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シャドウテイカー アブサロム04

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:3 裕生は落ち着きなく座卓のまわりを歩き回っている。考えてみれば、一緒《いっしょ》に住めば二人っきりになることもあるはず
(单词翻译:双击或拖选)
 裕生は落ち着きなく座卓のまわりを歩き回っている。
考えてみれば、一緒《いっしょ》に住めば二人っきりになることもあるはずで、なんの不思議《ふしぎ》もないじゃないか、と心の半分は言っているのだが、もう半分はそれにしても心の準備が必要じゃないかと言っていた。
それにまだ大事なことを葉に話していない。吾郎《ごろう》は今夜は帰ってこないかもしれない(いや、今までの経験《けいけん》から言って「かもしれない」はいらない)のだ。ただ、だからといって「ここに泊まらない方がいいよ」と葉に言うのもおかしな話だ。自分が何をするか分からないと言っているようなものである。彼女におかしな真似《まね》をすることなど絶対にない。それは自信があった——少なくともあるつもりだった。
「お風呂《ふろ》、いただきました」
声が聞こえて、裕生は足を止めた。チェックのパジャマを着た葉が立っていた。濡《ぬ》れた髪を拭《ふ》くためなのか、タオルを持っている。上気した肌から、さっきとは違うボディソープの香りがふわふわと漂《ただよ》ってきた。
子供の頃《ころ》、葉は何度も藤牧家《ふじまきけ》に泊まりに来ている。昔は一緒《いっしょ》の部屋で布団《ふとん》を並べて寝ていたぐらいだが、なにぶん事情が違う。思わず裕生は視線をそらして斜め下を見る。畳の上にテレビのリモコンがあった。意味もなくそれをじっと眺めていると、葉が言った。
「……やっぱり帰ったほうがいいですか?」
はっと裕生は顔を上げる。
「どうして?」
「急だから、迷惑かも」
「そんなことないよ」
「……ほんとですか」
そこで初めて、裕生は動揺したことを反省した。こんな態度を見せられれば、不安に思うに決まっている。彼は葉に笑いかけた。
「もちろんだよ……ぼくも風呂に入ってくるから」
と、言いながら裕生は部屋を出た。
 四畳半には古いドレッサーが置いてある。裕生《ひろお》の母親が使っていたものらしい。そなえつけの椅子《いす》に座って、髪を拭《ふ》いていた葉《よう》はふと手を止める。
鏡《かがみ》の中にあるのは、普段《ふだん》と同じ自分の顔。
(わたしたちは少しずつ混ざり合っています)
確《たし》かに「黒の彼方《かなた》」はそう言った。普段、彼女と「黒の彼方」の意識《いしき》は完全に二つに分かれていて、互いに考えを知ることはできない。カゲヌシを解放すると、両者の意識はある程度|融合《ゆうごう》し、葉の側から「黒の彼方」を操《あやつ》ることもできるが、同時に彼女の意識を乗っ取られるおそれもある。
気がつかないうちに、自分が自分でなくなっていっているのかもしれない——今夜は一人でいるのが怖かった。ここに泊まりたい、と言ったのはそのせいだった。
「どうしたの、雛咲《ひなさき》」
廊下から声をかけられて、葉は振り向いた。風呂《ふろ》から出た裕生が立っている。いつのまにか、手を止めてじっと鏡を覗《のぞ》きこんでいた。
「わたし、前と変わったところないですか」
「変わったところって?」
「言ってることとか、雰囲気とか」
裕生はおずおずと部屋に入ってくる。そして、葉の前に立って、座っている彼女を見る。
「どこも変わってないけど」
「ほんとですか?」
「うん」
と、裕生は頷《うなず》く。それで葉の不安は少し溶けていった。裕生はカゲヌシの契約者ではない。ひょっとすると、普通の人間には分からない変化なのかもしれない。それでも、彼女が何よりも聞きたかったのは裕生の言葉だった。
「どうしてそんなこと聞くの?」
と、裕生が言った。
「……ひょっとして、あの犬に何か言われた?」
