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シャドウテイカー 黒の彼方04

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:3 裕生は畳の上で足を投げ出したまま、両足のつま先をぼんやり見ていた。頭の中ではたった今出て行った葉との会話を反芻《はん
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 裕生は畳の上で足を投げ出したまま、両足のつま先をぼんやり見ていた。頭の中ではたった今出て行った葉との会話を反芻《はんすう》している。異様に弾《はず》まない会話だったが、それは子供の頃からの習慣《しゅうかん》のようなもので、特に普段と違うわけではない。彼女が自分から話しかけてきたことはほとんどない気がする。
「おい!」
頭の上から男の声が降ってきて、裕生《ひろお》ははっと我に返った。同じクラスの佐貫《さぬき》だった。手には校門前のパン屋・法泉堂《ほうせんどう》の袋をぶら下げている。
「いつのまに」
「何ボーっとしてんだ。幽体離脱《ゆうたいりだつ》か?」
「ちょっと考えごと」
「ここでメシ食っていいか?」
「どうぞ」
佐貫は上履《うわば》きを脱ぎ捨ててどっかりと畳の上にあぐらをかいた。部員を除けば、いや下手《へた》をすれば部員よりも彼はこの部室を利用している。裕生と身長は同じぐらいで、いささか横幅の発育がよすぎたが、運動神経は人並以上で頭の回転も速い。肉体的な安定感もプラスに作用するのか、おおむねクラスでは「頼《たよ》りになる」という評価を得ていた。
「今日は何やるの?」
と、裕生が言うと、佐貫は生徒手帳を出した。
「今日は無線部とアマレス研究会。と、カーリング同好会」
「カーリング?」
そんな同好会あったっけ、と裕生は思った。そもそもカーリングってなんだろう。佐貫は不審《ふしん》げな裕生の顔を見て、ちっと舌を鳴らした。
「お前、カーリングも知らないのか。氷上のチェスだぞ。冬季オリンピックの正式種目になってるだろ」
「……」
よく言えばのんびりしている、悪く言えばぼんやりしている裕生と違って、佐貫は妙なバイタリティの持ち主だった。校内ではマイナーな部や同好会ばかり十以上も掛け持ちしている。本人としてはウケを狙《ねら》っているわけではなく、単に他人と著《いちじる》しく興味《きょうみ》の範囲《はんい》がズレているだけらしい。裕生と話すようになったのも、佐貫が茶道《さどう》部に見学に来たのがきっかけだった。
「あともう一つぐらいどこか部に入ろうと思ってるんだけどな」
「今からでも茶道部入ればいいのに」
佐貫は悲しげに首を振った。
「興味はあるんだけど、正座がダメなんだよ、どうしても」
法泉堂の袋をひっくり返すと、食品用ラップに包まれた「法泉バーガー」が十個近くもごろごろと落ちてきた。味は保証の限りではないが、五十円という値段の安さのせいかエンゲル係数の高い加賀高生《かがこうせい》たちの貴重なタンパク源になっている。全部食べるつもりだろうか、という裕生の心配をよそに、佐貫は一個目のラップを破いた。
そういえば、昼食を食べていないことを彼は思い出した。
「さっき、お前の幼馴染《おさななじみ》に会ったぞ」
と、佐貫《さぬき》が言った。
「ああ、雛咲《ひなさき》?」
「あの子、今日テスト受けてないみたいだな。テスト終わってから学校来たから」
「え?」
「俺《おれ》、法泉堂《ほうせんどう》でパン買ってたら、あの子が学校に向かって走ってきてさ。あの子、よく見ると結構|可愛《かわい》いよな。付き合ってるヤツとかいないのか」
