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シャドウテイカー 黒の彼方26

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:22 葉自身も自分に取りついた怪物を見るのは初めてだった。さっきまでは「黒の彼方」の意識《いしき》は彼女と分離しており、頭
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22
 葉自身も自分に取りついた怪物を見るのは初めてだった。さっきまでは「黒の彼方」の意識《いしき》は彼女と分離しており、頭の中に声が聞こえるだけだった。
しかし、今は彼女の中にこの怪物の意識《いしき》がゆるやかに流れこんでくる。葉《よう》はこの怪物がとても完全体とは言えないことを知った。双頭の片割れには思考能力はなく、目を閉じてがくりと首を垂れている。わずかに呼びかけに応じるだけの状態だった。
「傷が癒えていないようだな」
と、志乃《しの》に乗り移ったヒトリムシが言う。毛皮に隠《かく》れて見えないが、確かに全身に傷がある。
特に右肩には丸く切り取られたような大きな傷があった。ふと、葉は猛烈な飢餓《きが》感を覚えた。この怪物——いや、自分があれほど「餌《えさ》」を欲していたのは、自らの傷を癒《いや》すためだったのだ。
「こちらを探し当てるまでに、ずいぶんとてこずったものだな」
葉は怒りをこらえた。今は志乃の肉体から「カゲヌシ」独特の気配《けはい》が漂《ただよ》っているのを感じる。しかし、「黒の彼方《かなた》」の感覚は不安定で、ついさっきまで、どこに「ヒトリムシ」がいるのかを探り当てるのが難しかった。時折感じるかすかな気配を頼りに、葉はこの数日町を歩き回っていた。しかし、いたずらに時間をかけているうちに、犠牲《ぎせい》者を増やしてしまった。
「貴様《きさま》から逃げることはいつでもできた。われらは機を窺《うかが》っていたのだ。新たなる力を得れば、貴様を倒す目もある。同族を殺し尽くした貴様を」
と、ヒトリムシが言う。葉と半ば融合《ゆうごう》している「黒の彼方」の記憶《きおく》が、その言葉に反応する。ぼんやりとした殺戮《さつりく》と破壊《はかい》のイメージが彼女の頭に浮かんだ。この世界に来る直前、この双頭の怪物は同族を片っ端《ぱし》から捕食しようとしていたらしい。全身の傷は、抵抗する他《ほか》の「カゲヌシ」によってつけられたもののようだった。
「我らは人を食って成長する。この脆《もろ》き者の意志が新たなる力を我に与えた」
「カゲヌシ」を契約者の外部へと発現させるためには、意識の融合を図らねばならなかった。「カゲヌシ」が契約者の意識に干渉するのと同時に、「カゲヌシ」の側もまた干渉を受ける。
「そしてこれが我らの新たなる姿だ」
黒い甲虫の背が一斉《いっせい》に割れて、中から新しい虫たちが現れる。それらは皆、大きな虫羽を生やしていた。床の上に無数の抜け殻《がら》を残したまま、大きくはばたいた虫の群れはふわりと地面から浮かび上がった。
(ヒトリムシ)
契約者によって蝶蛾《ちょうが》の変名を与えられたために、その形態の定義すらも変化していた。旧校舎の廊下《ろうか》を、黒い羽ばたきが満たしている。
戦《たたか》いに臨《のぞ》む者の歓喜が彼女の中に流れこんでくる。黒い犬《いぬ》はまっすぐに「契約者」である志乃に向かって走った。無数の飛翔《ひしよう》する虫を相手にするのは煩雑《はんざつ》にすぎる。これらの虫を存在せしめている人間を狙《ねら》うのが最も——。
「だめ!」
危ういところで葉は我に返った。黒い犬は戸惑《とまど》ったように足を止める。
(人は殺さないで)
融合《ゆうごう》しかけていた意識《いしき》が分離する。不満を表明するように、目覚めている方の頭が咆哮《ほうこう》した。
(他《ほか》の人を殺したら、わたしも死にます)
その瞬間《しゅんかん》、虫の群れが「黒の彼方《かなた》」に殺到する。その黒い肉体をみっしりと黒い虫が覆《おお》い隠《かく》した。そして、体を激《はげ》しく振動させ始めると、たちまち表面から煙《けむり》が立ち昇る。
葉《よう》の意識に高熱による痛覚が流れこんでくる。彼女は歯を食いしばって耐えた。双頭の犬《いぬ》の毛皮がどろりと溶け始めた——。
しかしその時、葉の口元から笑みが洩《も》れた。この「ヒトリムシ」の最大の武器は肉体を震《ふる》わせて高熱を発することだった。しかし、同時にそれが最大の弱点でもある。接触していなければ、敵を燃やすことができない。突然意志を持ったように「黒の彼方」の表皮が動き出し、細い毛が肉体に取りついている虫を絡《から》め取った。
事態に気づいた虫の群れが「黒の彼方」から飛び立とうとする。しかし、瞬時に離れるには、大きな虫羽はむしろ邪魔《じゃま》になった。無事な虫がすべて飛び去った時には、その数は三分の二ほどに減っていた。
「ヒトリムシ」の群れは志乃《しの》の肉体を守るように、彼女の周囲を飛んでいる。問題はここからだった——。
「……契約者を狙《ねら》うつもりはないようだな」
と、志乃の口を借りた「ヒトリムシ」が言う。
