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シャドウテイカー アブサロム12

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:4 白いシャツを着た長身の男が歩いている。無造作に伸ばした薄《うす》い色の髪が生暖かい風になびいた。男は大通りの横断歩道
(单词翻译:双击或拖选)
 白いシャツを着た長身の男が歩いている。無造作に伸ばした薄《うす》い色の髪が生暖かい風になびいた。男は大通りの横断歩道を渡り、駅とは反対の方へ向かった。
彼は校門の前にいた少女のことを考えている。彼が何者かはまったく気づかなかったようだった。
(まさか、こんな時に現れるとは)
もう少し待てば彼の待ち人も現れたはずだが、ひとまず立ち去るしかなかった。あの少女と校門の落書き——二重に邪魔が入ったとあれば致し方ない。しかし、彼は満面の笑みを浮かべている。話しかけた時の彼女の不思議《ふしぎ》そうな目が、頭の中に残っている。黒目がちの澄《す》んだ瞳《ひとみ》。自分が他人にどのように映っているか、考えてみたこともないという目だった。
あの目だけでも収穫《しゅうかく》だったかもしれない。途中で恋人らしい少年が割りこんできたおかげで、名前を聞き出すこともできなかった——しかし、また別の方法を考えればいいだけの話だ。
彼は交差点を左に折れて、人気《ひとけ》のない通りへ入っていった。ベルギー大使館の近くに行くと、外資系のチェーンのカフェがある。このあたりでは喫茶店の数が少ないせいか、ほとんど満席だった。
注文したエスプレッソを受け取って、彼は壁《かべ》に面したカウンター席に向かう。一つだけ空いている席の隣《となり》に、花柄《はながら》の夏のワンピースを着た、長い髪の若い女が座っている。アップにした髪が大人《おとな》っぽく見えるが、多分《たぶん》まだ二十歳《はたち》になっていないだろう。
「隣、座ってもいいですか?」
「はい。どうぞ」
連れが来るのを待っているらしい。視線を入り口の方に走らせている。彼女は彼を拒絶しているわけでも、受け入れているわけでもない。単に関心がないのだ。しかし、彼の視線は彼女の目に吸い寄せられていた。少し茶色がかってはいるが、濡《ぬ》れたような美しい目だった。
少し間を置いてから、彼は話しかけた。
「待ち合わせですか?」
初めて彼女は隣にいる男を見る。彼は押し付けがましくない程度の笑顔を浮かべる。彼は自分が異性を引きつける容姿をしていることを知っている。今の笑顔はもっともその効果を発揮するもののはずだったが、相手は彼の外見にさほど心を動かされた様子《ようす》はなかった。
「……そうですけど」
「じゃあ、ここに座らない方が良かったかな。その人が来たら、どきますから」
彼女の目に微妙な戸惑いが宿る。彼に対してかすかに興味《きょうみ》を動かすのを感じ取った。
「いいえ。私たちの方が出て行きますから、大丈夫ですよ」
彼は彼女の指先を見ている。マニキュアはしていないが、きれいに手入れをしている。服も髪も異性にアピールするためのものではない。そうするのが習慣だからしている感じた。彼女には好感が持てた。
言葉のアクセントにクセがないので、出身は東京近郊。服装の印象からして、東桜《とうおう》ではなくどこかの女子大に通っているのではないだろうか。東桜大学に通う恋人と待ち合わせ。そんなところだろう。
難《むずか》しいとは思うが、この目の美しさは捨てがたい。彼はほんのわずかに体を動かして、体を彼女の方へ寄せた。
「……え?」
西尾《にしお》夕紀《ゆき》は思わず聞き返す。カウンターの隣に座った男が、また話しかけてきたのだった。
「珍しい目をしていますね」
「え?」
「目ですよ。目が変わってるって言われたことないですか」
「……いいえ」
と、彼女は首を振る。なにを言っているんだろう、と思った。夕紀《ゆき》は雄一《ゆういち》との待ち合わせでこの店に来ている。電話で話してから十分ほど経《た》っていた。
「『目は体のあかりである』って言うでしょう。目はその人間の象徴《しょうちょう》だから、目が澄《す》んでいる人は、他《ほか》の部分も明るい」
その言葉に夕紀は相手の顔を見た。笑みをたたえた目は奇妙に澄んでいる。ただ、どこにも焦点が合っていない気がする。
「そういう人は特別なんです。ぼくにはそれが分かる」
一瞬《いっしゅん》、宗教の勧誘かとも思ったが、少し雰囲気が違う。話の内容は妙だったか、押し付けがましい雰囲気はない。ただ、どことなく引っかかるところがあった。
「それにしても、いい天気だ。とてもよく晴れている。そう思いませんか」
「……ええ」
「少し暑すぎるぐらいですけどね」
きれいな顔をしていると彼女は思った。落ち着いた声も笑顔《えがお》も人を安心させるところがある。
「東桜《とうおう》の学生?」
「いいえ。聖愛《せいあい》女子の一年です」
