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シャドウテイカー アブサロム17

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:9 時々、喜嶋ツネコは和服姿で店に出る。慣れているとはいえ着付けには時間がかかるのだが、背筋がぴんと伸びるようで気持ちが
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 時々、喜嶋ツネコは和服姿で店に出る。慣れているとはいえ着付けには時間がかかるのだが、背筋がぴんと伸びるようで気持ちが引《ひ》き締《し》まる。気分転換にぴったりだった。
もっとも、気分転換をしなければやりきれない時にしか和服を着ないので、「喜嶋バー」の常連客の間では、彼女の和服は「今夜は機嫌《きげん》が悪い」という危険信号と認識《にんしき》されていた。
ツネコは喜嶋バーの二階に住んでいる。着付けはほとんど終わり、和室の鏡《かがみ》の前で最後の確認《かくにん》をしていた。今日、彼女が選んだのは赤茶色の琉球紬《りゅうきゅうつむぎ》で、白生地《しろきじ》の半幅帯《はんはばおび》をきりっと締めている。一番気に入っている夏の着物だったが、逆に言えばそれを着なければならないほど不機嫌ということでもある。
彼女の不機嫌は昨日の晩からだった。一番の原因は昨晩現れた藤牧《ふじまき》吾郎《ごろう》という中年男なのだが、その男が持ってきた用件もまた不快だった。
「あなたの姪御《めいご》さんの葉《よう》ちゃんを、うちに住まわせたらどうかと思いまして」
藤牧吾郎《ふじまきごろう》と名乗る男はそう言った。チンピラ風の若い男を引き連れてきたので、一瞬《いっしゅん》この近辺のヤクザが訪ねてきたのかと思ったが、大学に通っている長男と聞いて一安心した。
「一人きりにさせていては、あなたもご心配でしょう」
「……」
ツネコは黙《だま》っていた。「心配」なのは今さら言われるまでもない。葉が一人暮らしをしていたことにはずっと反対していたので、誰《だれ》かと一緒に住むことには賛成《さんせい》だった。しかし、その相手は自分であるべきだし、そもそも、どうして葉本人が自分に言わないのだろう、と思っていたのである。
吾郎の話では、先月からそういう話が持ち上がっていたということだった。しかし、先週葉の住む団地に訪ねていった時にも、そんな話は全く聞いていない。
ツネコは事実上、葉のたった一人の親戚《しんせき》だった。夫を亡くし、子供もいないツネコとしては持てる愛情を注いできたつもりだったが、葉は両親の失踪《しっそう》以前からツネコにはまったくなつかなかった。はっきりした理由があるわけではない。要するに性格が合わないのだった。
死んだ夫には常々、「お前は情が厚いけれど、気も強いから気をつけるように」と言われていた。自分でも気をつけているつもりなのだが、時々ついきつい言い方をしてしまう。葉は彼女から見れば無口で意固地《いこじ》なところがあり、可愛《かわい》いと思いながらも一言いわなければ気が済まなかった。
兄夫婦が突然姿を消した時、おろおろしていたのは葉よりもツネコだった。むろん葉もショックを受けていないはずはないが、「あたしの家でお父さんとお母さんを待とう」とツネコが言っても、絶対に首を縦《たて》に振らなかった。一人娘を残して両親が同時に失踪するというのは明らかに異様だった。一人で部屋に残って待つと言い張る葉も奇妙に思えた。
葉の話をきちんと聞くべきだったと今でも後悔しているのだが、ツネコはあまりにも強情な葉の態度につい苛々《いらいら》して、「じゃあ、勝手にしなさい」と言ってしまったのだ。
最初、ツネコは葉が一、二週間で音《ね》を上げるはずだと思った。しかし、一ヶ月が過ぎても一年が過ぎても、葉は一人で生活しつづけた。そのうち自分を頼ってくるだろうと思っているうちに、気がつけば三年以上になる。もちろん定期的に様子《ようす》を見に行っているのだが、ツネコ自身が「勝手にしなさい」と言った手前、引っこみがつかなくなっていた。
