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シャドウテイカー アブサロム03

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:2 元気ないな、と藤牧《ふじまき》裕生《ひろお》は思った。加賀見《かがみ》団地にある藤牧家の居間で、裕生は葉《よう》と向
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 元気ないな、と藤牧《ふじまき》裕生《ひろお》は思った。
加賀見《かがみ》団地にある藤牧家の居間で、裕生は葉《よう》と向かい合って食事をしている。二人の前には冷やし中華の入った皿がある。裕生はもうほとんど食べ終わっていたが、葉の皿にはまだ半分近く残っていた。
「今日、暑いね」
裕生はTシャツの胸元をばさばさと広げる。
「そうですね」
葉はしばらく経《た》ってから、重たげに口を開いた。ロングスカートの上に着ているのは、重ね着したキャミソールだけなのだが、それでも暑いらしい。
「クーラーつける?」
彼女はこくんと頷《うなず》いた。裕生は立ち上がって窓を閉め、古いクーラーのスイッチを入れた。
「ひょっとして、味変だった?」
と、裕生は尋ねる。今日、帰ってきてから葉の態度が少しおかしい。ずっとなにか言いたげな顔をしているのだが、そのくせ、なにかあったの、と聞いても答えなかった。
「……そんなことないです。ごちそうさまでした」
(気になるなあ)
と、裕生は心の中で呟《つぶや》いた。はっきり言ってくれればいいのにと思うのだが、葉は頑固なところがある。あまり問いつめると自分の部屋に帰ってしまう気がした。
葉は裕生と同じ団地の一階に一人暮らしをしている。両親は数年来、失踪《しっそう》したままだ。先月の「ヒトリムシ」の事件以来、彼女はずっとここで食事をとっている。自分の部屋に帰るのは着替えと寝る時ぐらいで、彼女の持ち物も徐々に増えつつあった。
ここに住んだらどうかという話もしたのだが、彼女はそうしたいともしたくないとも言わなかった。どちらにせよ、葉の親戚《しんせき》にも話を通してからの方がいいだろう、ということになった。
「そろそろ片づけようか」
「……あの、おじさんは」
あ、と裕生は思った。おじさん、というのは裕生の父の藤牧|吾郎《ごろう》のことである。
「きっとどこかに寄り道してるんだよ」
裕生には母親がいない。兄の雄一《ゆういら》は都心の大学に行くために家を出ているので、父親——藤牧吾郎と二人で住んでいる。吾郎は都心の小さな広告会社に勤めている。東京のはずれにある上、JRの接続の悪い加賀見市からは、二時間近く電車に揺られなければならない。以前は帰宅も遅く、外泊もしょっちゅうだったが、最近は一緒《いっしょ》に夕食を食べるようになっていた。
「大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ。子供じゃないし……っていうか、もともと晩御飯の時間にちゃんと帰ってくる方が珍しいんだから」
「そうなんですか」
(そういえば、雛咲《ひなさき》は知らないんだよな)
と、裕生《ひろお》は内心でため息をついた。吾郎《ごろう》は「まとも」な父親ではない。兄の雄一《ゆういち》も変人だが、父もまた別の意味で変人だった。
 洗い物を終えた裕生が居間に戻ると、葉《よう》は座卓の上で教科書とノートを広げていた。明日の予習らしい。しかし、手を止めたままでぼんやりとテレビのニュースを見ている。
裕生も彼女の向かいに腰かけてニュースを見る。先月に起こった女子中学生殺害事件の特集らしかった。
「事件発生から二ヶ月。犯人の足取りはいまだにつかめていませんが、新たな事実が判明しました」
と、キャスターが言う。
殺害の方法や場所は異なるものの、何年か前から同じように十代の女の子が殺される事件が起こっており、同一犯の可能性もあるということだった。
葬式の映像が流れている。左右に細い三《み》つ編《あ》みを垂らした女の子の遺影《いえい》が映し出される。そのそばには花輪《はなわ》と青い鳥のようなぬいぐるみが飾られていた。
被害者の両親も行方《ゆくえ》不明のままです、というナレーションがかぶさる。裕生はなんとなく葉を連想した——もし、この犯人が加賀見《かがみ》にやって来たとしたら、一人で暮らしている葉は格好の標的《ひょうてき》のような気がする。
「怖い事件だね」
と、裕生は言った。自分たちが頼《たよ》りになるかどうかは分からないが、やはり葉はこの家に住んだ方がいい気がした。
「え……?」
葉ははっとしたように表情を変える。どうやら、ニュースに集中していたわけではなく、ずっと考えごとをしていたらしい。
「ううん。別に大したことじゃないんだけど。怖い事件だねって言っただけ」
「……」
沈黙《ちんもく》が流れる。やっぱり、なにがあったのかちゃんと聞いた方がいいのかもしれないと裕生が思い始めた時、
