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真夜中のサーカス09

时间: 2020-03-21    进入日语论坛
核心提示:パレード二婆さんは、背が低くて、ずんぐりした躯つきをしている。それに年々背中がまるくなってくる。それで、花嫁衣裳の白無垢
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パレード

婆さんは、背が低くて、ずんぐりした躯つきをしている。それに年々背中がまるくなってくる。それで、花嫁衣裳の白無垢を、裾を引きずらないように着るためには、随分大きくお|端折《はしよ》りをしなければならない。裾の方から二つ折りにして短く着るようなものである。婆さんはますますずんぐりになり、その上に帯をすれば、白塗りの象亀が|後肢《あとあし》で立ち上ったような恰好になる。
着付けが済むと、ちいさな角隠しのついた日本髪の|鬘《かつら》をかぶる。婆さんは普段、頭を、大正時代の束髪を上から思い切り押し|潰《つぶ》したような、だからちょうど、なかを脹らませた巨大なベレー帽をかむっているようにみえる奇妙な髪型に結っているが、この髪はいかにも黒過ぎるし、時折、実際ベレー帽のように右か左かに傾いていることがあるから、大概鬘だろうと見当がつく。
鬘と鬘だから、交換は簡単である。普段の鬘を脱ぐと、下は|白髪《しらが》の坊主頭で、婆さんはこのときばかりは、あたりに他人がいるわけではないのに大急ぎで日本髪の鬘をかむってしまう。日本髪の鬘といっても、本式のではなくて村芝居の役者が用いるような安物だから、途中で風に吹き飛ばされないように肌色のゴムの顎紐がつけてある。
これで、出来上りである。顔は、チンドン屋ではないのだから、普段のままでいい。
顔といえば、八十過ぎの婆さんにしては不自然なほど皺のない、|艶《つや》やかな顔をしている。皺は、なにか物をいうとき、ちいさな口のまわりに放射状にこまかな皺が走るくらいで、それも皮膚のたるみのせいというより、むしろ張りすぎた皮膚が引き|攣《つ》れてできるもののようにみえる。眉は|剃《そ》り落として、眉墨を引いている。昔風な真黒な眉墨で、男のように濃く、ぶきっちょな眉を引いている。ただ、目と目の間の、鼻の付け根に、豆粒大の紫色の瘤があり、それが大分右の方に傾いているところが、ちょっと年寄りじみてみえるだけである。
この紫色の瘤はなんだろう。よくみると、瘤ではなくて、鼻筋の一部が崩れて横へ滑ったのだというふうにもみえる。だから、鼻筋がくの字に折れ曲ってみえるのだが、鼻筋そのものが横滑りするとはいったいどうしたことだろう。
町の物好きたちの間では、それは病気なんかではなくて、若いころに隆鼻術を受けて妙な詰めものをしたのが、何十年もするうちに妙な具合に色づいて、崩れてしまったのだという説が有力である。なるほど、いわれてみれば、そんなふうにもみえないことはない。
だから、あの見事な乳房にしても、以前、いまでいう豊胸手術のようなものを受けたからだと|睨《にら》んでいる人々もいる。そうだとすれば、隆鼻術とは大違いに、その豊胸手術とやらは婆さんにおいて世にも|稀《まれ》なる成功の一例を示しているといわなければならない。
「好子、プラカード頂戴。」
婆さんは、自分が脱いだものを片づけている娘にそういう。
「プラカードなら、さっきおじさんが新しい文句を考えるって、持ってったわ。」
「じゃ、貰ってきて。」
ぽっちりとした桜色の乳首をみてもわかるように、婆さんは子供というものを生んだことがない。好子は、戦後まもなく、婆さんが満州から命からがら引き揚げてきて、あばら家同然の巴里座に住みついたばかりのころ、木戸の軒下に捨てられていたのを育てた子である。捨子をくるんであったねんねこの|袂《たもと》に、『育てて旅の役者にでもしてください』と書いた紙片が入っていたが、親は芝居が好きだったのだろう。婆さんも、若いころから芝居には随分血道を上げてきた方だから、親代わりになって育てたのである。
巴里座は巴里館になったので、好子は旅の役者にはならずに済んだ。いまは港湾会社の事務員をしていて、晴れた日曜日には婆さんの花嫁衣裳の着付けを手伝う。
好子が持ってきたプラカードの一枚には、
『結婚は巴里館で 幸福は巴里館から』
もう一枚には、
『美と若さの泉 イチジク風呂へどうぞ』
そう書いてある。
それを紐で|繋《つな》いで、胸と背中へ振り分けにして玄関へ出ると、奥から婆さんの若い|燕《つばめ》が小走りにきて、
「えい、いってらっしゃい。車と犬に気をつけて。」
若い燕といっても、もう六十五になる。年中おなじドテラを着て、懐ろ手の袖をぶらぶらさせているが、婆さんに切り火を切る真似をするときだけ両手を出して、|拳《こぶし》を火打石に見立てて、
「かちかち、かちかち。」
と口でそういいながら、婆さんの背中へ拳を擦り合せる。
そんな手つきや身のこなしが堂に入っているのも当然で、この爺さん、元は|桑木弦之丞《くわきげんのじよう》という名の旅役者であった。だから、花婿の装いをして、婆さんと一緒にパレードをしたらよさそうなものだが、役者をよした途端に、どういうものか、人の自分をみる目が怕くなってしまった。町へ出れば、つい目を伏せて、しょんぼりと歩く。花婿が負け犬のようにしょんぼりしていたのでは、パレードにならない。
仕方なく、婆さんはひとりで出かける。
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