犬、というのは二人の間では「黒の彼方」のことだった。葉はデパートの屋上であったことをぽつりぽつりと話しはじめた。裕生はいちいち頷きながら聞いていたが、聞き終わると即座に言った。
「そんなの脅《おど》しだよ。自分からは出てこられないんだし」
明るい声だった。それが気休めだということはお互いに分かっている——裕生が「黒の彼方」から葉を解放する方法を考えていることは、彼女も知っていた。
(これ以上、迷惑かけたくない)
彼女は心の中で呟《つぶや》く。藤牧家《ふじまきけ》に住むのをためらっているのは、その気持ちがあるからだ。しかし裕生《ひろお》がいなければ、カゲヌシにとりつかれている事実に耐えられるかどうか自信がなかった。
「一応、布団《ふとん》出そうか。まだちょっと早いけど」
葉《よう》は頷《うなず》いた。時計を見ると、もう十一時近かった。裕生は自分の部屋から、来客用らしい布団を抱えて戻ってくる。
ふと、葉は少しだけがっかりしている自分に気づいた。その理由に思い当たって恥ずかしくなる。昔、泊まりに来た時のように、一緒《いっしょ》の部屋で布団をくっつけて寝たかったのだ。もちろん、口に出して言えることではなかった。
「……おじさん、遅いですね」
畳の上に布団を置いている裕生の背中が、一瞬《いっしゅん》ぴくっと震《ふる》えたような気がした。
「その……か、帰ってこないかもしれないって。さっきの電話で言ってた」
その意味に気づくまで、しばらく時間がかかった。葉の頬《ほお》がかっと熱くなった。
(……二人きり)
葉も一緒に住めばそういう時もあると漠然《ばくぜん》と思っていたが、いくらなんでも突然すぎる。裕生はどことなくぎくしゃくした動きで、黙々《もくもく》と敷《しき》布団を広げ、シーツをかけている。自分がなにしているのかよく分かっていないらしい。
「あの、自分で敷《し》きますから」
「そ、そうだよね。ごめん」
はっと我に返ったように、裕生《ひろお》が布団《ふとん》から離《はな》れる。気がつくと、二人は布団を挟んで向かい合って正座していた。妙な沈黙《ちんもく》が流れる——間違いなくこの状況は「ふつつか者ですが、どうぞよろしくお願いいたします」という昔の新婚夫婦のそれである。互いにそう思っているのは分かっているし、この気まずさを解消するためにも何か言わなければ、と思っているのも分かった。
「あの……」
二人が同時に口を開いた瞬間《しゅんかん》、がちゃりと玄関のドアが開く音がした。
「うーん…………明るい」
明るい? 葉《よう》は裕生と思わず顔を見合わせる。確《たし》かに裕生の父・吾郎《ごろう》の声だった。続いて廊下を歩いてくる足音が聞こえ、細身の中年男が現れる。軽そうな麻のジャケットを着て、カジュアルなメガネをかけ、きれいにセットした髪——いささかうさん臭《くさ》さが漂《ただよ》っているものの、ダンディな雰囲気をかもし出すのに成功している——はずだった。
「……お帰り」
「お帰り……なさい」
葉たちはぽかんと吾郎の顔を見上げていた。吾郎のメガネのフレームは微妙に曲がっており、両頬《ほお》にくっきりと平手打ちを食らったらしいあざが残っている。
「……どうしたの、その顔」
「明るいな。明るすぎるぞ裕生」
ため息をつきながら、やれやれという風に吾郎は首を振っている。
「じっくり見たい、という気持ちは分かるが……最初は電気は消すのが気遣い」
最後の方は早口でよく聞き取れなかった。葉が首をかしげた瞬間、弾《はじ》かれたように裕生は立ち上がった。何故《なぜ》か顔が真《ま》っ赤《か》になっている。
「父さん! お茶飲むよね。あっち行こうよ」
「なんだ、なんで耳を引っ張る? 痛いじゃないか。いつからお前もそんな乱暴《らんぼう》な奴《やつ》になったんだ。俺《おれ》が言っているのはとても大事な……いてっ。引っ張るのはいいがねじるのはやめろ……」
親子二人が居間へ歩いていく。ちょっと迷ってから、葉もその後を追った。
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