裕生《ひろお》は佐貫の質問を無視して首をかしげた。葉《よう》はテストも受けずに、何をしにわざわざ学校へ来たのだろう。
「それ、いつ頃《ごろ》?」
「さっきだよ。十五分ぐらい前」
裕生はちらりと時計を見上げる。葉が部室に現れた時間とほとんど変わらない。ということは、彼女はどこにも寄らずに直接この部室に来たことになる。
「そういえば西尾《にしお》って来たか?」
佐貫が急に話題を変えた。
「来てないけど」
「おかしいな。確か……」
その時、ドアががらりと開いた。
「ごめん。遅れた」
よく通る低い声とともに、すらりと背の高い女子生徒が部室に入ってきた。ストレートの長い髪が揺れる。裕生たちと同じクラスの西尾みちるだった。
「知らない一年の女の子に話しかけられて、ちょっと話してた」
「またかよ」
と、佐貫が言った。
「うちの学年でお前が一番女にモテるんじゃねえか」
「……そんなこと言われても困るんだけど」
と、言いながらみちるは畳の上に腰を下ろした。みちるは演劇《えんげき》部の部長をしている。本人も気にしているようだが、十六歳に見られたことがない。年齢《ねんれい》以上の落ち着きがあり、いつも凛々《りり》しげなオーラを漂《ただよ》わせている——らしい。男子よりも女子、特に下級生に人気が高い。
らしい、というのは裕生たちがオーラの圏外《けんがい》にいるようで、あまり実感がないからだ。あくまで彼女は仲のいい友達だった。佐貫は自分の目の前に積んである法泉バーガーの山から、半分をみちるの方に押しやった。
「買っといたぞ」
「あ、ありがとう」
みちるはにっこり笑った。話してみるとさっぱりした性格で、そしてよく食べる。中学の頃はずっと剣道をしていて、その頃《ころ》の習慣《しゅうかん》だと本人は言っている。
「相変わらず静かでいいね、ここ」
彼女は肩にかけていたバッグから、ウーロン茶のペットボトルを二本出して、一本を佐貫《さぬき》に渡した。
「そうだろ。いいよな」
どうやら二人は最初からここで昼食を食べるために待ち合わせていたらしい。ここは休憩所《きゅうけいじよ》じゃないんだよ、とは、さっきまで寝ていた裕生《ひろお》に言えたことではなかった。
「なんで同じパンばっかり」
と、裕生が言いかけると、
「貧乏《びんぼう》だから」
二人同時に返事がかえってきた。
不意に裕生の腹がぐう、と情けない音を立てる。
「なんだ、バラ減ってんのか。お前も一個食えよ。俺《おれ》のおごりだ」
佐貫の差し出したパンを裕生は受け取った。畳の上で向かい合った三人は昼食を取り始める。一口食べた裕生は顔をしかめた。焼いてから数日は経過している感じのぱさぱさしたバンズの中に、異様な弾力性に富んだ肉が挟まっている。
「相変わらず、まずいね」
裕生が言うと、佐貫はパンを見下ろしながら頷《うなず》いた。
「うん。人間の食うモンじゃねえな」
「野良猫《のらねこ》の肉使ってるって噂《うわさ》、ほんとかな」
みちるの口にした噂は裕生にも聞き覚えがある。他《ほか》にも犬《いぬ》、ネズミ、ミミズ……などの説があった。
「ウソだろ。まあ、何の肉なのか全然分からないけどな」
「肉っていうより、ゴムみたいだよね」
「上履《うわば》きって食べるとこんな感じかも」
「ここまでまずくすんの、逆に大変じゃねえか」
三人はひとしきり法泉《ほうせん》バーガーの悪口を言い続けた。あまりの不味《まず》さに盛り上がりながらこの名物パンを食べるのは、加賀高生《かがこうせい》の伝統の一つだった。
「そういえば、姉さんが藤牧《ふじまき》によろしくって」
と、みちるが言った。裕生はあやうくパンを喉《のど》につっかえそうになった。
「西尾《にしお》先輩《せんぱい》が?」
