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シャドウテイカー 黒の彼方12

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:11 佐貫《さぬき》がまた何か始めた、と裕生《ひろお》は思った。休み時間になるとバインダー片手に教室を出て行って、授業の始
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 佐貫《さぬき》がまた何か始めた、と裕生《ひろお》は思った。
休み時間になるとバインダー片手に教室を出て行って、授業の始まる時間すれすれになると戻ってくる。授業中もなにかの用紙を熱心に読んでいる。ちらっと覗《のぞ》きこんだ時は、なんだか兄が作った調査用紙に似ていた気がした。
みちるも昼休みになると同時に、どこかへいなくなってしまった。裕生は学校前の法泉堂《ほうせんどう》でパンを買うと、旧校舎の部室へ向かう。空《あ》き教室の多い旧校舎はあまり人も通らない。三階への階段を上がりきる直前、後ろから声をかけられた。裕生が振り向くと、二十代後半の女性教師が裕生を追って駆《か》け上がってくる。
英語担当の柿崎《かきざき》先生だった。二人は階段を上がりきったところで向かい合う。背の高い彼女は、裕生とほとんど身長が変わらない。さっぱりした性格で生徒からは人気がある。茶道《さどう》部の顧問《こもん》でもあった。
「こんにちは、藤牧《ふじまき》・弟くん」
彼女は化粧《けしょう》っ気のない顔に笑顔を浮かべる。皮膚《ひふ》が敏感らしく、チョークで手が荒れるからと授業中はいつも右手に手袋をしている。
「……その呼び方、やめてもらえませんか」
裕生は顔をしかめる。雄一《ゆういち》の付属物のようで、あまりいい気分ではない。
「『藤牧』だけだとどうしても君のバカ兄貴《あにき》が頭に浮かんじゃうのよ。インパクトありすぎだったもの、あのケンカバカ一代」
「すいません」
つい謝《あやま》ってしまうのは、兄がこの先生に色々と借りがあるからだ。初めてクラスの担任になった年、受け持ったのが入学したばかりの雄一がいるクラスだった。入学式からわずか一週間でバイクの窃盗《せつとう》で現行犯逮捕され、彼女に眠れない日々を提供することになった。
しかも、雄一の処分を決める職員会議《しょくいんかいぎ》では、即退学という意見も出る中で、「担任としてまだなにもしていません。一度ぐらいはチャンスを与えてやってください」と、一貫して弁護《べんご》したのがこの柿崎だった。停学が明けた後も、まるで弟のように面倒《めんどう》を見て、茶道部の顧問《こもん》も快く引き受けてくれた。雄一にとっては恩師と言っていい。
「ううん、別に謝らなくていいのよ。藤牧・弟くんはなんにも悪いことしてないんだから、気にしないで」
「……」
先生の呼び方のせいで気になるんですけど、とは言えなかった。
「そういえば、加賀見《かがみ》に帰ってきてるんだって? あのバカ」
「なんで先生まで知ってるん」
そう言いかけた裕生《ひろお》の鼻先《はなさき》に、柿崎《かきざき》は一枚の紙を突きつけた——「加賀見市東区《ひがしく》における都市伝説について」。
「君のクラスの佐貫《さぬき》くんをアシスタントにして、校内でアンケート取りまくってるわよ。知らなかったの」
やっぱりそうなんだ、と裕生は思った。佐貫なら適任だろうが、それにしてもどうしてそういうことになったのだろう。
「まあ、元気ならいいけどね。帰る前に一回ぐらい顔ぐらい出せって言っといて」
「分かりました」
と、裕生は言う。多分《たぶん》、彼女にとっても雄一は忘れがたい不肖《ふしょう》の弟子なのだろう。卒業式の日、師弟で抱き合って泣いていたという話も聞いている。性格的にウマが合っていたに違いない。
「部室でご飯食べるの?」
彼女は裕生のぶら下げているパンの袋を見ながら言う。
「はい、そうです」
階段から部室のドアが見える。誰《だれ》かいないかを確認するように、柿崎はちらりと視線を走らせる。
「あのね」
そこまで言って、彼女はためらった。なにかよほど大事なことに違いない。裕生は思わず背筋《せすじ》を伸ばした。
「三年のテストの問題が盗まれてるかも、って話聞いたことある?」
「……テストの問題が?」
そういえば、みちると佐貫がクラスでそんな話をしていたような気がする。学校でも本格的に調べている、とか。
「前からそういう話があったんだけど、こないだの中間テストであからさまに変な答案があったのね。どうもあたしの作った問題が盗まれてる感じでね」
