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真夜中のサーカス44

时间: 2020-03-21    进入日语论坛
核心提示:赤い|衣裳《いしよう》一良作は、まさか妹のヒデが自分の手紙の言葉を真に受けて、こんなに早く菜穂里へやってくるとは思わなか
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赤い|衣裳《いしよう》

良作は、まさか妹のヒデが自分の手紙の言葉を真に受けて、こんなに早く菜穂里へやってくるとは思わなかった。彼はただ、年頃なのに山深い村にひとり居残って病弱なおふくろの手助けをしている妹の前途に、遠いともし火を一つ与えてやるつもりで、そのうち暇ができたら泊りがけで町へ骨休めをしにこないかと、手紙に書いてやったのである。そういってやるだけでも、なんの楽しみもない妹には励みになるはずだと思っていたのだ。
ところが、ヒデから折り返し葉書がきて、それには、おふくろから一と晩だけ暇を貰った、今度の土曜日の朝の汽車に乗るからよろしくと書いてあった。思いがけないことであった。自分で誘って置きながら、彼はちょっとうろたえた。
うろたえたといっても、それは妹に出てこられるとなにか不都合なことがあるからではなかった。妹が出てくることは、ちっとも構わない。ただ、|足枷《あしかせ》を|嵌《は》められているような妹がいきなり出てくるというから、びっくりしたのだ。まさか、こっそり逃げてくるのではあるまいな、そう思い、自分が妹に対してうっかり眠っている子をゆさぶるようなことをしたのではないかと思って、ちょっとうろたえたのである。
けれども、ヒデがそんなことをするはずがない。ヒデはおふくろの目を盗んで勝手なことをするような妹ではない。
葉書は鉛筆書きだが、文字が|躍《おど》っていた。墨のように濃いところが随分目立つのは、しょっちゅう|芯《しん》を舐め舐め書いたからだろう。十八の妹の胸の鼓動が耳にきこえてくるような葉書である。繰り返し読んでいると、彼の胸も鳴ってきた。
彼は、そわそわと部屋を片付けにかかった。土曜日までにはまだ四日も間があるのだから、いまから片付けても仕方がないのだが、そうは思っても彼はじっとしてはいられなかった。部屋といっても、器材置場に使われている小屋の中二階に、畳が三枚敷いてあるだけのお粗末な部屋だが、それだからこそ、なおさら小ざっぱりと片付けて置く必要がある。彼は港のはずれにあるちいさな造船所に住込みで働いている船大工だ。
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