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真夜中のサーカス59

时间: 2020-03-21    进入日语论坛
核心提示:火の輪くぐり三せまい山道を辿って鳥野の青果市場に着いたときは、もうすっかり夜が明けていた。一服する暇もなく積荷をおろして
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火の輪くぐり

せまい山道を辿って鳥野の青果市場に着いたときは、もうすっかり夜が明けていた。一服する暇もなく積荷をおろしていると、そばを、
「御苦労さま。」
と声をかけて通る若い女がいた。
みると、八百屋の旦那衆がおしちと呼んでいる市場の若い女事務員で、そのおしちのぷりぷりしたジーパンの尻を見送っているうちに、漁師の若者は急に|喉《のど》から手が出そうな気持になって、つい、
「ちょっと……なあ、おしちさんよ。」
と呼び止めてしまった。それからすぐ、あ、いけねえ、と思った。
呼び止めてはみたものの、べつに用事があるわけではなかった。なにかいいたいことがあるわけでもなかった。彼はただ、女の子をちょっと呼び止めてみたかっただけであった。こんな機会は、彼のような男にはそうざらには巡ってこないのだ。
けれども、相手の方は、呼び止められれば当然なんの用かと思うだろう。それで、あ、いけねえ、と思ったのだが、呼び止めて置いてからでは、もう遅かった。
「なに?……なにか用?」
案の定、おしちは振り向くとそういった。
「い、いや……なんでもねえす。ただ、なんとなく……。」
彼がへどもどしながらそういうと、
「ただ、なんとなく、おしちって呼んでみたかったのね?」
そういうおしちの語気は、思いがけなく鋭かった。彼は気押されて、黙っていた。すると、おしちの目尻が|吊《つ》り上った。
「冗談じゃないわよ。なにさ、馴れ馴れしくおしちだなんて。どうしてあたしが、あんたなんかにまでおしちって呼ばれなきゃならないのよ。ふざけるんじゃないよ、運ちゃん。」
おしちは、それだけ一気にまくし立てると、くるりとむこうを向き直って、あとは何事もなかったようにジーパンの尻をぷりぷりさせながらいってしまった。
彼は、きょとんとして、しばらくそこに立っていた。彼には、なぜおしちが急に怒り出したのか、わけがわからなかった。おしちをおしちと呼んで、なぜいけないのか。八百屋の旦那衆ならおしちと呼んでも構わなくて、運転手の自分がおしちと呼んではなぜいけないのか。
やがて、彼は高く舌うちして、頭をくらくらさせながら、
「女って奴は、どいつもこいつも……。」
と独り言をいった。それから、横ざまに|痰《たん》を一つ吐き飛ばすと、また仕事に取り掛かった。
帰りに、事務所へ顔を出したとき、おしちは机に向って帳簿になにか書き込んでいたが、彼がいくら大声を出しても、完全に無視して目もくれなかった。
彼は、そんなおしちの横顔を盗みみて、浜の銀子にどこか似ていると思った。銀子というのは、彼にとっては中学時代から最も慕わしい女であると同時に、彼に対してはこの世で最も冷淡な女である。
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