彼女は声を低めて話を続ける。
「もちろん、盗んだ人間が悪いんだけど、あたしの管理不行き届きもあるし、今回はきちんと犯人を捕まえるつもりなの。ちゃんと証言も揃《そろ》えてね」
「……はあ」
「誰かから、なにか話を聞いてない?」
「クラスでそんな話は聞きましたけど……」
裕生《ひろお》は首をかしげる。三年のテストの話を、二年の裕生が知るはずがない。どうして自分にそんなことを聞くのだろう。
「誰《だれ》が怪しいのか分かってるんだったら、ぼくなんかじゃなく、その人に直接聞けばいいんじゃないですか?」
「色んな人に話を聞いてるの。下級生とか、去年卒業した人とかにもね。今回のテストで怪しい人は分かってるけど、本人に聞いただけじゃ、否定されて終わりだし。多分《たぶん》、犯人じゃなくても、事情を知ってる人がどこかにいるはずだと思ってるの」
裕生は一応|頷《うなず》いたが、なんとなく釈然《しゃくぜん》としない話だった。
「まあ、なにも聞いてなかったらそれでいいんだけど。じゃあね」
彼女はぽんと裕生の肩を叩《たた》いて、三階の廊下《ろうか》を足早に歩いていった。裕生はその背中を見送る。話の核心をぼかされた感じがするのは、気のせいなのだろうか。
「……裕生くん」
突然、隣《となり》から声が聞こえて、裕生は飛び上がりそうになった。いつのまにか部室のドアが開いていて、志乃《しの》が彼のすぐそばに立っていた。
「びっくりした。脅《おど》かさないで下さいよ」
「今、柿崎《かきざき》先生と話してたよね」
と、志乃は言った。
「なんて言ってたの?」
「中間のカンニングのこと、なにか知らないかって。犯人を捕まえたいから、色んな人から話を聞いてるって言ってましたよ」
裕生は志乃が三年生だということを今さらのように思い出した。先生も彼女に聞けばいいのに。
「先輩《せんぱい》、なんか知らないですか? 先輩のクラスでそういう噂《うわさ》とか」
「どうしてわたしが知ってるの?」
志乃は固い声で言った。
「そんなこと知るわけない」
初めて裕生は志乃を見た。彼女は俯《うつむ》いたまま、物思いに沈んでいるようだった。
「……先輩、なんか顔色悪いですけど。大丈夫ですか」
志乃ははっとしたように、ぎこちなく顔を上げた。
「うん……ちょっと、最近体の調子がよくなくて。保健室、行ってくる」
彼女は背中を向けて、階段を降りていった。背中が拒《こば》んでいるようで、ぼくも行きますよ、と声をかけることはできなかった。
(……どうしたんだろう)
裕生《ひろお》は廊下《ろうか》に佇《たたず》んだまま、志乃《しの》を見送る——本当に具合が悪いだけなのだろうか。
 その頃《ころ》、みちるは中庭を歩いていた。加賀見《かがみ》高校では新校舎と旧校舎が平行に並んでいて、渡り廊下で繋《つな》がっている。二つの校舎の間には、灌木《かんぼく》や芝生《しばふ》の植えられた中庭がある。新校舎ができる前からここにあったそうで、昔はただ「庭」と呼ばれていたらしい。
その頃には休み時間に生徒がたむろする場所だったらしいが、今はあまり人気《ひとけ》がない。新校舎ができたせいで日当たりが少し悪くなったし、手入れも行き届いているとは言いがたい。
みちるは隅《すみ》の藤棚《ふじだな》に向かって歩いていた。さっき、雛咲《ひなさき》葉《よう》が校舎から出て行くのを見かけて、思わず後を追ってきたのだった。みちるの足元は上履《うわば》きのままである。上履きで中庭に出るのは禁止されているが、いちいち守っている生徒などいない。
藤の花はもう散ってしまった後で、少し色づきの悪い緑の葉《は》が、鉄パイプの棚を屋根のように覆《おお》い隠《かく》している。
葉は藤棚の柱に寄りかかっていた。うなじがはっきり見えるほどうつむいている。背を向けているせいか、近づいていくみちるには気づいていない。
「そうじゃなくて……」
不意に葉の声が聞こえた。みちるはぎょっとして立ち止まる。自分に話しかけたのかと思ったのだ。しかし、葉は彼女のほうを見ようともしていない。
「もう少し待って」
もっとはっきりした声が聞こえた。携帯《けいたい》で誰《だれ》かと話してるのかな、とみちるは思った。それも、どうやら深刻な話のようだ。
(別の機会にした方がいいかもね)
彼女が後戻りしようとした瞬間《しゅんかん》、葉が振り向く。顔に驚《おどろ》きの色がはっきり浮かんでいる。ふと、みちるは彼女が両手に何も持っていないことに気づいた。かすかにひやりとしたものがみちるの背中に走る——一体、誰と話していたのだろう。
