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シャドウテイカー 黒の彼方01

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:プロローグ わたしたちが茶道《さどう》部の部室を出た時は、夕方の四時を回っていたと思います。一学期の中間テストが近づいて
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プロローグ

 わたしたちが茶道《さどう》部の部室を出た時は、夕方の四時を回っていたと思います。
一学期の中間テストが近づいていて、旧校舎にほとんど人は残っていませんでした。
私は三年生で、茶道部の部長をしていて、何日か前に役員の引き継《つ》ぎをしたばかりでした。後輩《こうはい》の女の子と部室で話していたら、気がつくと遅い時間になっていました。わたしたちは仲が良かったと思います。彼女はわたしを慕《した》ってくれていたし、わたしもそれが嬉《うれ》しいと思っていました——あの日はまだ。
廊下《ろうか》へ出て階段に向かって歩き出したとたん、わたしはぐにゃっとした布のようなものを踏《ふ》みました。驚《おどろ》いておそるおそる床を見ると、グレーの手袋が落ちています。最初はこんなところにどうして手袋が片方だけ落ちているんだろうと思って、それを拾いました。
「……なんですか、それ」
と、わたしの後輩が言いました。よく見ると、手袋の指先のあたりがチョークの粉で汚れていました。それで、私には手袋の持ち主が分かりました。
「これ、英語の柿崎《かきざき》先生の手袋じゃないかな。チョークを使ってると手が荒れるから、いつもこれとそっくりなのつけてるから」
どうしてそれがわたしたちの部室の前に落ちていたのかは、あなたにもお分かりかと思います。同じ階の一番端《はし》に、「英語科準備室」という部屋がありますよね。若い英語の先生は職員《しょくいん》室よりもこの準備室にいることが多いみたいでした。多分《たぶん》、そこに行く途中で柿崎先生はこれを落としたのでしょう。
届けた方がいいよね、ということになって、わたしたちは準備室へ向かいました。旧校舎は本当に静かでした。どこかから入りこんだ白い蝶《ちょう》がふわふわと飛んでいて、わたしたちはなんとなくそれを追いかけるみたいに、廊下を歩いていきました。
もう先生は帰った後で、準備室には誰《だれ》もいませんでした。せめて手袋だけでも置いて帰ろうと思って、わたしたちはドアを開けようとしたのですが、鍵《かぎ》が閉まっていました。
その時もおかしいなと思ったんです。普段《ふだん》は鍵がかかっていることはほとんどありませんでしたし。
そこから先のことは、あまり思い出したくありません。
「先輩、あそこ」
突然、わたしの後輩が床の方を指差しました。空気を入れかえるためだと思うんですけど、どこの旧校舎の教室も、廊下側の壁《かべ》の下のほうが引き戸になっていますよね。準備室もそうなっていたんですけど、その戸にさっき見た蝶がとまっていました。あの虫がどうかしたのかな、と思ったとたん、ほんの少し開いた隙間《すきま》から部屋の中へ入っていきました。
「あの下の戸、開くんじゃないですか」
彼女の言う通り、古い建物だから、下の戸の鍵が壊《こわ》れていることが多いんです。ためしに戸を動かしてみたら、簡単《かんたん》に開きました。
「ここから中に入っちゃおうか」
と、わたしが言うと、彼女も頷《うなず》きました。部屋の中へ入った時は、自分たちがしていることをあまり深く考えていませんでした。鍵《かぎ》が閉まってるのが何かの間違いなんだし、もし誰《だれ》かに見られても謝《あやま》ればいいって思っていたんです。
準備室にはいくつか机が並んでいて、あとは授業の教材の入った大きな棚とか、先生たちの私物がたくさん置いてありました。
この部屋にはしょっちゅう来てましたから、柿崎《かきざき》先生の机がどこなのかは知っていました。先生はデスクトップのパソコンをそこに持ちこんで、色々仕事をしていたみたいでしたから。わたしたちはキーボードの上に手袋を置いて、そのままそこを出ようとしました。
その時、プリンタのトレイから、一枚紙が落ちそうになっていることに気がつきました。多分《たぶん》、プリントアウトしてそのまま忘れて帰ってしまったんだと思います。わたしは何となくその紙を手に取りました。後輩《こうはい》もそれを覗《のぞ》きこみます。
「加賀見《かがみ》高等学校三年生英語中間テスト」
 わたしたちはやっと気がつきました。きちんと戸締《とじま》りされていたのは、中間テストの準備期間中だったからでした。テスト期間中は職員《しょくいん》室や、それぞれの教科準備室に生徒は入れません。そのことをわたしもよく知っているはずだったのに、あの部屋でテストの問題を見るまで、全然思いつきもしなかったのです。
わたしたちは急いでそこから出ようとしました。もし誰かに見られたら大変なことになると思ったからです。でも、もう手遅れでした。
「何やってんの」
急に声をかけられて、わたしは飛び上がりました。さっき入ってきた下の戸から、同じクラスの樋口《ひぐち》さんが覗いていました。わたしは少しほっとしました。彼女とはほとんど話したことはなかったけれど、この場に先生が現れるよりはずっといいと思ったのです。
樋口さんは準備室の中に入ってきました。