西尾先輩というのは、茶道《さどう》部の二代目部長の西尾|夕紀《ゆき》で、みちるの姉だった。兄弟《きょうだい》姉妹《しまい》で同じ中学と高校に通うのは、このあたりではよくある話だった。去年卒業した彼女は、都心の女子大へ進学して、今は一人暮らしをしているはずだ。
「うん。今、なんか用事があるから、そのうち帰ってくるかもって」
「そうなんだ。うちの兄さんも今うちにいるんだよ」
「え……」
ペットボトルを口に運ぼうとしていたみちるは、ふと動きを止めた。
「お前の兄さんってここの初代部長だろ。茶道《さどう》部のOB会でもやるのか」
と、佐貫《さぬき》が言った。
「そんな話、聞いてないけど。ただの偶然じゃないかな」
みちるは視線を落として何か考えこんでいたが、突然顔を上げた。
「佐貫」
と、二人の話を遮《さえぎ》るように話しかけた。
「そういえば例の話だけど」
「え、ああ、あれか」
「ほんとにやってくれる?」
「俺《おれ》は平気。工具使うの得意なヤツらに話通しといた」
「何の話?」
と、裕生《ひろお》が口を挟む。
「秋に演劇《えんげき》部の定期公演があるんだけど、工作部に手伝ってもらおうと思って」
「……工作部? 入ってたっけ?」
と、裕生は佐貫に尋ねた。工作部は加賀見《かがみ》高校でも歴史のある文化部で、もともとは日曜《にちよう》大工が活動内容だったらしいが、今はプラモとガレージキット作りが中心だった。それでも校内で器用な人間が集まっているという定評がある。
「入ってるよ。うちにも俺専用の工具あるし」
と、佐貫は胸を張った。佐貫がどういう生活を送っているのか、裕生には見当もつかない。
「藤牧《ふじまき》も手伝わない? 定期公演」
「何を?」
「脚本《きやくほん》がまだ仕上がらないの。一年生の子がやってくれてたんだけど、うまく行かないみたい」
「脚本?」
どうして自分がそんなものを手伝うのか。裕生が不審《ふしん》げな顔をしていると、みちるがにっこり笑った。
「昔、小説書いてたじゃない」
「お前にそんな趣味《しゅみ》あったのか?」
佐貫は驚《おどろ》いたようだったが、裕生自身も驚いていた。
「いや、ないよ。そんなの書いたことないけど」
「書いてたよ。入院してる時」
「……あ」
裕生《ひろお》はようやく思い出した。みちるは顔をしかめる。
「書いた本人が忘れるもんなの?」
「小説なんてもんじゃないよ。子供が読むみたいな、ただのお話」
かなり前の話だが、裕生は病気で何ヶ月かの入院生活を余儀《よぎ》なくされていた。することがなくあまりにも退屈だったので、なんとなくノートに書き殴っていたのだ。その時限りのもので、趣味《しゅみ》といえるようなものではない。
「お前、入院してたのか?」
と、佐貫《さぬき》が言った。
「……言ってなかったっけ。小六の終わりから中一の初めぐらいかな」
「初耳だな。隠《かく》してたのか?」
「忘れてただけだよ。もう何年も前だし」
裕生としては学校に行かずに済んでいたので、結構のんきに過ごしていたと思う。手術に失敗したら命の保証はなかったと聞かされているが、未《いま》だに実感がない。とにかく暇《ひま》だった、という記憶《きおく》しかなかった。
「なんで西尾《にしお》はそんなの知ってんだ」
と、佐貫が首をかしげる。
「あたし、中一の一学期、クラスの委員長だったから。プリントとか病院まで届けに行ってたんだ。その時に見せてもらったの。書きかけのやつだけどね」
あの時、家族を除けば、病室に一番よく来てくれたのはみちると葉《よう》だった。二人ともあの頃《ころ》からあまり変わらない。
初対面のみちるは彼よりも背が高く、ずっと年上に見えた。顔も知らないクラスメイトのために、わざわざプリントを届けてくれて、学校のことをてきぱきと話してくれるのだった。まるで教師が訪ねてきたような気がして、裕生はなんとなく緊張《きんちょう》していた。
「そういえばだけど」
