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真夜中のサーカス16

时间: 2020-03-21    进入日语论坛
核心提示:寸劇二今年三十の作造に、五つ年上の一枝という姉がいて、これは本線で二時間ほど北の、やはり海べりの温泉町で旅館の女中をして
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寸劇

今年三十の作造に、五つ年上の一枝という姉がいて、これは本線で二時間ほど北の、やはり海べりの温泉町で旅館の女中をしているのだが、今朝、祖母の家出の知らせを聞いて、作造のところに駈けつけてきている。
作造の病室と、夫婦の寝部屋と、居間と食堂を兼ねているこの家では最も広い六畳間。作造が万年床に寝ていて、そばの|炬燵《こたつ》では一枝が幾つ目かの|蜜柑《みかん》の皮を退屈そうに|剥《む》いている。伸子は、朝から心当りを探しに出かけていて、いない。春とはまだ名ばかりの、三月初旬の冷える日の夕刻。もうさっき日が落ちて、そろそろ浜鳴りが|厭《いや》でも耳についてくるころである。
火の用心の当番が、拍子木を|敲《たた》いて路地を通っていく。
「……厭な音。」
「拍子木がかい。」
「あの波の音がさ。ごろごろ、ごろごろ……まるで猫を枕にして寝てるみたいに……。」
「姉ちゃん、相変らず猫は嫌いなのか。」
「そうよ。ひとの好き嫌いなんて、そうちょいちょい変るもんじゃないだろう?」
「いまの旅館にゃ、猫はいねえんかね。」
「温泉には、猫がいない旅館なんか一軒もないよ。野良猫がいつのまにか住みついてしまうんだから。」
「住込みかね。」と作造は低く笑って、「温泉旅館だと食いもんにゃ事欠かねえしな。あっちこっち住込みで渡り歩いていりゃあ……。」
「おらのことをいうてるんじゃねえだろうね。」
「まさか……どうかしてるよ、姉ちゃんは。」
「どうかしねえ方がおかしいんじゃねえのさ、こんなときに。なんだか胸んなかがむしゃくしゃしてくるよ。よくこんな厭な音を毎晩平気で聞いていられるね。」
「厭だからって、こっちが海っぺりに住んでんだから、仕様がねえことさ。姉ちゃんとこの温泉だって、波の音ぐらいはきこえるだろう。」
「うちの方の浜は、ちゃんとした砂浜だからね。波がどぶーんと砕ける音だけ。」
「それでも、馴れねえうちは寝つかれなくて、随分泣かされたっていうじゃねえの。あれは、母ちゃんが死ぬ十日ぐらい前だったろうか。姉ちゃんが温泉へ女中奉公に出たばかりのころは、海が厭だちゅう手紙が何通もきたもんだって、懐かしそうに話しとった。」
「そりゃあ、なんしろまだ中学を出たばかりだったからねえ。山の部落から、いきなり町へ連れてこられたんだから。海の音だって、生まれて初めて聞くんだもんね。真夜中にひとりで目を|醒《さ》ましていると、山の部落が恋しいことったら……。」
「そうかねえ……。恋しかったんだなあ、そのころは、山の部落も。」
「そりゃあ、自分の生まれ在所だもの。それに、おらは……。」
そのとき、不意に家の外から|鉦《かね》と読経の声がきこえてきて、一枝は口を噤んでしまう。やがて、ちいさく舌打ちして、
「縁起でもない。近所でお通夜でもあるのかい?」
「薬の時間さ。」
「薬の?」
「隣の家がな、なにやら宗教に凝っててさ。」と作造は苦労して身を起こし、枕元の|薬罐《やかん》から湯呑みに水を注ぎながら、「毎晩七時きっかりに家の|者《もん》が集まって、お経をあげるんだよ。」
一枝は、彼が薬を|嚥《の》むのを眺めて、
「へえ、それが、あばら骨の薬かい。」
「いや、これは傷の方の|化膿《かのう》止め。六時間置きに嚥めってさ。」
「……なんだろうねえ、全く。西洋の|鎧《よろい》みたいなのを着てさ。」
「西洋の鎧か。ギブスってんだよ、これ。」
「ギブスだかなんだか知らないけど……山から出てきて、車にはね飛ばされてさ。」
「そんなに猿みたいにいわんでくれって。町へきてから、もう足掛け三年目だぜ。」
「三年が四年だって……山で育った人間はなあ、町の人に比べて、やっぱり根が|暢気《のんき》に育ってるんだよ。町、町っていうけど、山育ちの人間が町で暮らしていくのは、容易なこっちゃないんだけどねえ。」
「いまさら……いまさらそんなこというたって、そんじゃ、おらたちはどこへいけばいい? 山で暮らせなくなったおらたちは、いったいどこへいったら……。」
二人はしばらく黙っている。浜鳴りに、いつのまにか風の|唸《うな》りが加わっている。
「……風が出てきたようね。」
「姉ちゃん、さっき仏壇の|蝋燭《ろうそく》、消してきたんだろうな。」
「消したと思ったけど。」
「思うって、自分のしたことだろうが。いってみてきてけれ。隙間風で倒れでもしたら、|大事《おおごと》だ。」
「消したと思ったけどねえ……。」
と、一枝は隣の三畳間へ立っていく。やがてその方から、ちんちんと鉦を敲く音。作造はふっと笑って、
「また拝んでる。ひとが拝めば縁起でもねえなんていうくせに……。」
一枝が戻ってくる。
「おお寒う……。三月だっていうのに。消えてたよ。」
「また拝んだろう。苦しいときの、なんとやらか。」
「他人事みたいにいうんだね。……それにしても婆ちゃん、どこへいっちゃったんだろうなあ。」
「……大丈夫だよ。」と、作造は自分にいい聞かせるように、「婆ちゃんにはな、これまでに二度も前科があるんだから。二度とも、おらたちにはなんともいわずにいなくなったけど、二度とも無事でみつかった。なんのことはねえ、山の部落で隣組だった爺さん婆さんを訪ねて、昔話してたんだ。二度あることは三度あるっていうからな。今度だって、伸子がみつけて、一緒に帰ってくるって、きっと。」
「だけど、三度目の正直ってことも……。」
と、一枝は暗い声でいう。
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