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シャドウテイカー アブサロム13

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:5 天内《あまうち》茜《あかね》が東桜《とうおう》大学の校門の前に立ったのは、葉《よう》たちがいなくなってから数分後のこ
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 天内《あまうち》茜《あかね》が東桜《とうおう》大学の校門の前に立ったのは、葉《よう》たちがいなくなってから数分後のことだった。カールしたライトブラウンの髪をなびかせながら、決然とした表情でアーチをくぐりかけて、ふと歩みを止めた。
門柱の方からシンナーの匂《にお》いが漂《ただよ》ってくる。職員《しょくいん》たちが集まって、落書きを消そうとしているらしい。白いスプレーで描かれたマークを見た途端《とたん》、
「……ちょっとどいて」
彼女は職員たちをかき分けて門柱の前に立つ。腕組みをしながら、今にも消されようとしていた落書きを間近で見る。
「なにこれ。誰《だれ》が書いたの?」
さも当然というように、自分が押しのけた中年の警備員《けいびいん》に聞く。彼は娘ほどの年齢《ねんれい》しかないであろう、若い娘の話しぶりにむっとしたようだが、いちいち注意するようなことでもないと思い直したらしい。
「さあね。今朝《けさ》、気がついたらここに描いてあったんだよ」
「ふーん」
彼女は肩から下げたバッグから、一枚の紙を取り出す。どうやらファックス用紙らしい。門柱と同じマークが描かれている。彼女は文章の書かれている部分を折って、絵の部分だけを職員の顔につきつけた。
「それってこれと同じよね?」
職員が戸惑いながらああ、と頷くと、彼女は紙をしまい、校門をくぐって構内《こうない》に入った。校舎前のベンチに座っている男子学生たちが、ちらちらと彼女の方を窺《うかが》っている。
そういう視線をものともせずに彼女は歩いていく——しかし、突然ぴたりと足を止めた。まるで誰かに呼びかけられたように、頭上を見上げる。
彼女の視線の先には、校舎の屋上があった。彼女の目が鋭《するど》い光を帯びる。そして、ヒールを鳴らしながら校舎の入り口へ向かって走り出した。
 葉《よう》と裕生《ひろお》は七階建ての校舎の屋上にいる。古い建物だが、この大学では一番背が高い。つなぎ目のある古いコンクリートに、強い日差しがにぶく反射している。むっとする暑さだった。二人の他《ほか》には誰《だれ》もいない。葉は足元を確《たし》かめるように、ゆっくりとフェンスのそばを歩いていた。
「……なにか感じる?」
裕生は葉に問いかける。彼女は首を横に振った。彼女にとりついている「黒の彼方《かなた》」は、他のカゲヌシを察知する能力が弱い。相手がそばにいたとしても、感じ取れないことの方が多いはずだ。
それに、仮にこの大学のどこかにカゲヌシがいるとしても、相手にはこちらよりも早く存在を知られてしまうことになる。こちらには気づかれずに逃げられるおそれがあった。
「……あ」
突然、地面がぐらりと傾いた。彼女はそばにあったフェンスにもたれる。
「大丈夫?」
裕生が駆け寄ってくる。
「……大丈夫です」
例の発作だった。倒れこむほどではなかったが、まっすぐ立つのが難《むずか》しい。
「ちょっと休もうよ、雛咲《ひなさき》」
と、裕生は言った。
「さっきから顔色もよくないし」
葉は首を振った。これは病気じゃないです、「黒の彼方」の感覚とシンクロしてしまっただけで——そう言おうとした時、裕生は葉の額《ひたい》に手を置いた。さらりとした手の感触が懐《なつ》かしかった。
「……熱《ねつ》はないみたいだけど」
すぐ間近に彼の顔がある。葉は固まったまま動けなくなった。心臓《しんぞう》の鼓動《こどう》が別の意味で速くなる。
「あの、すぐに元に戻りますから」
さっきから彼女は雄一《ゆういち》に「デートだ」と認めた裕生の言葉が気になっていた。もちろん、これがデートのはずはないし、そんなことは分かっている。ただ、こういう風に二人で出かけることは滅多《めった》にないし、一緒《いっしょ》に秘密を作っているようで、それが少し嬉《うれ》しかった。
(裕生ちゃんはどう思ってるんだろう)
もちろん、そんなことは口に出して聞くことなどできない。
