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シャドウテイカー 黒の彼方24

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:20 加賀見《かがみ》高校に着いた時には、すっかり夜になっていた。校舎にはほとんど人が残っていないはずの時間だった。校内の
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 加賀見《かがみ》高校に着いた時には、すっかり夜になっていた。校舎にはほとんど人が残っていないはずの時間だった。校内の明かりはほとんど消え、生徒が出入りする昇降口も閉まっている。
団地を出たところで、裕生は葉の姿を見失った。彼女に携帯を取られたおかげで、志乃に連絡することもできなかった。志乃の携帯の番号は憶えていなかったし、それを知っている兄にも連絡のとりようがなかった。一番の近道を走ってきたつもりだが、葉よりも早く学校に着けた自信はない。
裕生は新校舎にある教職員《きょうしょくいん》用の玄関へ向かった。玄関はまだ鍵《かぎ》が開いているし、事務室にも明かりが点《つ》いていた。少しほっとしながら、裕生はドアを開ける。来客者の受付用の窓から、事務室の中を覗《のぞ》きこんだが、中には誰《だれ》もいなかった。
裕生はスニーカーのままで校舎に上がった。旧校舎へ行くには、二階の渡り廊下《ろうか》を通っていくしかない。裕生は一階の真っ暗な廊下を走り出した。自分の足音の他《ほか》にはなんの物音も聞こえない。
廊下《ろうか》の一番端《はし》の階段を駆《か》け上がろうとした時、階段の一番下に白いYシャツを着た男が倒れていることに気づいた。慌てて駆け寄ると、見覚えのある中年の事務の職員《しょくいん》だった。床の上には校内の鍵《かぎ》と懐中《かいちゅう》電灯が散らばっている。見回りの最中だったらしい。
裕生《ひろお》は屈《かが》みこんで職員の様子《ようす》を確かめる——規則正しく息をしていた。命に別状はないようだった。なにがあったのかは分からないが、何者かがここに侵入しているのは間違いなかった。
裕生は鍵束と懐中電灯を拾い上げて、再び走り出した。
 旧校舎の部室のドアは開け放たれていた。
「……飯倉《いいくら》先輩《せんぱい》?」
中を覗《のぞ》きこみながら、裕生は小声で声をかける。開きっぱなしの窓から、わずかに光が差しこんでいる。畳とロッカーがぼんやりと見えるだけで、誰《だれ》の姿もなかった。
確かにあのメールには茶道《さどう》部の部室と書いてあったはずだ。ここにいないということは、葉《よう》の方が先に来てしまったのかもしれない。
(あれ?)
裕生は廊下の暗がりの先に目を凝《こ》らす。ずっと先の方から、かすかな物音が聞こえた気がした。
裕生は茶道部の部室を離れて、早足で歩き始めた。学校の各部屋は、最後の夕方の見回りで鍵がかけられることになっている。気絶していたあの職員が旧校舎の見回りを終えていたとすれば、入れる部屋は限られているはずだ。
廊下《ろうか》の一番端は英語科の準備室だった。確かにこちらの方から聞こえたはずだ。ドアに手をかけたが、案の定《じょう》鍵は閉まっている。別の階に行こうとした時、がたりとなにかが動く音がした。
「……裕生くん」
足元から声が聞こえる。準備室の下の戸がかすかに開いていて、その向こうから志乃《しの》が覗いていた。
「飯倉先輩。なにやってるんですか」
彼女は廊下の様子を窺《うかが》って、誰もいないことを確認する。
「とにかく、中に入って」
志乃が部屋の奥へ消える。裕生は少し迷った後で、言う通り準備室の中へ入った。しょっちゅうここへ来ているが、誰もいない夜に入るのはもちろん初めてだった。
裕生が戸をくぐったとたん、志乃は元通りにぴったりと閉ざしてしまった。
「ここ、鍵がかかってないんですか」
「壊《こわ》れてるの……あまり、知ってる人はいないと思う」
彼女は裕生《ひろお》を窓際《まどぎわ》まで連れて行き、職員《しょくいん》用のスチールの机のかげにしゃがみこんだ。志乃《しの》は制服を着たままだった。家には帰っていないのだろう。
「先輩《せんぱい》はどこにいたんですか?」