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葉《よう》はかすかな焦りを覚えた。それを知られた以上、虫の群れが接近戦を仕掛けてくることはありえない。こちらから効果的に相手を攻めるのは難しい。「黒の彼方《かなた》」には俊敏《しゅんびん》な動作も可能のようだが、個体の小さな敵を一匹ずつ相手にするわけには行かなかった。
葉は「黒の彼方」の意識《いしき》により深く入りこむ。この「同族食い」の怪物には、以前にも個体の小さな敵と戦ったことがあるはずだ。それに使える「武器」を所有しているかもしれない。
だが、その答えを得る前に空中の虫たちが動いた。契約者である葉の肉体に向かって、一直線に虫が飛んでくる——瞬時《しゅんじ》に葉は理解した。相手はこちらと違い、人間を殺すことなど厭《いと》わない。むしろ人間の捕食を目的とした生物なのだ。
彼女は身を翻《ひるがえ》す。その視線の先に、青ざめた裕生《ひろお》が立っていた。彼女は裕生の手を握って走り出した。虫の発する熱気が二人の背後に迫る。裕生が後ろを見ようとしていた。
「振り返っちゃ駄目!」
葉は鋭《するど》い声で叫んだ。走る速さが遅くなるだけだった。
(この人を守らなきゃ)
その意志が「黒の彼方」を突き動かしたようだった。双頭の犬《いぬ》は瞬時に走っている二人の間に割り込むと、裕生の腕に食いつき、そのまま引きずって走り出した。
葉は裕生の手を離し、目を閉じている方の首にしがみつく。二人の人間を引きずったまま、「黒の彼方」はほとんど飛ぶように廊下《ろうか》の端まで走った。たちまち背後の虫の気配《けはい》が遠ざかる。
茶道《さどう》部の部室のドアの前で、黒い犬は突然停止する。葉たちは投げ飛ばされるように床に転がった。
(中に入って伏せなさい)
「黒の彼方」から伝わってくる意思は簡潔《かんけつ》なものだった。葉は素早く立ち上がると、裕生の腕をつかんで茶道部の部室に飛びこんだ。そして裕生もろとも畳に体を伏せる。
双頭の犬は四肢を踏《ふ》ん張って、真っ黒に廊下を染めている虫の群れに向き直った。目覚めている首の呼びかけに応じて、眠っていた首が唐突に目を覚ます。この首に思考能力はない。しかし、この眠り首にとって、覚醒《かくせい》は同時に咆哮《ほうこう》を意味していた。
開ききった顎《あご》から発せられたのは、生物の可聴範囲《かちょうはんい》を超えた振動だった。旧校舎の長い廊下がぶるりと震《ふる》え、ガラスが次々と割れていった。部室のドアに迫っていた虫の群れは、空中でぴたりと静止し、羽根を撒《ま》き散らしながらゆっくりと落ちていった。
間近に迫っていた一群を落としたところで、再びその首は目を閉じてうなだれた——葉はその咆哮を、今の「黒の彼方」には何度も使えないことを知る。せいぜい、あと一度というところだった。
葉は立ち上がった。ふと、自分の両手がぬるりとした赤い血で染まっていることに気づく。自分の血ではなかった。彼女ははっと裕生を見る。彼は自分の右腕を押さえてうずくまっていた。
さっき、「黒の彼方《かなた》」がくわえた二の腕から、ぼたぼたと鮮血《せんけつ》が流れ落ちている。
「大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫だけど……」
そう言いながら、裕生《ひろお》は痛みに顔をゆがめている。おそらくは深く牙《きば》が食いこんだのだろう。葉《よう》は唇《くちびる》を噛《か》んだ。「黒の彼方」に彼女の意思を完全に反映させることはできない。むしろ、彼女の意識《いしき》が取りこまれないようにするのがやっとだった。
彼女ははっと我に返る。一瞬《いっしゅん》、「黒の彼方」との同調を忘れていた。黒い犬《いぬ》の視覚を通じて、彼女は廊下《ろうか》の状況を見る——床に落ちている虫の数が少ない。
(全部倒したわけじゃない)
彼女は廊下へ出て行こうとする。その瞬間、葉の背筋に戦慄《せんりつ》が走った
「後ろ!」
裕生の声にはっと振り返ると、部室の窓にびっしりと黒い虫が貼《は》りついていた。生き残った虫たちが、いつのまにかこの部室の窓へ回りこんでいたのだ。
(いけない)
部室の窓は開いている。窓に飛びつく間もなく、「ヒトリムシ」が続々と中へ飛びこんできた。「黒の彼方」はまだ廊下にいる。その位置から例の咆哮《ほうこう》を使うわけには行かない。自分たちを巻きこんでしまう。
葉は後ずさりをする。しかし、彼女たちの周囲はすでに虫たちに取り囲まれつつあった。彼女の体が震《ふる》えた。頭の中が真っ白になった瞬間、
「そっちじゃない!」
裕生の声が聞こえた。彼は逆に窓の方へ走った。そして、がらりと窓を開く。たちまち彼の上半身を黒いものが覆《おお》っていった。顔や腕を這《は》いまわる虫たちは、かさかさと音を立てながら袖《そで》や襟《えり》からシャツの中へ入りこもうとしている。
しかし、彼は血で濡《ぬ》れた右手を葉に向かって差し出した。
「雛咲《ひなさき》!」
彼は葉を呼ぶ。彼女は裕生の意図《いと》を悟った。彼女は頷《うなず》くと同時に裕生に駆《か》け寄った。そして、差し出された右腕をしっかりと抱えこむ。裕生は葉の勢いを利用しながら窓枠に飛び移り、彼女の体もろとも三階の窓から空中へ飛び出していった。
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