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シャドウテイカー アブサロム08

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:6 夜が明けていた。団地のドアが開いて、葉《よう》が姿を見せる。ブラウスとロングスカートを身に着けて、お気に入りのトート
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 夜が明けていた。団地のドアが開いて、葉《よう》が姿を見せる。ブラウスとロングスカートを身に着けて、お気に入りのトートバッグを下げている。平日だったが、学校に行くつもりはなかった。
結局、昨日の晩は自分の部屋に戻った。泊まるどころではなかったし、そんなことをすれば家を出るところを裕生《ひろお》に気づかれてしまう。
腕時計を見ると、まだ七時前だった。まだ裕生は寝ているはずだ。朝食の準備を終えて呼びに来てくれても、自分はいないと思うと少し胸が痛んだ。
(行ってきます)
と、彼女は心の中で呟《つぶや》いた。雄一《ゆういち》の周りでなにが起こっているのか、それを確《たし》かめに行くつもりだった。
「やっぱり」
階段から急に声をかけられて、葉は飛び上がりそうになった。真ん中あたりの段に裕生が腰かけていた。ジーンズとTシャツ姿で、傍《かたわ》らにはバックパックが置いてある。すっかり出かける準備をして、そこで待っていたらしい。
「兄さんに会いに行くんだろ」
「……どうして分かったんですか」
一言も話さなかったはずなのに。
「あの丸い球、雛咲《ひなさき》が持ってっただろ。だからなんかあったのはすぐに分かった。それに、父さんにどこで手に入れたのか聞いてたし。それで、後から思ったんだ。『黒の彼方《かなた》』になにか言われたんじゃないかって」
「……」
「もう少し、信用してくれてもいいと思うけど」
穏《おだ》やかな声だったが、かすかに不満げな響《ひび》きがある。
「信用してないわけじゃなくて」
そうじゃなくて、と言いかけて、葉《よう》はふと気づいた。裕生《ひろお》に言えなかったのは、確信《かくしん》が持てなかったからだけではない。裕生には安全なところにいて欲しいという気持ちがあるからだった。自分のことで、迷惑をかけたくなかった。
「雛咲」
と、裕生は言った。真剣な表情だった。
「ぼくももう飯倉《いいくら》先輩《せんぱい》みたいな人を出したくないんだ」
葉はなにも言えなくなった——それは彼女と同じ思いだったからだ。自分と同じように、彼もずっと自分を責めていたに違いない。
「雛咲を一人で危ない目には遭《あ》わせたくない。一緒《いっしょ》に行く」
と、言いながら裕生は立ち上がった。彼女は黙《だま》って俯《うつむ》いた。本当は涙が出るほど嬉《うれ》しかった。
「行こう」
裕生は彼女を促した。二人は団地を出て、駅に向かって歩き出した。
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