不意にみちるが話題を変え、裕生は我に返った。
「この部の一年の子、さっき昇降口で見たよ」
「偶然だな。さっき俺《おれ》も学校来るとこ見たぞ」
佐貫の言葉に、みちるは訝《いぶか》しげな顔をする。
「来るところ? あたしが見たのは帰るとこだけど」
「それ、いつ頃?」
「五分ぐらい前。なんか用事あったの?」
「……そうじゃないんだけど」
「さっき来たばっかりなのに、もう帰ったんだな」
佐貫《さぬき》が不思議《ふしぎ》そうに言う。
「……そうだね」
内心、裕生《ひろお》も首をひねっていた。やっぱりなにかおかしい。本当に何をしに学校へ来たのだろう——まさかわざわざ部室に顔を出すためにやって来たのだろうか。
    *
 飯倉《いいくら》志乃《しの》は重い足取りで校門を出た。髪の毛をゆるく三つ編《あ》みにして、眼鏡《めがね》をかけている。真面目《まじめ》な性格だと言われるが、自分では違うと思っている。
中間テストは無事終わったが、とても喜ぶ気にはなれなかった。たった今、英語の柿崎《かきざき》先生に呼ばれて、話をしてきたばかりだ。落ち込んでいるのはそのせいだった。
彼女は住宅街の中をまっすぐに伸びた道を歩いていく。このまま進めば、駅前へ出るはずだった。
「こんにちは」
背後から話しかけられて、志乃は飛び上がった。振り向くと、後輩《こうはい》の葉《よう》が立っていた。
「あ、葉ちゃん」
志乃は少しだけ表情をほころばせる。彼女はこの後輩が好きだった。
「……今日、どうかしたんですか」
並んで歩き出してから、葉は言った。最初は意味が分からなかったが、彼女ははっとした——部室で葉と待ち合わせをしていたのだった。
「ごめんね。頼《たの》まれてたものでしょう。家に置いてきちゃったの」
それでも、部室に顔を出して謝《あやま》るつもりだった。しかし、柿崎との話ですっかりそんなことも忘れていた。
「明日持っていってあげる。それで大丈夫?」
「……はい。あの、ちゃんと返しますから」
「いいのよ。もうわたしは使わないし」
頼まれていたのは料理の本だった。貸してほしい、という話だったのだが、志乃はあげるつもりでいた。
「テスト、どうでした?」
葉は志乃に尋ねた。志乃はさっきの柿崎との話を思い出した。英語の中間テストで、不審《ふしん》な答案が見つかり、そのことで少し話を聞きたいという話だった。
もちろん、なにも知らないと答えた——真実はそうではなかったが。
「葉ちゃんはテスト、どうだったの?」
「受けませんでした」
その答えに、志乃《しの》は歩道の上で思わず立ち止まった。
「どうかしたの?」
本当の答えを呑《の》みこんでいるような、奇妙な間《ま》が空いた。
「私は大丈夫です。心配しないで下さい」
話を打ち切るような言い方に、志乃は疑問を覚えた。しかし、それ以上尋ねることは出来なかった。
「先輩《せんぱい》、なにか変わったことはありませんでしたか?」
彼女は志乃を見上げている。その目はなんとなく、彼女の見知った後輩ではないような気がした。
「わたしは……」
彼女は大きく開かれた葉《よう》の目を覗《のぞ》きこむ——不意に、彼女の背中が冷たくなった。うまく説明は出来なかったが、自分の中にあるものを見透《みす》かされそうな気がした。
「なんでもないわよ」
「……本当ですか?」
「うん、平気よ。じゃあ、わたし急ぐから」
志乃は葉を残して走り出した。彼女の視線を背中に感じる。あまり葉と二人きりで長くいたくなかった。どうして自分が急にそんな風に思うようになったのか、志乃は自分でもよく分からない。
葉《よう》ではなく、別のなにかと一緒《いっしょ》に話していたような気がした。
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