
先程《さきほど》からギュツラフは、双方《そうほう》の会話に耳を傾けながら、ウイリアムズに通訳していた。岩吉は気力をふるい立たせて叫んだ。
「そんなことを……誰が言うたんや。どこの誰が言うたんや!」
「…………」
「答えて見い。どこの誰が言うたんや!」
三人は何やら小声で語り合っていたが、一人が答えて言った。
「どこの誰が言うたとでもなか。噂《うわさ》じゃ。村中のもっぱらの噂とじゃ」
「噂?」
岩吉はやや安心して、
「何や、噂か。噂なんぞはでたらめなものだでな。あのな、児ケ水の者はな、お役人も村の者も、わしらの話をまだ詳しう聞いてはおらんでな。何も知らんのや。それであらぬ噂を飛ばすのや。けどなあ、あっちの佐多浦では、お役人も村の者も、みんな涙を流して聞いてくれたんやで。そしてなあ、すぐにわしらを迎えに鹿児島のお役人が来ると、幾度も幾度も言うてくれたんやでえ」
岩吉の言葉を聞いた三人は、再び何か話し合っていたが、真ん中の男が言った。
「いやいや、おいどんものう、あらかたの話は聞いとるのじゃ。村の者もお役人も初めはどこの異国船が攻めて来たかと、大変な騒ぎじゃった。そいどん、おはんたちを送って来た船と聞いて、誰もがおはんたちに同情しとるのじゃ。しかしのう、悪いこつは申さん。とにかく大砲が火を噴く前に、船出するがよか」
「何!? 大砲が火を噴く前に? では、あのお役人たちが嘘《うそ》を言うたと言うのか」
「…………」
「武士に二言《にごん》があった言うのか」
三人はそれには答えず、魚を釣《つ》ったら届けると言って、モリソン号を離れた。男たちは舳《へさき》から釣《つ》り糸を垂れてはいたが、本気で釣るふうもなく、間もなくモリソン号の船首を廻《まわ》って、児ケ水のほうに帰って行った。
話を聞いたギュツラフとウイリアムズは、今の三人の態度には、確信が欠けていた、格別気にとめることはないと岩吉を励ました。
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