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真夜中のサーカス55

时间: 2020-03-21    进入日语论坛
核心提示:小人の曲芸五沈船防波堤に着くまで、四人は黙りこくっていた。|尤《もつと》も、いちどチサが連れの二人へ、「おらは、沈船防波
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小人の曲芸

沈船防波堤に着くまで、四人は黙りこくっていた。|尤《もつと》も、いちどチサが連れの二人へ、
「おらは、沈船防波堤、初めて。」
と話しかけてみたが、二人とも、そっぽを向いたまま相手になってくれないので、口を|噤《つぐ》んでしまうほかはなかった。
変につんつんしてる、とチサは二人のことをそう思っていた。二人とも親しい遊び仲間ではなかったが、それにしても普段はこんなにつんつんする相手ではないのだ。しかも、二人はチサに対してだけではなく、自分たちも互いに相手に対してつんつんし合っているようだった。克江も無言で艪を操っている。
三人が、いや、克江も入れて四人がばらばらになって、互いにつんつんし合っている。おかしな|雰囲気《ふんいき》だ、とチサは思い、これはどんなことになるのかと、ますます不安な気持になってきた。
沈船防波堤に着いたときは、もう海面には夕闇が|澱《よど》みはじめていた。沈船のふなべりは思いのほか高かったが、まわりをテトラポッドで固めてあるので、それがちょうどいい階段になっていた。四人は、舟をテトラポッドの脚に舫って、ふなべりを越えた。
「甲板は穴だらけだから、気をつけな。」
と克江がチサに注意した。
他の二人は馴れているらしく、身軽に甲板に降り立った。
陸からみると、沈船防波堤は水平線とおなじくらいに平坦にみえるが、それはふなべりのせいで、甲板に降りてみると、かつて現役の船だったころの遺物がさまざまな凹凸をなしているのであった。
克江は、どこからか万年筆のような懐中電燈を取り出して、足許を照らした。その明りをたよりに、ふなべりに沿ってすこし移動すると、ドラム|罐《かん》が数本並んでいる|塀《へい》に突き当った。美和と小夜子が、そばの物蔭からゴザを運んできて、それをドラム罐の塀の下に敷いた。克江は、どこからか|蛸壺《たこつぼ》を一つ運んできた。四人は、ゴザの上に車座になった。
「チサがな、きょうから新入りだよ。」
と克江は他の二人にそういった。それから、くすっと笑って、
「チサはな、消しゴム専門だって。でも、人は好き好きだから、仕様がねべさ。大人にだって、|女子《おなご》の下着専門ってのがいるもの。」
といった。
チサは、顔を隠してくれる夕闇が有難かった。その夕闇のなかに、歯だけがほんのり白くみえていて、それで美和も小夜子も声を出さずに笑っていることがわかった。
「それじゃ、チサよ、お|前《め》から出せや。」
と克江はいった。
チサは、二つのポケットからビニール袋を出して、克江の手のひらに置いた。どうやら美和も小夜子もおなじ仲間らしいことが、チサの気持を励ましていた。
克江は、二つの袋の口を開けると、|躊躇《ちゆうちよ》なく、なかの消しゴムを残らず蛸壺のなかに落としてしまった。チサはぼんやりそれをみていた。
「この壺はな。」
と、克江は空のビニール袋をまるめて、ふなべり越しに海へ捨ててからいった。
「この壺は、おらたちの金庫なのせ。おらたちは、土曜日にはいつもここへきて、この一週間に自分が盗ったものをみんなにみせてから、このなかに仕舞うのせ。いいな?」
有無をいわせないいい方で、チサは頷くほかはなかったが、頷いただけではわからぬと気がついて、
「あい、わかったえ。」
といった。すると、克江は、
「つぎは、美和ちゃん、出せや。」
冗談だと思ったが、美和は、空色のガラス玉を|繋《つな》いだネックレスと、豆手帳を三冊と、大人のパンティストッキングと、仁丹を一と袋出した。
チサは、呆然とした。美和は先生の子供なのだ。
克江は、美和の盗品を一つ一つ懐中電燈で鑑賞してから、蛸壺に納めた。
「つぎは、小夜ちゃん。」
小夜子は、町でも指折りの商店の子なのに、万年筆と、カラーフィルムと、味の|素《もと》の|小瓶《こびん》と、ナメコの罐詰を出した。チサは、悪い夢をみているのではないかと思った。
「また、罐詰だ。」
克江は笑い出した。
「小夜ちゃんは凝るとこがあってな、いま罐詰に凝ってんの。前は飲みものに凝ってて、ブドー酒を|盗《と》ってきたときはびっくりしたな。みんなでラッパ飲みをしたら、酔っ払って、盆踊り踊った。」
今度は、克江自身が出す番だった。
腕時計を出した。チサは|魂消《たまげ》た。
「おらたちのことは、誰にもいっちゃなんねよ。口が裂けても。」
克江は最後に、チサに向ってそういった。
「万一、自分が捕まっても、仲間のことを話しちゃなんね。それが、おらたち仲間の|掟《おきて》なのせ。掟を破った奴は、殺す。」
チサは、背中がぞくりとして、身震いをした。殺すという言葉が、こんなに|怕《こわ》い言葉だとは知らなかった。
「それに、|陸《おか》へ戻ったら、仲間同士で口を利き合ったら、なんね。知らんふりで通すこった。そうしていれば、誰かがしくじっても、ほかの仲間には迷惑がかからんべさ。それから、毎週土曜日の六時までには、どんな小物でもかならず自分の土産を作って置くこと。いいな?」
「……あい。」
と答えて、チサは自分で自分のなりゆきに呆れていた。どうしてこんなことになったのだろう。
「ナメコや味の素じゃ、給食にもならねべさ。仁丹でも|舐《な》めて、帰ろか。」
それで会はおひらきになった。
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