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真夜中のサーカス48

时间: 2020-03-21    进入日语论坛
核心提示:赤い|衣裳《いしよう》五親方のところへ挨拶にいったとき、ヒデがどこで|憶《おぼ》えたのか、「初めまして。」などと、よそゆ
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赤い|衣裳《いしよう》

親方のところへ挨拶にいったとき、ヒデがどこで|憶《おぼ》えたのか、「初めまして。」などと、よそゆきの言葉を使うので、彼はちょっと驚いた。挨拶も碌にできなくて、なにやら自分でもわけのわからぬことをぶつぶつ口のなかで呟きながら、ただ頭をさげただけだった何年か前の自分のことを思い出して、俺よりよっぽどしっかりしていると彼は思った。
小屋の中二階の部屋で、|茹《ゆ》でて貰った栗を食べているとき、ヒデが不意に、くすっと笑った。なにがおかしいのかと訊くと、さっきの彼の真似をして、なんでもないとヒデはいった。人と物を食っていて、なんでもなくて笑うものかと問い詰めると、ヒデは窓からぺっと虫食いを吐き出して、そのまま彼の顔をみずに、
「|兄《あん》ちゃんが、がいにいい男になったから。」
といった。
「馬鹿くさ。」
彼は、忽ち頬が熱っぽくなるのを憶えたが、おかしなことに、そういったヒデの方もみるみる顔を赤らめた。彼は、なんとなくどぎまぎしたが、正直いって、そう悪い気はしなかった。
「なあに、お|前《め》だって。」と彼はいった。「町で二、三年も暮らせば、いい女になるよ。」
栗をつづけさまに三つ四つ食って、ふとみると、ヒデは窓に|靠《もた》れるようにして海の方を眺めている。ヒデは、もう笑ってはいなかった。頬の赤みもいつのまにか消えていて、代りに、これまでみたことのない陰鬱な|翳《かげ》りがその横顔を浸していた。彼は、なにかしら胸がどきりとした。
「……どうしたんだ。栗はもう食わんのか?」
「栗は、もうええ。」
ヒデは海に目を細めたままそういって、それから、「町か……。」と呟いた。
彼は、俺はいけないことをいったと気がついた。村の家で、足枷を嵌められたようにして暮らしている年頃の娘に、『町で二、三年も暮らせば……』とは、酷なことをいったものだ。けれども、それかといって、おまえはおふくろの看病をしながら村に埋もれてしまう女なのだと決め込むようなことは、とてもいえない。
「なあに、そのうち町へ出てこられるさ。|諦《あきら》めちゃいけねえな。じっと辛抱するこった。」
彼は、そういいながら、そんなことは気休めだといってヒデが怒るかもしれないと思っていた。ところが、ヒデは全く別なことをいった。
「|母《かつ》ちゃが死ぬのを、待てというの?」
彼は、ちいさく息を呑んだが、それきり口を|噤《つぐ》んでしまった。それから二人は随分長いこと黙っていた。
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