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シャドウテイカー 黒の彼方23

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:「戻ってくるんじゃないかと思った」 と、裕生は言った。まるで身を守るように、葉《よう》は胸の前でアタッシュケースを抱えて
(单词翻译:双击或拖选)
「戻ってくるんじゃないかと思った」
 と、裕生は言った。まるで身を守るように、葉《よう》は胸の前でアタッシュケースを抱えている。
葉を見つけられたのはただの偶然だった。志乃《しの》とは連絡が取れなかったし、葉の姿を見つけることもできなかった。仕方なく団地に戻った時、葉の部屋の鍵《かぎ》がかかっていないことに気づいたのだった。
「どこ行くの?」
裕生が近づくと、葉は後ずさりをして背中を壁《かべ》にあずけた。
「そんなこと、聞いてどうするんですか」
「ぼくも一緒に行くよ。なにをしようとしてるのか、よく分からないけど」
「え……」
一瞬、葉の顔に笑みが広がりかけたように見えたが、すぐにしぼんでしまった。
「どうしてですか」
無理に作ったような、固い表情で彼女は言う。
「だって、昔からずっと一緒だったじゃないか」
穏《おだ》やかに裕生が言うと、葉は首を振った。
「わたしはずっと一人でした」
「そんなことないよ」
「そうだったんです。ずっとこの部屋で一人でいました。先輩《せんぱい》にはわたしの気持ちなんか絶対分からない。他《ほか》の部屋はそうじゃないのに、この部屋だけがわたし一人だったんです」
裕生は言葉を失った。彼にはずっと家族がいたのだ。何年もの間、どんな気持ちで葉が過ごしてきたのか、分かるはずはないと思った。しかし、ここで彼女を行かせてしまったら、もう二度と会えない気がした。
「雛咲《ひなさき》は一人になりたいの?」
と、彼は言った。彼女の目が怯《おび》えたように見開かれ、唇《くちびる》が小刻みに震《ふる》えた。
「でもわたし、多分《たぶん》もう人間じゃないんです」
絞《しぼ》り出すような声で彼女は言った。多分、その通りだろうと裕生は思う。しかし、驚《おどろ》きはしなかった。
「……もう知ってる」
ずるずると力が抜けたように葉がその場にしゃがみこんだ。裕生は彼女の前に腰を下ろした。子供の頃《ころ》よくそうしたように、葉《よう》の手を握る。冷え切った彼女の手は小刻みに震《ふる》えていたが、握り返そうとはしなかった。
「わたし、この町を出なきゃいけないんです」
「だめだよ」
裕生《ひろお》は不思議《ふしぎ》な確信を持って言った。葉を絶対に自分から離してはいけないと思った。
「ほんとです。出て行くの」
子供のように葉は首を振った。
「一人にはさせない」
と、裕生は葉の耳元に囁《ささや》いた。
「ブランコだって一人で乗れないじゃないか」
それを聞いたとたん、こらえきれなくなったように葉が泣き始めた。頬《ほお》を流れる涙が、ぽたぽたと裕生の手の甲に落ちる。涙を拭《ふ》いてやりたかったが、葉の方が裕生の手を固く握りしめていた。
裕生は光と影《かげ》がほとんど溶け合った部屋の中で、葉と向かい合っていた。どんなに耳を澄《す》ませても、不思議となんの物音も聞こえない。この団地の中にいるのは自分たちだけのような気がした。
「入院している時に先輩《せんぱい》が書いてたお話のこと、憶《おぼ》えてますか」
突然、葉が泣いた後のかすれた声で言った。
「あの島の話?」
葉は黙《だま》って頷《うなず》いた。この前、彼女が眠っていた時にちょうどそのことを考えていた。
「……途中までは。最後のほうはよく憶えてないけど」
目を閉じた葉の口から、すらすらと言葉が出てきた。
 流れついたなにかは、女の子にコトバをおしえました。
女の子は星や木や魚の名前をおぼえ、
日に日にかしこくなっていきました。
だけど、ひとつだけどうしても分からないものがありました。
自分がだれなのか、分からなかったのです。
「ちょ、ちょっと待って」
自分の書いた文章が暗唱されるのも恥ずかしかったが、それ以上に裕生は驚《おどろ》いていた。
「……ひょっとして全部、憶えてるの?」
書いた裕生ですらそんなことはできない。どういう展開にしたのか、思い出すのがやっとだった。
「憶《おぼ》えてますよ。わたし、このお話が大好きだったから」
葉《よう》は微笑《ほほえ》んだ。ふと、微妙な時制のずれを裕生《ひろお》は感じ取った。今は好きではないと言っているような気がする。
「題名があったの、憶えてますか?」
「え?」
「先輩《せんぱい》は忘れちゃってるんですね」
裕生は必死で記憶《きおく》を探《さぐ》ったが、思い出せなかった。そういえば、話が一段落ついた後で、題名をつけたような気もする。しかし、確信はなかった。
「わたしの欲しいものが、あの物語に書かれてる気がしてました。だから……」
突然、ポケットの携帯《けいたい》からメールの着信音が聞こえた。慌てて裕生は葉から体を離すと、携帯を出してちらりと見る——そして、顔色を変えた。
差出人は飯倉《いいくら》志乃《しの》だった。彼女から見えないようにメールを確認する。
「学校の部室にいます。話したいことがあるので、すぐに」
気配《けはい》を感じて顔を上げると、目の前に葉の顔があった。あっと思う間もなく、裕生の手から携帯が奪い取られていた。
「雛《ひな》さ……」
彼女は力いっぱい裕生を突き飛ばした。よろけて膝《ひざ》をつきそうになる。体勢を立て直した時には、葉はもう玄関のドアを開けていた。
「雛咲《ひなさき》!」
ドアがばたんと閉まった。裕生は慌てて後を追った。
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