あの強情の源はなんなのか常々疑問に思ってきたのだが——。
(藤牧|裕生《ひろお》)
その名前を思い浮かべるとむかむかする。葉が一人暮らしをしている理由は、そこにあるのではないかと最近思うようになっていた。
 発端は兄のアタッシュケースだった。今年の四月ごろ、葉が学校に行っている時間に団地を訪れたことがあった。合鍵《あいかぎ》は持っているので中に待っていたのだが、葉《よう》の部屋で女の子には似つかわしくない黒いアタッシュケースを見つけた。
ツネコはそのケースに見覚えがあった。昔、ツネコが兄にプレゼントしたものだったからだ。兄が分からないと言うので、鍵の暗証番号もツネコが代わりに設定した覚えがある。
(懐《なつ》かしい)
ケースの表面の黒い皮に触れながらツネコは思う。失踪《しっそう》した父親のものを部屋に置いている葉をいじらしく思った。この持ち主はどこに消えたのだろう。兄も義姉も大人《おとな》しい性格で、失踪するような理由はなにひとつなかったような気がする。もっとも、それは外から見た者の印象でしかなかったが。
ツネコは物思いに耽《ふけ》りながら、くるくるとダイヤルを回す——深い意味のない行為だったが、昔、設定した通りの番号に合わせると、あっさりケースは開いた。
中には一冊のノートが入っていた。
ぱらぱらめくると、子供らしい丁寧《ていねい》な字でなにかが書きこまれている。葉の日記かなにかのようだった。「くろのかなた」という題名の詩のようなものがちらりと見えたが、どちらにしても他人が見ていいものではない。ノートをぱたんと閉じて、元通りにしまいかけた時、ツネコは裏表紙の名前に目を留めた。
「藤牧《ふじまき》裕生《ひろお》」
 よく見れば、このノートの字は彼女が知っている葉の字とは違う。だとすると、このノートはその「藤牧裕生」のものなのだろうか。それをどうして葉が持っているのだろう。
ふと、ツネコはこの団地の棟のポストに、「藤牧」という苗字《みょうじ》があることを思い出した。確《たし》か、一番上の階に住んでいる住人だ。
そういえば、葉と同い年ぐらいの男の子と、この棟で何度か挨拶《あいさつ》を交わしたことがあった。大人しそうな痩《や》せた少年で、確か上の方の階に住んでいた気がする。
葉が学校から帰ってきてから、ツネコはさりげなく葉に尋ねた。
「この団地に、あんたと同い年ぐらいの男の子、いるわよね?」
葉ははっと顔を上げる。
「裕生ちゃ……藤牧|先輩《せんぱい》?」
やっぱりね、とツネコは思った。どうしていちいち名前を言い直すのかはよく分からなかったが、あれはあの男の子のものなのだ。大事にしまってあったところを見ると、おそらく貰《もら》ったものなのだろう。
「うん。こないだ来た時、挨拶されたから誰《だれ》かと思ったんだけど。あんた、お邪魔《じゃま》したりしてるの?」
「……たまに。あの、ご飯食べに行ったり」
葉《よう》は消え入りそうな声で答えた。珍しく動揺しているらしい。
「あんまりご迷惑かけちゃ駄目《だめ》よ」
「……めいわく」
生まれて初めて聞いた単語のように、葉は口の中で呟《つぶや》いた。
「そう。いくら近所って言っても、よそのうちなんだからね」
言外に自分を頼れという意味をこめたつもりだが、葉はそれには反応しなかった。迷惑、という言葉にショックを受けているようだった。
ちょっと言いすぎたかもしれないと思い、ツネコは話題を変えた。
「どんな子? あの裕生《ひろお》君ってのは」
ツネコは目を瞠《みは》った。今まで見たことのないはにかんだ笑みが、葉の顔いっぱいに広がった。ツネコの方が恥ずかしくなるほど、さんざん迷った末に葉は答えた。
「…………やさしい」
乙女《おとめ》の顔だわ、とツネコは思った。複雑な気分だった。
 そもそもツネコは藤牧《ふじまき》吾郎《ごろう》の話を誤解していた。話を始めた時から、自分に妙に熱っぽい視線を送ってくることに気づいていたが、まさかこの男が妻を亡くしていて、藤牧家には男しかいないとは思っていなかったのだ。
藤牧裕生の存在は気になったが、母親代わりの人間と一緒《いっしょ》に住むのは悪いことではないと思っていた。飛び上がりそうになったのは、吾郎が裕生と電話で会話している時だった。
