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シャドウテイカー 黒の彼方29

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:24「去年の今頃《いまごろ》、テストの採点をしてたら、あからさまに変な答案がいくつかあったの」と、柿崎《かきざき》は言った
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24
「去年の今頃《いまごろ》、テストの採点をしてたら、あからさまに変な答案がいくつかあったの」
と、柿崎《かきざき》は言った。
三日後の昼休み。裕生《ひろお》と葉《よう》は英語科準備室に呼び出されて、柿崎と向かい合って座っていた。
旧校舎は相変わらず静かで、窓を閉めているとほとんど物音も聞こえない。裕生はちらりと自分たちが出入りした下の戸を見る——鍵《かぎ》は真新しいものに取り替えられていた。もうそこから出入りすることはできないらしい。
「あたしは問題と一緒《いっしょ》に模範《もはん》解答も作ってる。最初はざっと作っておいて、あとから模範解答に間違いがないかどうかを確かめてから、それを使って採点するの」
スチールの椅子《いす》に座っている柿崎は、ジーンズの膝《ひざ》のあたりを見ながら、自分に言い聞かせるように話し続けていた。
「で、実際間違いが見つかって、訂正《ていせい》したりもするわけ。でも、あの時のテストで、その訂正前の模範解答を丸写しで書いてるバカがいたのね」
「それが樋口《ひぐち》さんたちだったんですか」
と、裕生が言った。柿崎は俯《うつむ》いたまま軽く頷《うなず》いた。
「ぶっちゃけた話、あの子たちはふてぶてしいから認めなかったわけ。どうやってそれを盗んだのかも分からなかったし、証拠不十分でお替《とが》めナシってことになったのよ。ところが、こないだの中間テストでも同じような答案があった。それも、よりによってあたしが顧問《こもん》やってる部活の生徒なんて」
彼女はゆっくりと息を吸って、深いため息をついた。
「あの子は推薦《すいせん》狙《ねら》ってたけど、正直言ってちょっと微妙な成績《せいせき》だったのね。それで悩んでたのもあたしは知ってた。飯倉《いいくら》さんはよくこの部屋に出入りしてたし、ひょっとして、なにか特別な方法を知ってるんじゃないかと思ったわけ。だから、飯倉さんをここへ呼んだの」
「先輩《せんぱい》は言わなかったんですね」
と、葉が言った。
「そうね。でも、いかにもなんかありますって顔してたの。ああ、これは誰《だれ》かかばってんのかなと思って、君たちにも話を聞いてたわけ。樋口さんたちにも聞こうと思って、電話で連絡したりしてた。捕まんなかったけどね」
そこで初めて、彼女は顔を上げて裕生たちを見た。彼女の両目は少しはれぼったかった。たぶん、あまり眠っていないのだろう。ひょっとすると泣いていたのかもしれない。
「正直言ってもっと高度な方法で盗んでると思ってた。この部屋の鍵《かぎ》が閉まってても入れるなんて、飯倉さんから聞くまで全然気がつかなかった。灯台もと暗しだったわ」
裕生《ひろお》は黙《だま》っていた。三日前、彼もこの部屋に忍びこんだことを柿崎《かきざき》は知らなかった。あの晩、学校であったことをすべて知っているのは、葉《よう》と裕生二人だけだった。
「藤牧《ふじまき》くんと雛咲《ひなさき》さんは、飯倉《いいくら》さんのお通夜《つや》に行った?」
「……はい」
と、裕生は答えた。
あの日、裕生たちはついに志乃《しの》を見つけることはできなかった——次の日の朝になって、住んでいたマンションから、飛び降りて死んでいるのが見つかった。ただ、その前に柿崎に電話をかけて、彼女はカンニングの犯人は自分だったことと、そして三人の卒業生を殺したことを告白した。もちろん、公《おおやけ》には三人は行方《ゆくえ》不明になっていて、殺された痕跡《こんせき》も残っていない。警察《けいさつ》は捜査を続けているらしいが、志乃の自白に戸惑《とまど》っているようだった。
「去年、どうして樋口《ひぐち》さんたちのカンニングを見た時、あたしに言ってくれなかったんだろ」
裕生と葉は初めて顔を見合わせる。志乃は自分のしたことをほとんど告白した。ただ、自分が取りつかれたカゲヌシの話や、夕紀《ゆき》のことは伏せたままだった。
「あなたたち、彼女からなにか聞いてない?」
「いいえ」
