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真夜中のサーカス37

时间: 2020-03-21    进入日语论坛
核心提示:ジンタの嘆き三六蔵は、中学のころから柔道部に入っていた。そのころはまだどもりが直っていなかったので、柔道ならべつに人と言
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ジンタの嘆き

六蔵は、中学のころから柔道部に入っていた。そのころはまだどもりが直っていなかったので、柔道ならべつに人と言葉を交わす必要もなく、ひとりで黙々と稽古ができると思ったからだが、卒業するころはかなり強くなっていて、高校へ進学すると、早速勧誘されて柔道部員になった。
ところが、この柔道部の上級生で、新入生指導係の高森というのが、春木に輪をかけたようなどもりであった。毎日、稽古が済むと、高森は新入部員を道場の隅に集めて、その日の稽古の講評をする。ついでに精神訓話のようなものを話すこともある。それがすべて吃りながらだから、新入部員のなかには|堪《たま》らずに噴き出してしまう者もいる。
すると、高森はそいつをみんなの前に引きずり出し、「し、し、し、舌を噛むな。」といって投げ飛ばしたが、投げ飛ばされてもまだ笑いが止まらない者もいた。
根は悪くない男で、下級生には人気があり、六蔵も決して彼が嫌いではなかったのだが、ただ、彼の話を聞いているうちに、直ったはずのどもりがだんだんぶり返してくるのには、弱ってしまった。
それでも、意識して警戒しているうちはまだよかったが、ある日、高森に用ができて廊下をゆく彼をうしろから呼び止めるとき、六蔵はつい、
「た、た、た、高森さん。」
といってしまった。
高森は振り向いて、|凄《すご》い目つきで六蔵を|睨《にら》んだ。
「き、き、き、きさま、か、か、からかうのか。」
彼は、顔を真赤にしてそう|呶鳴《どな》ったが、からかわれたと思ったのは無理もないことで、六蔵はすっかりあわてて、
「ち、ち、ち、違います。じ、じ、実は俺も、ど、ど、どもりで……。」
といった。高森は、ちょっと信じられないという顔で、
「ほ、ほ、本当か。」
というので、
「ほ、ほ、本当です。お、俺、う、うそなんか……。」
というと、高森はやっと納得してくれた。
それ以来、高森は六蔵を同志と思い込んだらしく、遠慮なくどもりで話しかけてくるようになり、六蔵の方もせいぜいどもりで|相槌《あいづち》を打っているうちに、またすっかりどもりがぶり返してしまった。
六蔵は困惑した。今度は就職を控えているので、前のように|暢気《のんき》に構えているわけにはいかないのだ。なんとかして入社試験の前に直して置かなければならない。
一年経って、高森が卒業してから、六蔵のどもりとの戦いがはじまった。
ところが、気ばかり焦るせいか、直り方がどうも前ほどはかばかしくない。思い余って、二年目の正月休みに、東京から帰省してきた先輩の大学生に悩みを打ち明けてみると、その先輩は、おまえのどもりは自意識過剰が原因だと診断した。
「また、吃るな、きっと吃るな、そう思うから余計吃っちゃうんだよ。どだい、自分がどもりだと頭から決め込んでいるのがいけない。」
先輩はそういって、そんなどもりなら訓練次第できっと直るといった。どんな訓練をするのかというと、見知らぬ人にいきなり用もないことを話しかけるのを繰り返すのだという。
「前から、あの人にあのことを話さなければと思っているから、吃っちゃうんだ。知らない人にでも、誰にでも、気軽にどんどん話しかけてみろ、きっと吃りゃしないから。まず、俺はどもりなんかじゃないぞという自信を持つことが肝腎だな。ところで、おまえ、こっそり好きだと思っている女の子はいないのか。」
六蔵は黙って頬を赤らめていた。
「いるなら、そいつがいい練習台になるぜ。そいつに、いきなりすらすら|喋《しやべ》れるようになったら、おまえはもう、どもりは卒業だ。」
先輩はそういった。
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