裕生が言うと、志乃はもう少し声を小さく、というように唇《くちびる》の前に人差し指を立てた。そして、ようやく聞き取れるぐらいの声で話し始めた。
「下駄《げた》箱で靴と上履《うわば》きだけ入れ替えて、ずっと旧校舎の空き教室に隠《かく》れてたの。放課後《ほうかご》になってから部室に移ったんだけど」
よく見ると志乃の足元はソックスで、そばには靴が転がっている。外に出たように見せかけただけだったらしい。
「部室で待ってたら、葉《よう》ちゃんが来て。だから、逃げ出してここに隠れたの。もう、他《ほか》の部屋は鍵《かぎ》が閉まってるから」
「雛咲《ひなさき》はどこですか?」
「今は新校舎を探していると思う」
志乃はいきなり裕生の腕をぐっとつかんだ。おそろしく強い力だった。
「どうしてあの子が部室に来たの? 裕生くんがなにか話したの?」
かすれた声で志乃は言った。怒っているのではなく、心底|怯《おび》えているようだった。
「話したわけじゃなくて、先輩から来たメールを見られたんです」
と、裕生は言った。それを聞いた志乃は、ほっと息をついてスチールの机に背中を預けた。
「裕生くん、どこまで知ってるの?」
志乃は疲れた声で言った。
「三人の人がいなくなってますよね。多分《たぶん》、みんなカンニングに関《かか》わってる人です。そのうち、二人は田島《たじま》さんと川相《かわい》さん。もう一人は幽霊《ゆうれい》病院の屋上に……呼び出された人で」
「……樋口《ひぐち》さんね」
「先輩もそれに関わってるんでしょう? 柿崎《かきざき》先生が、先輩から話を聞きたいって言ってました」
「……どうして、いなくなった人たちがカンニングに関係してるって分かったの?」
「屋上でその……樋口さんの携帯《けいたい》のメールを見たんです。その人はそこに呼び出されたみたいでした。英語のテストのことで話があるって。信じないかもしれないけど、『ヒトリムシ』っていう虫の怪物に殺されたんです。きっと他《ほか》の人たちもみんなそうなんだ」
志乃の体はがたがた震《ふる》えている。
「……やっぱりそうだったのね」
と、彼女は言った。
「わたし、それが聞きたくて裕生くんを呼んだの」
志乃は他に誰《だれ》もいないことを確認するように、部屋の中をぐるりと見回した。それから、さらに声を低くして、悪魔《あくま》の名前でも告げるように呟《つぶや》いた。
「やっぱり、裕生《ひろお》くんも秘密を知ってるのね」
かすかな違和感のようなものが裕生の全身を撫《な》でていった。なにか入ってはならない場所に入りこんでしまったような。
「秘密を知ってる人は五人いたの。わたしたち二人はあそこに居合わせただけだった」
裕生は無意識《むいしき》のうちに体を引いていた。彼は真っ暗な部屋の中を見回す。この部屋にいるのは自分たちだけではない気がした。
「わたしはあの日、この場所にいたのに、なにもできなかった」
志乃《しの》の声は、少しずつ耳障りの悪いざらざらしたかすれたものに変わりつつあった。それはなんとなく裕生の不安を誘った。
「わたしのねがいは、あの日の秘密が保たれること。わたしたちの秘密が誰《だれ》の口からも洩《も》れることがないように」
熱に浮かされたように、志乃は喋《しゃべ》り続けている。
「わたしは、先輩《せんぱい》を助けられなかった」
「え?」
思わず裕生は聞き返す。
「……先輩って、誰ですか?」
彼女はぎこちなく首を動かして、裕生の方を見た。その顔には得体《えたい》の知れない笑みが貼《は》りついている。
「わたし、先輩みたいになりたいってずっと思ってたの」
なにかがズレている。まだ、自分は大事なことを知らないのかもしれない。裕生が口を開きかけた時、
「……志乃ちゃん」
か細い声が聞こえた。裕生たちが振り向くと、戸をくぐって西尾《にしお》夕紀《ゆき》が現れた。
「やっぱりここだったのね」
と、夕紀は言った。
「家に電話したら、まだ帰ってないって聞いたから」
夕紀は裕生と目を合わせた。こっちへ来て、と言っているようだった。裕生は立ち上がると、ゆっくりと夕紀の方へ動いていった。
「樋口《ひぐち》さんたちになにをしたの?」
「西尾先輩の秘密はわたしが守るんです」
志乃は夕紀の質問には答えなかった。しかし、その言葉に裕生が反応した。
(先輩って西尾先輩のことだったんだ)
裕生《ひろお》は頭が混乱してきた。問題が盗まれたことと、夕紀《ゆき》となんの関係があるのだろう。つい先週に起こったことなのに。