「こんにちは」
と、みちるは言った。たった今聞いたのは、大したことではないと自分に言い聞かせていた。
ただの独《ひと》り言に違いない。
「こんにちは」
葉は緊張《きんちょう》した面持《おもも》ちで言った。みちるは初めて彼女と会った頃のことを思い出す。あの時も愛想がいいわけではなかったが、みちるは何度もこの女の子に話しかけていた。
今も印象は変わらない。雛咲葉は間違いなくかわいい女の子だった。「人形みたい」という表現はぴったりだったとみちるは思う。向こうは黙《だま》っているが、こちらは色々構いたくなる。
「今、誰かと話してた?」
と、彼女は言った。
「いいえ」
と、言って葉《よう》は顔を伏せる。黄色っぽい芝生《しばふ》の上に、彼女の濃《こ》い影《かげ》が落ちていた。
「わたしになにか用ですか」
みちるはどうやって話を切り出すか、全く考えていなかったことに気づいた。どう切り出しても口を割るはずがないと無意識《むいしき》のうちに諦《あきら》めていたのかもしれない。失敗したかも、とみちるは思った。少し表情に乏《とぼ》しかったが、葉はみちるを完全に拒《こば》んでいるわけではなさそうだ。緊張《きんちょう》はしているようだが、ちゃんと彼女が話し出すのを待っている。
「あのね、単刀直入《たんとうちょくにゅう》に聞くけど」
共通の話題があるわけではない。変な世間話をするよりは、そのまま聞いた方がいい気がした。
「最近、なにかあったの?」
「えっ」
きょとんとした顔で、葉はみちるを見返した。本当に驚《おどろ》いているらしい。
「昨日、藤牧《ふじまき》と話してたんだけど」
「……裕生《ひろお》ちゃん」
口の中で葉が小さく呟《つぶや》く。
「なんかね、あなたのこと心配してるから」
葉《よう》の表情がかすかに動いた気がする。しかし、それがどういう意味を持つのか、みちるには分からなかった。
「あたしが聞くのも変だけど、ひょっとしたら藤牧《ふじまき》が相手だと言いにくいこともあるかもしれないって話になって」
話を聞きながら、葉はふと怯《おび》えたように背筋《せすじ》を震《ふる》わせた。
「それであたしが聞きに来たの」
みちるの言葉に耳を傾けながら、葉は視線を左右に動かしている。
「藤牧に話せなくて、あたしに話せることなんてないかもしれないけど。もちろん、聞いたからって藤牧に話すわけじゃないし……どうかしたの?」
葉の様子《ようす》がおかしい。彼女はさかんにあたりを見回していた。みちるも釣《つ》られてぐるりと中庭を見る。誰《だれ》もいるわけではない。ふと、渡り廊下を見ると、眼鏡《めがね》をかけた女子生徒が旧校舎から新校舎に向かって歩いていた。
(茶道《さどう》部の人だ)
と、みちるは思う。確か飯倉《いいくら》さんという三年生の人だ。
「……この人じゃない」
苦しげな声に、みちるは葉の方を振り向く。いつのまにか、彼女は痛みに耐えるように目を閉じていた。うっすらと額《ひたい》に汗がにじんでいる。
「ねえ、具合でも」
みちるの言葉はそこで立ち消えになった。突然、葉が体をぴんと伸ばして絶叫《ぜつきょう》した——。
「この人じゃない近くにいるだけ!」
その後のことは、すべてが一瞬《いっしゅん》のうちに起こった。
「えっ、なに?」
いきなり葉が向きを変えて、前のめりに倒れていく。その先には藤棚《ふじだな》の鉄製の柱がある。がつん、という鈍い音とともに彼女の額が激突《げきとつ》し、藤の木ごとぶるっと震えた。
「ちょっと!」
みちるが駆《か》け寄るのと同時に、葉がくたくたと崩《くず》れ落ちる。地面すれすれの危ないところで、みちるは彼女の小さな体を受け止めた。彼女は藤棚の下に座りこみ、ぐったりしている葉の顔を覗《のぞ》きこんだ。呼吸はしているらしい。命に別状はないようだが、額からかすかに血が流れている。彼女はゆっくりと葉の体を地面に下ろした。
「待ってて」
葉に聞こえるはずはないのだが、みちるはそう言い残して、助けを呼ぶために校舎の方へ走り出す。
みちるは後悔していた——もともとあの子は具合が悪かったんだ。話を聞くどころではなかったのに違いない。それにしてもひどい倒れ方だった。まるで自分から藤棚の柱にぶつかっていったように見えた。
ただ、気絶する前に叫んでいた言葉が、みちるの中で引っかかっていた。
この人じゃない、というあの言葉。
(もし、あたしが「その人」だったら)
そう思うと、なぜか震《ふる》えが止まらなかった。
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