「……先輩《せんぱい》」
意を決したように葉が言った。
「なに?」
「あの……」
突然、電話が鳴った。あわてて裕生《ひろお》は電話台に駆《か》け寄って、受話器を取る。
「もしもし」
『おお、裕生か』
よく響《ひび》く男の声が聞こえてくる。父の吾郎《ごろう》だった。少し呂律《ろれつ》が回っていないところからすると、どこかのスナックかバーで酒を飲んでいるに違いない。
「どうしたの」
『葉《よう》ちゃんはそこにいるのか? 今何してる?』
「テレビ見てるけど。代わる?」
その言葉に、不審《ふしん》げに葉が振り向く。
『いや、別にそれはいい』
吾郎のまわりで、女性の話し声が聞こえる。吾郎と一緒《いっしょ》にいるのだろう。だとすれば、どういう状況かも予想がつく。おそらく、目当ての女性を口説《くど》いている最中だろう。だとすると、次に来る言葉は、
『今、俺《おれ》は新宿《しんじゅく》にいるんだが、どうも今夜は帰れないかもしれん』
「……やっぱり」
ため息まじりに裕生は言った。藤牧家《ふじまきけ》が男所帯になってから、幾度となく電話で繰《く》り返された会話だった。
昔の藤牧吾郎はきわめて謹厳《きんげん》な一家の主《あるじ》だったが、妻の美佐枝《みさえ》が死んで性格が一変した。妻を失った反動でそうなってしまったのか、元々備わっていたピンク色の資質が花開いたのか、そのあたりはよく分からない。ともかく、「恋人」と称する女性が方々にいるらしい。
女性にはきわめてマメだったが、子育てにはきわめていい加減だった。兄の雄一《ゆういち》が一時期手がつけられなくなったのも、それと無縁《むえん》ではないはずだ。高校に入るまでの数年間、雄一は自分の父親を呼ぶ時、「オヤジ」の上に「エロ」を欠かさずつけていた。
「わざわざ電話してくるの、珍しいね」
むしろその方が気になった。裕生が高校に上がった時点で、お前ももう大人《おとな》だから、お互い適当に自己責任でやろう、と吾郎は言い出したのだった。結局、吾郎一人が一方的に適当になっていた。
『いや、俺が帰らないと、お前と葉ちゃんは二人きりだろう』
「だから?」
『学校でもならったと思うが、基本はやさしくだ。何よりも大切なのはムードだな』
「なんの話?」
『だから、押し倒したりしてはいかん。もちろんアレだ。双方合意の上なら何の問題もないのだが、その時はちゃんとひに——』
がちゃん。裕生《ひろお》は乱暴《らんぼう》に受話器を置く。一気に心臓《しんぞう》が跳ね上がった気がした。気を静めるために、その場で深呼吸をする。
(まったく父さんは)
考えてみると、裕生も兄のようにグレてもおかしくはない環境《かんきょう》だったが、色々と腹のすえかねることはあっても、だいたい怒りの爆発《ばくはつ》は兄が担当していたので、自然と静かに後片付けをする係に落ち着くのだった。
(兄さんや父さんはなに考えてるんだろう)
と、ため息をついているうちに気がつくと高校生になっていた。それに、二人とも性格的に問題はあるが悪い人間でない——多分《たぶん》。
「……第一、学校で習わないって」
と、裕生は電話の前で呟《つぶや》く。
「なにをですか」
「なにって……うわっ」
いつのまにか葉《よう》がすぐ隣《となり》に立っていた。首をかしげながら、裕生を見上げている。
「今、わたしのこと話してました?」
「うん。父さんからで……」
そこで裕生の言葉はぴたりと止まった。さっきの父の言葉をそのまま復唱するわけには行かない。
「どうかしたんですか」
「え……大したことじゃないよ。雛咲《ひなさき》がそこにいるのかって聞かれただけ。変な用事だよね。ははは」
葉と視線がぶつかる。近くにいると、ほんのりと甘い髪の香りが裕生の鼻をくすぐった。裕生はあわてて彼女の顔から視線をそらす。
顔を見ないようにすると、キャミソールのむきだしの細い肩がいやでも目に入る。首筋の無防備なラインが妙になまめかしい。少し胸をそらすようにしているせいか、服の上からでもなんとなくふくらみの形が分かる——思ったよりも大きかった。
「……」
裕生は葉から離《はな》れて、意味もなく窓を開けて外を眺めた。顔が赤くなっているかもしれない。
(なに考えてんだよ、父さんは)
裕生にとって葉は妹のようなもので、そういう風に思ったことはない。もちろん葉が女の子として魅力《みりょく》に欠けると思っているわけではなく、むしろそれは逆なのだが——。
混乱してきた裕生は考えるのをやめた。とにかくなにか話さなければ。ふと、電話がかかってくる前の葉との会話を思い出した。
「そういえば、さっきなんか言いかけてなかった?」
裕生《ひろお》が振り向いて言うと、葉《よう》はためらいがちに口を開いた。
「わたし、今晩ここに泊まっていいですか」
「…………は?」
裕生の全身が硬直した。
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