「いや、俺《おれ》が帰らないと、お前と葉ちゃんは二人きりだろう」
唖然《あぜん》としたツネコは、バーボンをストレートで飲んでいるヤクザもどきの長男に顔を寄せて囁《ささや》いた。
「……ちょっと、お宅ってお母さんいるのよね?」
「いや、お袋は死にましたけど」
長男——藤牧|雄一《ゆういち》はあっさりと答えてから、ツネコの動揺に気づいたらしい。少し改まった表情でグラスをカウンターに置いた。
「そういや、言ってなかったっスね。まあ、でもうちの男どもは決して問題起こすようなコトは」
しかし、その言葉を遮《さえぎ》るように吾郎の声が響《ひび》き渡った。
「学校でもならったと思うが、基本はやさしくだ。何よりも大切なのはムードだな」
一瞬《いっしゅん》、ツネコの頭の中が真っ白になったが、同時に雄一の顔色が変わったことにも気づいた。彼の手にしていたグラスがみしっと音を立てる。
二人のそばで、相変わらず吾郎は携帯に向かって語りかけていた。
「だから、押し倒したりしてはいかん。もちろんアレだ。双方合意の上なら何の問題もないのだが、その時はちゃんと避妊《ひにん》を」
ぶつっと通話が途切《とぎ》れたらしい。不思議《ふしぎ》そうに吾郎《ごろう》は携帯を見つめる。
「なんだ、大事な話なのに」
それから、吾郎はにこやかにツネコに向き直った。
「……さて、話を戻しましょうか」
「ちょっと」
「おい」
ツネコと雄一《ゆういち》は震《ふる》える声で同時に言った。
 ツネコは帯締《おびじ》めを整えて、鏡《かがみ》の中の自分の姿を点検する。
昨晩のことを思い出すと、彼女はまだ怒りを鎮《しず》めることができない。あの藤牧《ふじまき》吾郎という男も不快だったし、その息子の藤牧|裕生《ひろお》も信用する気にはなれなかったが、一番気になっているのは、裕生のことを話した時の葉《よう》の態度だった。
あの様子《ようす》では一緒《いっしょ》に住んでいなくとも、万が一「藤牧裕生」が理性を失ってしまったら、姪《めい》は抵抗しないのではないだろうか。
「……冗談《じょうだん》じゃない」
想像したくもない話だった。絶対に藤牧裕生とやらと一緒に住まわせるわけにはいかない。いや、それ以前に半径一メートル以内に近づいてほしくなかった。もし、姪に指一本でも触れたらただでは済まさない。「ちょんぎる」というのは決して単なる脅《おど》しではなかった。
その時、階下のバーのドアの開く音が聞こえた。まだ「準備中」のプレートはかけたままだった。アルバイトが来る時間にしても早すぎる。彼女は首を傾《かし》げながら、急な階段を降りていった。階段の下にはバーのキッチンがある。
「雛咲《ひなさき》、気をつけて」
男の声が聞こえる。サンダルをはいて、キッチンから店を覗《のぞ》きこむ。喜嶋《きじま》バーはカウンター席があるだけのこぢんまりした作りである。しかし、アルコールだけではなく、簡単《かんたん》な食事も出す。隠《かく》れ家《が》のような落ち着いた店、というのがもともとのオーナーである夫の希望だった。
ステンドグラスをはめこんだドアが開いていて、葉が立っていた。ちょっと線の細い、大人《おとな》しそうな男の子と一緒だった。葉の顔色は真《ま》っ青《さお》だった。ふらふらしてまっすぐに立っていられないらしい。
「どうしたのあんた。学校は?」
慌《あわ》ててカウンターの外へ出る。ふと、ツネコは眉《まゆ》をひそめた。葉は男の子の腕にすがりついている。ツネコはまじまじと彼の顔を見る。見覚えのある顔だった。
「どなた?」
「あの、藤牧《ふじまき》といいます。雛咲《ひなさき》の近所に住んでて……昨日父と兄がここに」
少しびくびくした態度で彼は言った。
「……藤牧|裕生《ひろお》?」
我ながら険しい顔をしているに違いないとツネコは思った。
「はい、そうです……こ、こんにちは」
「……」
回れ右して今すぐ出てけ、という言葉をツネコはどうにか呑《の》みこんだ。
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