「わたしの秘密って、もう一年も前のことじゃない」
と、夕紀が言った。
「……一年前?」
裕生は思わず口に出した。ゆらりと志乃《しの》が立ち上がり、裕生に向かって言った。
「そう、去年よ。裕生くん、知らなかったの? 秘密を知っているのに」
「やめて!」
と、夕紀が叫んだ。そして、裕生に向かって低く囁《ささや》く。
「ここから逃げて」
しかし、裕生の耳には、夕紀の忠告はほとんど耳に入っていなかった。
「じゃあ、いなくなった人たちって」
「今年の三月に卒業してる人たちよ。浪人《ろうにん》してる人もいるし、フリーターの人もいるわ。みんな加賀見《かがみ》に住んでるけど」
裕生はあっと声を上げそうになった——三人もの生徒がいなくなっているのに、どうして学校の中でまったく騒《さわ》ぎになっていないのか、不思議《ふしぎ》に思っていた。彼女たちが皆卒業していれば当たり前だ。
ただ、そうなるとかえって分からないことがある。カンニングが一年前に起こったことだったら、葉《よう》がこの事件と関係しているはずはない。その時はまだ入学してもいないのだから。しかし、葉は確かに志乃を追ってきたはずだし、『カゲヌシ』にとりつかれていると認めてもいた。
「一年前、わたしと西尾《にしお》先輩《せんぱい》は柿崎《かきざき》先生の手袋を届けにここへ来たの。それで問題を盗みにきたあの人たちに脅《おど》された。あの人たちがいなくなれば、秘密はわたしと先輩だけのものになる」
裕生はごくりと唾《つば》を飲みこんだ。恐ろしかったが、勝手に口が動いていた。
「その人たちを、飯倉《いいくら》先輩が殺したんですか」
志乃は首をかしげて裕生を見た。
「そうよ。だって、秘密を守るためだもの」
そばにいた夕紀が息を呑《の》んだ。それから、絞《しぼ》り出すような低い声で言う。
「……どうやって?」
「それは先輩が知らなくてもいいことです」
夕紀は「ヒトリムシ」をはっきり見たことはないらしい。「ヒトリムシ」を見た人間は皆死んでいるのだ——裕生を除いて。
「もう、過ぎたことでしょう。どうしてそんなことのために」
夕紀がそう言いかけると、志乃は皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「先輩だって、誰《だれ》にもこのことを話してないじゃないですか。先輩にとっては今でも秘密なんですよ。一年前のことは」
「一年前じゃなくて、今の秘密でもあるでしょう。あなたにとっては」
夕紀《ゆき》が震《ふる》える声で言った。ふと、裕生《ひろお》は志乃《しの》から話を聞きたいという柿崎《かきざき》の話を思い出す。カンニングは去年だけではなく、つい先週にも起こっている。今年の三年生の中にも、犯人はいるはずだった。ここのパソコンにテストの問題が入っていることを知っていて、この部屋に入る方法も知っている。だとすると——。
「飯倉《いいくら》先輩《せんぱい》が、この前の中間テストの問題を盗んだんですか?」
と、裕生は言った。志乃は答えない——黙認《もくにん》だった。
「裕生くんはこれで全部の秘密を知ったわね」
志乃はむしろ嬉《うれ》しそうに言った。
「わたしのねがいは、秘密が保たれること」
ゆっくりと志乃が裕生に向かって近づいてくる。その前に夕紀が立ちはだかると、彼女の体をしっかりとつかまえた。
「裕生くん、逃げて!」
呼びかけられて、彼ははっと我に返った。廊下《ろうか》に向かおうとした時、志乃の体からぶわっと音もなく熱風が吹いた。夕紀は吹き飛ばされ、ばったりと床に倒れる。
「西尾《にしお》先輩!」
<img src="img/shadow taker_225.jpg">
裕生《ひろお》は夕紀《ゆき》に駆《か》け寄った。頭をぶつけたらしく、意識《いしき》を失っている。しかし、命に別状はないようだった。ふと、かさかさという乾いた音が、この部屋を満たしていることに気づいた——周囲になにかがいる。部屋の中は奇妙に暑くなってきていた。
(ヒトリムシ)
裕生は弾《はじ》かれたように立ち上がる。狙《ねら》われているのは自分だ。ここに留《とど》まれば、夕紀まで危険にさらすかもしれない。彼は下の戸をくぐって廊下《ろうか》へ飛び出していった。
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