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真夜中のサーカス18

时间: 2020-03-21    进入日语论坛
核心提示:寸劇四近くの線路をジーゼルカーが通る。一枝がぼんやり、「婆ちゃん、どうして家を出てったんだろう。作造、おまえ、どう思う?
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寸劇

近くの線路をジーゼルカーが通る。一枝がぼんやり、
「……婆ちゃん、どうして家を出てったんだろう。作造、おまえ、どう思う?」
「さあて……。」
「姉さん。」と伸子。「姉さんはどう思います?」
「おらに訊いたって、わからんわ。おらはここの家の者じゃないからねえ。一緒に暮らしてるあんたたちなら、身に|憶《おぼ》えがあるこったろうが。」
「身に憶えがあるって……。」
「姉ちゃん!」
「なにね。」
「姉ちゃん、まさかおらたちが婆ちゃんを追い出したんじゃねえかって、そんなことを……。」
「おらは、あんたらが追い出したなんて、そうはいってないよ。ただ、あんたらになんか思い当ることがあるかしらんと思って、訊いてるだけだがね。」
「そんな奥歯に物が|挟《はさ》まったみたいな……。」と伸子が厭な顔をして、「はっきりいうてください、姉さん。」
「あんたらがはっきりさせたらどうなのよ。」
「わかった。」と作造が頷いて、「姉ちゃんは、おらたちが婆ちゃんを邪魔にするから、婆ちゃん、居辛くなって出てったと、そういいたいんだろ。そうに違えねえ。道理でさっきから、やれ奥さんがどうの、やれ仏壇がどうの、三畳の隙間風がどうのって、そんなけちばっかりつけて……。」
「奥さんが、どうしたって?」
と伸子、が訊く。
「近所の人たちが、お|前《め》のことを奥さんって呼んだと。」
「……それが、どうしたって?」
「山にいればただの百姓の嫁っこでも、町へくれば奥さんだと。」
途端に、伸子は口を押えてくすっと笑って、
「気の毒に。」
「なんだって?」と一枝。
「なんでもないす。姉さんの気持、わかるわ、おらにも。おらだって|女子《おなご》だもんね。」
「ちょいと、あんた。おらが、あんたが奥さんなんて呼ばれてることを|羨《うらや》ましがっているとでも思ったら、大間違いだよ。そんなこと、誰が羨ましいなんて思うもんか。女が年頃になって、嫁にいって、なにもかも男の世話になるのは、女にとって一番簡単なことじゃないの。馬鹿にだってちょんにだって、なんの苦もなくできることじゃないのさ。」
「馬鹿だって?」
「おらにだってな、その気になればできたんだよ。ただその気になれさえしたら……。だども、おらはな、あんたみたいな仕合わせな娘じゃなかったから、十六の年から村を出てしまわなきゃならなかったんだ。おらはまるで売られるみてえに……牛や馬が売られるみてえにして町へきたんだよ、中学を出るとすぐに。それからはもう、ただ馬車馬みてえに働いて、働いた金はそっくり村の家に送ってさ、気がついてみたら、いつのまにかこんな齢になっちゃってて……おらは父ちゃんや母ちゃんのために若いさかりを棒に振っちまったようなもんさ。」
「そんじゃ、訊くけどな、姉ちゃん。」
「あんた!」
「黙ってろ。姉ちゃんはこれまでに、婆ちゃんのためになにをしてやった? 父ちゃんや母ちゃんにはいろいろしてやったかもしれねえが、婆ちゃんにはなにをしてやった? おらたちに、口先だけでも、婆ちゃんを引き取ってやるかなんて、ただの一遍でもいうたことがあるか? そういわねえまでも、せめて御苦労さんとかなんとか、言葉をかけてくれたことがあるか? まるで自分が関わり合いになりたくねえみたいに、知らん顔ばっかりしてたじゃねえか。……姉ちゃんには、年寄りと一緒に暮らして面倒みるってことが、どんなに苦労なことかわからねえんだよ。」
「わかってるよ、そんなことぐらい。わかってるから、いまの自分にゃ無理なことだと|諦《あきら》めて、余計な口出しは控えてるじゃないか。」
「そんなら、おらたちを変な目つきでみるのは、やめるこった! おらたちだって、できるだけのことは……。」
そのとき、一と筋のサイレンが街道の方に高まってくるのに気がつき、作造は口を噤む。外で男がなにやら叫ぶのがきこえる。
「パトカーか?」と作造。
「救急車じゃないのかい?」と一枝。
「火事じゃないだろうか。おら、いってみてくる。」
伸子があわただしく玄関の戸を開け放して駈け出していく。サイレンはますます近づいてきて、
「まさか婆ちゃんが……。」
と一枝も立って玄関の方へ出ていく。作造はあわてて、
「姉ちゃん、どこへいくんだよ、おらを置いて。姉ちゃんよ……。」
開け放しの玄関からは、なにやらざわめき声と浜鳴りが高い。やがて伸子が駈け戻ってきて、玄関を荒っぽく閉める。
「どうしたの?」と一枝。
「お産だと。」
「お産?」
「急に産気づいて、救急車を呼んだんだと。」
作造は大きな吐息をして、独り言のように、
「婆様がいなくなって騒ぐ家もあれば、赤ん坊が生まれて騒ぐ家もある……。」
|喉《のど》を鳴らして酒を飲む。そこへ一枝が入ってきて、
「作造。」
え、と彼は、ちいさく|噎《む》せる。
「そんなに飲んでいいのかい?」
「なあに。」