「なに、誰かいるの樋口」
その後ろから、彼女と仲のいい田島《たじま》さんと川相《かわい》さんもついてきました。どうして彼女たちが準備室へ入ってきたのか、この時はまだ分かっていませんでした。
「落とし物があったから、届けに来たの」
立ちふさがるように立っている三人に、わたしたちはそう言いました。樋口さんは黙《だま》ってわたしを見下ろしていましたが、突然わたしが持っていた紙をひったくりました。
「あっ」
最初から樋口さんは、それが何かを確かめるつもりだったんだと思います。樋口さんの肩越しに、田島《たじま》さんたちもその紙を覗《のぞ》きこみました。
「……中間の問題じゃん」
田島さんが言いました。彼女たちはそれを見ても驚《おどろ》いていませんでした。だいたい予想がついていたのでしょう。
「ふうん」
樋口《ひぐち》さんはじっとわたしたち二人の顔を見比べていました。わたしは怖《こわ》くて震《ふる》えが止まりませんでした。
「あんたたち、問題盗みにここに来たんだね」
わたしの頭の中が真っ白になって、言葉が出ませんでした。
「違います」
と、わたしをかばうように後輩《こうはい》が言いました。
「わたしたちは……」
樋口さんは彼女の言葉を遮《さえぎ》るように笑い出しました。
「まあ、気持ちは分かるよ。誰《だれ》でもいい点取りたいしさ。ねえ?」
樋口さんは後ろの二人に言いました。それからしばらくの間、彼女たちはなにか小声で話し合っていました。わたしはそこでぼんやりと立ったまま、キーボードの上に置いた手袋を見ていました。何を言ってもウソだと言われる気がしましたけど、それでもこのまま黙《だま》ってちゃいけないと思って、顔を上げました。
樋口さんたちはカメラつきの携帯《けいたい》を出して、問題用紙に向けていました。
「何やってるの?」
と、わたしが言うと、川相《かわい》さんがわたしの方を見ずに答えました。
「いや、ほら、あたしらも見せてもらおうと思って」
わたしの目の前が真っ暗になりました。そんなことをしたら、本当に問題を盗むことになってしまいます。
「もともとちゃんと鍵《かぎ》のかかんない部屋にテストの問題置いておく方が悪いんだよ」
樋口さんはそう言いながらボタンを押しています。用紙が大きかったので、何回かに分けて撮影《さつえい》していました。
「そんなのダメよ」
わたしは言いました。樋口さんが怖い目でわたしをにらみます。
「もともとあんたたちがやろうとしてたことじゃん」
その時、わたしの後輩がゆっくりと出口の方へ動いているのが見えました。わたしは彼女の考えていることが分かりました——多分《たぶん》、職員《しょくいん》室へ助けを呼びに行こうとしていたんだと思います。職員室には残っている先生もいるはずだからです。
「やめた方がいいんじゃない」
突然、樋口《ひぐち》さんが彼女に向かって言いました。
「あんたの先輩《せんぱい》、推薦《すいせん》狙《ねら》ってるんじゃなかったっけ。わざわざ鍵《かぎ》かかってる資料室に入ってさあ、テストの問題盗んだのバレたら先輩が困るんじゃないの」
後輩が凍《こお》りついたように立ち止まりました。樋口さんの言う通りでした——もし、事情を話しても信じてもらえなかったら、わたしは処分を受けて、推薦の資格を失うことになります。
「平気だって。あたしら誰《だれ》にも言わないからさ」
樋口さんはわたしの耳元にささやきました。それから、わたしの後輩に向かって言いました。
「あんたたちも誰にも言わなければいいんだよ」
彼女たちは答案を隅《すみ》まで撮影《さつえい》して、お礼を言いながら出て行きました。準備室の中に残ったのは、青い顔をしたわたしたちだけでした。頭が混乱していたけれど、分かっていたことがありました。
わたしたちも含めて、この部屋に入った五人全員が黙《だま》っていれば、このままずっと普段《ふだん》と同じ生活が続いていく、ということです。ほかにもっといい方法はあったのでしょう。でも、あの時はそれが一番いいと思えたのです。
とにかく、この部屋を出なければ、と思った時、
「虫がいなければよかったのに」
突然、後輩が低い声で言いました——わたしはなんとなくぞっとしました。彼女は例の戸をにらみつけています。さっき戸のところで見た、蝶《ちょう》のことを言っていると気がつくまで、少し時間がかかりました。
「あのね……」
わたしは謝《あやま》るつもりでした。手袋を拾ったのも、彼女を連れて来たのも、この部屋に入ろうと言ったのもわたしです。でも、口を開きかけた時、彼女はふと、わたしの顔を見上げました。
「大丈夫です。わたしが先輩を守りますから」
きっぱりと彼女は言いました。
「このことは絶対秘密にしますから」
言いわけをするつもりはないけれど、なにかへんだなとその時も思いました。でも、あの時はそう言ってくれるのがすごく嬉《うれ》しかったのです。わたしはがたがた震《ふる》えながら泣いていました。その時は彼女に感謝《かんしゃ》していたのです。わたしのためにこんなことを言ってくれる、なんて優《やさ》しいんだろうって思っていました。
ただ、彼女のあの言葉——。
(虫がいなければよかったのに)
それが、耳の奥にこびりついていました。
うまく説明できませんけれど、なんだかいやな言葉のような、そんな気がしたのです……
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