突然、頭の中でなにかがちりっと警告《けいこく》を発した。ほんの一瞬《いっしゅん》のことだったが、確かにカゲヌシの気配《けはい》だった。彼女はめまいも忘れ、手すりから身を乗り出すように周囲を眺める。
「……どうしたの?」
裕生《ひろお》の声はほとんど耳に入っていなかった。彼女は手すりを固く握りしめる。体の奥底から、奇妙な興奮《こうふん》が湧《わ》き上がってくる。獲物《えもの》が近くにいる、という高揚感。
(探さないと)
彼女はふらつく足取りで、校舎へ通じるドアへと歩き出そうとする——しかし、ドアはすでに開いていた。いつのまにか、ノースリーブの赤いミニワンピースを着た若い女が立っていた。階段を駆け上がってきたのか、肩で息をしている。そのたびにカールした長い髪が揺れる。背が高く、すらりと伸びた素足にはヒールの高いサンダルをはいている。
少しきつい顔立ちだが、かなりの美人だった。
「……見つけた」
と、彼女は言った。
 彼女は後ろ手にばたんとドアを閉めた。腰に手を当てて、まっすぐに裕生を見据える。雄一《ゆういち》までとは行かないが、裕生よりは年上に思えた。
「あたしは天内《あまうち》茜《あかね》! あんたは?」
「……藤牧《ふじまき》、裕生です……けど」
裕生は戸惑いながらも答えた——相手も名乗っているし、その方がいいような気がした。
「天内|小夜《さよ》のこと、憶《おぼ》えてるよね?」
「え?……さ、さあ」
苗字《みょうじ》が同じということは、この人の親戚《しんせき》かなにかだろうか。彼女の唇がかすかに震《ふる》える。一瞬《いっしゅん》、その両目を激《はげ》しい怒りが通りすぎていった。
「名前も憶えてないんだ」
そして、後ろ手にドアを閉めながら屋上に足を踏《ふ》み入れる。かつん、とヒールが音を立てた。
「そばにいるちっこいのは、あんたの妹? それとも彼女?」
「……どっちでもないですけど」
一瞬、葉《よう》がちょっと微妙な目をしたようだったが、それどころではなかった。天内茜と名乗った彼女は、表情を少し和らげて葉を見る。
「じゃ、こいつとは関係ないんだね。今すぐここから離《はな》れて」
「あの、なんの話ですか?」
「質問するのはあたし!」
裕生はぎょっとした。彼女は唇を少し突き出して、額《ひたい》にかかった前髪をふっと息で払った。
「まあ、でもあたしが何者かぐらいは分かるよね?」
裕生は無言で首を振った。それが一番分からないのだ。
「そんなはずないじゃない。あたしらがここまで近づいて……」
茜《あかね》は口をつぐんで目を細める。
「ふーん。ほんとに分かってないみたいね」
なにに納得《なっとく》しているのか、裕生《ひろお》には分からなかった。しかし、奇妙なことに気づく——今、確《たし》かにこの人は「あたしら」と言った。
「一つ、質問」
彼女はぴんと人差し指を立てる。オレンジのネイルチップがきらっと光った。
「……え」
「『わたしがお前に代わって死ねばよかった』ってなに?」
「……」
裕生は答えなかった。話のなりゆきがさっぱり分からなかったのだ。
「まあ、ブッ殺してから聞いてもいいけどね……あ、死んだらムリか」
彼女は冷たい笑みを浮かべた——裕生の中で不吉な予感がふくらむ。
「じゃあ、致命傷を与えてからにしよう!」
裕生は一歩後ずさる。まさか、と彼は思う。まさか、この人が。
「まだ、人を食べさせたことはないんだけど……」
「先輩《せんぱい》!」
葉《よう》が鋭《するど》い声で言う。しかし、それを遮《さえぎ》るように天内《あまうち》茜は叫んだ。
「あんたなら構わない!」
天内茜はぴしりと裕生に人差し指をむける。
「ボルガ!」
まるで地面が裂けたように、彼女の足元の影《かげ》が大きく広がった。その中から、何かが回転しながら飛び出してきた。それは茜の頭上で静止し、くりっとした丸い目で裕生を見据える。そして、ふわりと羽根を広げる。
それは鳥に似たカゲヌシだった。ふくろうのようにずんぐりした体は、鮮《あざ》やかな青い色をしている。大きな目と横に広がった嘴《くちばし》——実際の生き物というよりぬいぐるみのようだ。
どこかで見たことがあると裕生は思った。
「この子は『ボルガ』。あたしは契約者の天内茜。よろしく」
よく通る声で彼女は言った。そして、えくぼまで見せながらにっこりと笑う。
「……じゃ、死ね」
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