裕生と葉は同時に答えた。おそらく、志乃は「ヒトリムシ」から解放されたのだと思う。怪物に取りつかれていたとはいえ、三人も人を殺した罪の意識《いしき》に耐えられなかったのだろう。それでも、最後まで夕紀の秘密は守り通したのだ。
「あの……このこと、どうしてわたしたちに話すんですか」
と、葉は尋ねた。
「飯倉さんに言われたのよ。あなたたちには全部話してほしい……それと、色々と迷惑かけると思うけど、ごめんなさいって」
膝《ひざ》の上に置いた裕生の手を、葉の手が探り当ててぎゅっと握り締《し》める。裕生は前を向いたまま、黙って握り返した。目の奥が熱くなるのを感じた——自分たちに気なんか遣《つか》わなくてよかったのに。もっと大事なことがあったはずなのに。
「雛咲さん、あと、飯倉さんからあなただけに伝言」
「……はい」
葉は体を固くする。柿崎は初めて言葉を詰まらせたように見えた。しかし、それは一瞬《いっしゅん》のことで、彼女はゆっくりと区切るように言った。
「『料理の本、大事に使ってね』って」
「これでよかったんでしょうか」
と、葉が言った。
「分からない。でも、他《ほか》にどうしようもなかったと思う」
裕生《ひろお》は答えた。二人は英語科準備室での話を終えて、人気《ひとけ》のない廊下《ろうか》に立っていた。割れたガラスはすべて新しく取り替えられている。「ヒトリムシ」と戦ったことが嘘《うそ》のように思える。
「もっと早く気がついていれば、飯倉《いいくら》先輩《せんぱい》を助けられたかもしれない」
「……雛咲《ひなさき》は悪くないよ」
志乃《しの》が死んで以来、葉《よう》はずっと自分を責めているようだった。しかし、それは裕生の思いでもある。もう少し自分が注意深ければ、もっと早く真相に気づいたかもしれなかった。この町で、三人の人間が「ヒトリムシ」の犠牲《ぎせい》になった。志乃も含めれば、四人が命を落としてしまった。
まだ心のどこかでは、志乃が死んでしまったことを信じきれていない。苦い後悔と一緒に、その気持ちはずっと残っていくのかもしれなかった。
「これから、どうしたらいいと思いますか」
「……『カゲヌシ』のこと、誰《だれ》にも話さないほうがいいと思う」
西尾《にしお》夕紀《ゆき》は「ヒトリムシ」を見ていない。あの怪物のことは、裕生と葉だけの秘密だった。「黒の彼方《かなた》」は他《ほか》の人間を殺すと葉を脅《おど》していたらしい。もし、秘密を知る者が増えれば、なにをするか分からなかった。
「わたし、思ってたんですけど」
と、葉が言った。
「きっと、飯倉先輩みたいな人が他にもいますよね」
そうだった。「カゲヌシ」は一匹だけのはずがない。噂《うわさ》のかたちで広まっているのも、それが様々な土地に現れているはずだからだ。
「わたし、その人たちを助けたい」
「……うん」
今も葉の中にいる「黒の彼方」は、他の「カゲヌシ」たちを捕食するらしい。原理的には、あの怪物に餌《えさ》を与えることが、他の人間を助けることに繋《つな》がるはずだった。「ヒトリムシ」を食った「黒の彼方」は、今は落ち着いている。しかし、いずれはまた餌を欲しがるだろう。表面的には葉と「黒の彼方」の利害は一致している。
(でも……)
裕生は考えこんだ——。
「先輩」
「ん?」
「ありがとうございました」
「何の話?」
裕生は反射的にとぼけた。葉は上目遣《うわめづか》いに裕生の顔を見る。
「あの時、名前を呼んでくれて。先輩が呼んでくれなかったら、わたし」
葉《よう》の顔が真《ま》っ赤《か》になっている。裕生《ひろお》もさすがに恥ずかしくなった。
「ぼくは大したことしてないよ。そんなことより……」
(雛咲《ひなさき》を助けるには、どうしたらいいんだろう)
それが裕生の悩みだった。「カゲヌシ」たちは、餌《えさ》を食べることで成長するらしい。だとすれば、いつか葉が「黒の彼方《かなた》」を制御《せいぎよ》できずに、完全に乗っ取られる日が来るのではないだろうか。
そうなる前に、葉を助けなければならなかった。他《ほか》の「カゲヌシ」に取りつかれた人間を助けるのと同じように。
(「黒の彼方」を雛咲から引き離す方法がどこかにあれば)
なんとしてでも、それを探さなければならない。
「……どうかしましたか?」
葉が心配そうに裕生を見上げている。
「なんでもないよ……ぼくも雛咲に協力するから」
裕生の言葉に、葉は微笑《ほほえ》みながら頷《うなず》いた。
昼休みの終了のチャイムが鳴る。二人は誰《だれ》もいない廊下《ろうか》を歩いていった。
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