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シャドウテイカー アブサロム16

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:8「このへん?」と、裕生《ひろお》は言う。しかし、葉《よう》には返事をする気力もないようだった。彼の腕によりかかったまま
(单词翻译:双击或拖选)
「このへん?」
と、裕生《ひろお》は言う。しかし、葉《よう》には返事をする気力もないようだった。彼の腕によりかかったままぐったりしている。あたりを見回すと、空き地の向こうに高架式のホームがある。「新大久保《しんおおくぼ》」という駅名が見えた。
(……ここ、どこなんだろう)
新宿《しんじゅく》のどこからしいが、裕生にもよく分かっていなかった。
「黒の彼方」を封じた後、葉は意識こそ失わなかったが支えなしでは歩くこともできないようだった。病院に連れていくから、と言うと、葉は裕生に一枚のメモを渡した。住所が書いてある。ここに連れていってください、と耳元にささやかれた。
裕生は大学の裏門まで彼女を運ぶと、大通りでタクシーを拾った。運転手にそのままメモを渡すと、なにか言いたげな目でルームミラーごしにちらりと二人を見た。
(なんだったんだろ、あれ)
学校にいるはずの時間に、私服で出歩いているのを怪しまれたのかもしれない。
彼らが今立っているのは、小さな居酒屋や飲食店が並んでいる通りだった。ハングルの看板もちらほら見える。
葉は裕生の腕にぶら下がるようにして、ふらふらした足取りで歩き始めた。裕生はあわてて彼女の歩調《ほちょう》に合わせる。どこに行くつもりなんだろう、と思った時、
「えっ?」
裕生は思わず立ち止まりそうになった——あれはひょっとして。
「ホテル・クリスタルゴールド」
 看板があった。ホテルと言っても、けばけばしい派手《はで》な色づかいといい、微妙に矛盾した名前といい、どう見ても「普通の」ホテルではなかった。裕生《ひろお》の心臓《しんぞう》がばくばく音を立て始めた。さっきのタクシーの運転手がうさんくさそうに自分たちを見た理由も分かった。このあたりには「こういうホテル」があるからだ。
「ちょ、ちょっと待って雛咲《ひなさき》。どこに行くの」
葉《よう》は相変わらず答えない。なおも彼の腕をぐいぐい引っ張るようにして進んでいく。どうしよう、と裕生は思う。確《たし》かに葉は具合が悪そうだし、どこかで休んだ方がいいかもしれない。
しかし、ここはいくらなんでもまずい。昼間からこんなところに入っていいはずがない。いや、夜はもっとまずい。そもそも、クリスタルゴールドとはなんなのか。
妙に入り組んだ入り口と、「休憩《きゅうけい》・四〇〇〇円」というプレートが見える。同じクラスの佐貫《さぬき》が「ああいうところは入り口で迷ったりするとダメらしいぞ」と言っていたのを思い出す——なんの役にも立たない助言だった。
しかし、葉はホテルの入り口には目もくれずに通りすぎた。
「あ、あれ」
裕生は引きずられながら思わず振り返る。どうやら目的地はそこではなかったらしい。葉はホテルから数十メートル進んだところで、不意に足を止めた。こぢんまりした二階建ての建物の前だった。一階はレトロな内装のバーらしい。看板を見ると、
「喜嶋《きじま》バー」
 裕生はようやく納得《なっとく》した。昨日の晩、父と兄が来たという葉の叔母《おば》の店だった。
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