一枝はちょっと間を置いてから、
「おらはなあ、婆ちゃん、町の暮らしには向かんと思うの。それで、ときどき|堪《たま》らなくなって家を出るのと違うだろうか。行先が、いつも山の部落で一緒だった幼馴染のとこだってことは、村の暮らしが堪らなく懐かしくなるっていう証拠じゃねえのかねえ。」
「……というと。」と伸子は横目で|睨《にら》んで、「おらたちがずっとあの村にいれば、こんなことにはならなかったろうっていうのかね、姉さんは。」
「馬鹿こけ!」と作造は|呶鳴《どな》る。「おらたち、あれ以上あの村にいられたか? 姉ちゃん、おらたちがあの村で飢え死にした方がよかったっていうのか?」
一枝は片頬だけで笑って、
「すぐ大袈裟なことをいう。」
「大袈裟? 大袈裟とはなんだ!」
と作造は姉に|拳《こぶし》を振り上げるが、すぐ傷の痛みに|呻《うめ》いてしまう。
「姉さん!」と突然、伸子がいう。目が|吊《つ》り上っている。「姉さんはもう、山の人じゃねえんだ。すっかり町の人になっちまった。思い出してけれというのは、無理ですか。あの山んなかに、たった一軒きりで、どうして暮らしていけますか、姉さん。十一軒の家が、昔から肩を寄せ合っていたからこそ、これまでどうやらこうやら暮らしが立ってきたんです。それが、毎年冬には大雪だし、|麓《ふもと》まできていたバスも赤字で路線廃止になっちまうし、その上、送電線の工事の負担金が村に四十五万ものしかかってくるし……。なんやかんやと出費が|嵩《かさ》む一方で、とうとう広畑の家で町へ出るっていい出したんです。」
一枝は驚いて、
「広畑が? あの金持の?」
「そうですよ。あの村で一番の金持の広畑が、真っ先に町へ降りるっていい出した。こんなときは金のある人ほど身軽なもんで、広畑は家を畳んでさっさと山を降りていっちまった。村が|毀《こわ》れはじめたのは、それからなんだ。……みんな浮き足立っちまって、町の方が暮らし易い、暮らしが楽だというて、一軒一軒、ぽつりぽつりと山を降りてった。これまで十一軒で分担していても荷が重かった工事の負担金は、家が一軒すくなくなるたびに、その分だけ余計にのしかかってくる。だけど、おらたちは最後まで頑張ったんです。……おらたちは根っからの百姓だ。百姓のほかは、なんにもできねえ。町へ出たって、土方みたいな力仕事だけが頼りなんだ。」
不意に、伸子は白い喉が生々しくみえるほどに仰向いてけらけらと笑い、不意にまた真顔に戻って、
「正直いって、初めのうちは、一軒一軒村を出ていくたんびに、おらたちは喜んだんです。村を出ていく人たちは、要らなくなった畑をおらたちに|廉《やす》く譲ってくれましたからなあ。土は百姓の宝だ。その宝がどんどん増えていくのをみて、おらたちは最初ほんとに小踊りしたんだ。しまいには、村の畑は全部おらたちのものになって……。だけど、土地がなんぼあったって、働けるのはこの人とおらの二人きり。おらたちが精一杯働いたところで、耕せる畑の広さは知れたもんでしょうが。あとの畑は草ぼうぼうのまんま放っとくほかはねえし……。おらたちは初めて気がついたんです。人が住まなくなった山のなかの土地なんて、もう一文の価値もなくなっちまったってことに……。おらたちがなんぼ土地を持ってても、それは宝の持ち腐れだってことに。ある日、畑から帰ってみると、村はしーんと静まり返っている。人の話し声もきこえねえし、牛や山羊の鳴き声もきこえねえ。村は死んだようにひっそりしてる。……おらたちと一緒に最後まで頑張ってた家を、おらは|覗《のぞ》いてみた。土間に、脂光りした|藁草履《わらぞうり》が脱いである。|囲炉裏《いろり》ではまだ太い|薪《まき》がくすぶってる。まるで、声をかければ奥から返事がありそうな……だけど、おらは声が出なかった。声かけて返事がなかったときがおっかなくて……。おらはただ戸口に立って、わなわな|顫《ふる》えてた。村には誰もいなくなっちまった! おらたち三人のほかに、この山のなかには誰もひとがいねえんだ! ……畑から帰ってくれば、婆ちゃんが庭の日なたに|筵《むしろ》を出して、その上に背中をまるめてぼろを繕いながら鳥追いの唄を歌っている。……あれは、おらではねえか? 婆ちゃんじゃなくて、誰にも知られねえでいつのまにか齢とって、婆様になっちまったおらではねえか? ……おっかねえ。自分をみてくれる人が誰もいねえってことは、おっかねえ。おらは、それまで用もなかった鏡が離せなくなっちまった。あるとき、おらは自分が鏡と話をしていることに気がついて、ぞっとした。おらは気違いになる! ……この人は、おらを抱いてくれなくなった。中気病みみたいに|鼾《いびき》をかいてるこの人の躯にしがみついてると、|夜鷹《よたか》が馬鹿みたいに鳴くんですよ、まるでおらたちの骨をこつこつ突っついてるみたいな声で。夜鷹が何百羽、何千羽と集まって、おらたちの肉をむしり、骨を突っつきにくる! 畜生! 夜鷹なんて子守歌みたいなもんだったのに。しっ! あっちへいけ! もう、やめてけれ!」
伸子は両手で耳を覆い、|身悶《みもだ》えしながら泣きはじめ、
「最初に町へ降りようっていい出したのは、おらだよ。おらで悪かったろうかよう……。」
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