「ふうん。じゃあ、ここから近いですね」
それなのに彼が口を開くたびに、夕紀の背筋に不吉な悪寒《おかん》が走る。なぜかすぐにこの場を離《はな》れたい衝動《しょうどう》にかられた。以前にもこれと似たような恐怖を覚えたことがある。もちろん、この男に会うのは初めてのはずだ。
(でも、どこかで……)
「西尾《にしお》」
突然、頭上から呼びかけられて、夕紀ははっと我に返った。雄一がすぐそばに立っていた。走ってきたらしく、肩で息をしている。
「あ……先輩《せんぱい》」
「悪《わり》ィな。待たせて」
彼女は椅子《いす》ごと身を引くようにして、バッグを抱えて立ち上がる。隣《となり》に座っていた例の男が、夕紀にかすかに会釈をして見送った。
大勢の客の行きかう中を、二人は出口に向かって歩いていく。
「……知り合いか?」
と、雄一が尋ねた。
「知らない人なんですけど、ちょっと」
彼女は口ごもる。あの男の声や口調《くちょう》は、先月自殺した飯倉《いいくら》志乃《しの》を思い出させるものがあった。志乃に起こった異変を夕紀《ゆき》は詳しくは知らない。しかし、死の直前の彼女は普通の人間とは思えなかった——あの男からも同じ雰囲気が漂《ただよ》っている。
ちらっとカウンターの男を振り返る。もう、夕紀の方を見ていなかった。白いシャツを着た背中をぴんと伸ばして、コーヒーカップを口に運んでいた。
泰然《たいぜん》とした男の様子《ようす》は彼女の不安をかき立てる。しかし、夕紀はその感覚をうまく説明する自信がなかった。
「お、タマキリさん!」
その時、少し前を歩いていた雄一《ゆういち》が大声を上げた。店に入ろうとしていたショートカットの女子学生が足を止めた。リクルートスーツ姿であるところを見ると、どうやら就職《しゅうしょく》活動中の四年生らしい。
雄一の姿を見たとたんに、彼女は苦《にが》い表情を浮かべた。雄一の方は気に留めた様子《ようす》もなく近づいていく。
「さっきはすいませんでした。あのレポート、渡しときましたよ」
しかし、彼女は雄一を無視して行ってしまう。彼はその背中を見送りながら軽く肩をすくめた。どうやら、かなり嫌われているらしい。
「……行きましょう」
と、夕紀《ゆき》は言った。彼女は自分から腕を絡《から》めて、彼を引っ張るように外へ歩き出した。一刻も早くさっきの男から離《はな》れたかった。
 玉置《たまき》梨奈《りな》はレジから雄一《ゆういち》が出て行く姿を呆然《ぼうぜん》と見送っていた。髪の長いきれいな女の子と腕を組んでいる。
(なんであんな奴《やつ》にあんな彼女がいるのよ)
誰《だれ》がどう見ても不釣合いである。梨奈は先月、付き合っていた恋人と別れたばかりだった。幸せそうなカップルを見ると、不幸を願わずにはいられなかった。
彼女はアイスコーヒーを買って、カウンター席へ向かう。そして、唯一空いている席に腰かけた。
午後からもう一つ会社説明会に行く予定だが、気が進まなかった。
(今日はもういいかな)
と、思いながらストローを口に運んだ時、
「……玉置さん?」
よく通る声が聞こえた。隣《となり》の席にいる眼鏡《めがね》をかけた男が、柔らかい笑みをたたえている。ひどく整《ととの》った顔だった。しかし、彼女には見覚えがない。
「すいません、どこかで会いましたっけ」
こんないい男、会ったことがあればそうそう忘れるはずはないと思う。男は静かに首を横に振った。
「話したのは今日が初めてですよ」
「じゃ、なんであたしの名前、知ってるんですか」
「さっき、入り口のところでそう呼ばれていたでしょう。ここまで声が聞こえましたから」
一瞬《いっしゅん》納得《なっとく》しかけた梨奈だったが、ふと疑念を抱いた——。
「名前、間違って呼んでたと思うけど」
一瞬、男の笑みが後退しかけたが、すぐに元に戻った。
「すいません。実はあなたのことを知ってました」
「え?」
「午前中に図書館で本を借りていたでしょう。目立っていたから、気になったんです」
図書館にいたということは、この男も東桜《とうおう》の学生なのだろう。しかし、彼女の方は会った記憶《きおく》がない。それに未《いま》だかつて梨奈は「目立つ」容姿をしていると言われたことはなかった。
「あたし、そんなに目立つかな」
「当たり前ですよ。そんなにきれいな目をしていれば」
「……目?」
さっきから男は梨奈《りな》の目を見すえたままだった。彼女も男の顔から目を逸《そ》らすことができなかった——男の目は不思議《ふしぎ》なほど澄《す》んでいた。まるで人のものではないような。
「目は体のあかりなんですよ」
と、男が言う。
「『両方の目がそろったままで地獄《じごく》に投げ入れられるよりは、片目になって神の国に入る方がよい』。そうでしょう?」
耳をくすぐるような心地《ここち》よい声だった。彼女はわけも分からずに頷《うなず》いていた。
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