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シャドウテイカー アブサロム18

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:10 和室に敷《し》かれた布団《ふとん》で葉《よう》は静かに眠っている。裕生は落ちつかない気分で、その脇《わき》に正座して
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10
 和室に敷《し》かれた布団《ふとん》で葉《よう》は静かに眠っている。裕生は落ちつかない気分で、その脇《わき》に正座していた。西日の射《さ》し込む部屋の中は、きれいに片付いている。階下のキッチンでは、ツネコが包丁を使っている音がする。多分《たぶん》、開店のための仕込みの最中なのだろう。大きな和箪笥《わだんす》と、その上に置かれた小さな仏壇《ぶつだん》を除いては、いかにも大人《おとな》の女性の一人暮らしという部屋だった。
ぐう、と裕生の腹が鳴った——考えたら、昼食も食べていない。
「……ちょっと来て」
和服用の白いエプロンを着たツネコが、階段から顔を覗《のぞ》かせる。少しきつい顔だちだが、葉に似ていると思う。髪の長さも葉と同じように、肩より少し長いぐらいだった。年齢《ねんれい》は多分、二十代後半か三十代前半だろう。
「は、はい」
裕生は立ち上がる。ツネコは冷たい目でじっと裕生の動作を見つめている——葉も将来こういう人になるのだろうかと少し不安になった。
ツネコの背中について階段を降りる。店に入ると、ツネコが凄《すご》みのある低い声で言った。
「バイトの子がね、急に休みになったの。今日はあたし一人なんだけど」
彼女の視線は、店の隅《すみ》に立てかけられたモップとほうきの方に向いている。なにを言おうとしているのか、理解できるまでしばらく時間がかかった。
「……掃除《そうじ》ですか」
おそるおそる裕生は言った。「手が足りないから手伝え」と言っているらしい。
「他《ほか》になにがあるのよ。とっととやる!」
裕生はドアを開けて、店の中を掃くところから始めた。ツネコの視線は怖かったが、何もしないで向かい合っているよりはずっといいと思った。それに、掃除なら普段《ふだん》からやっている。とにかく、目の前の作業に集中していると、
「あんたの家は、誰《だれ》が家事やってんの」
キッチンから声が飛んだ。
「ぼくですけど」
沈黙《ちんもく》。なんだろう、どういう意味なんだろう、と思いながら、裕生《ひろお》は掃除《そうじ》を続ける。埃《ほこり》を集めてから、絞《しぼ》ったモップで床を磨《みが》く。
「あんた、あの子になにかしたわけ?」
裕生はぎょっとして思わず手を止めた。
「い……いいえ。そうじゃないですけど、ちょっと具合が悪くなっちゃって」
「なにしにこっち来たの。平日だから学校あるでしょ」
裕生は乾いた唇を湿らせた。カゲヌシにとりつかれている人間を探しに来ました、などと言えるはずがない。あまり嘘《うそ》をつきたくはないが、とにかく適当に——。
「嘘はすぐ分かるからね」
キッチンから、ざくっ、ざくっ、と包丁《ほうちょう》を使っている音が聞こえる。どうやら野菜を切っているらしい。裕生は絶句したまま静止していた。頭の中を例のあの手紙がぐるぐる回っている——ちょんぎる。
しかし、本人が自分から言うならともかく、葉《よう》の秘密を裕生がべらべら話すわけには行かない。彼はごくりと唾《つば》を呑《の》みこんだ。
「ちょっと、言えません」
突然、出刃《でば》包丁を手にしたツネコがキッチンから飛び出してきた。恐怖のあまり裕生は一歩も動けなくなった。
「なんだって?」
ツネコは低い声で言った。小鼻がぴくぴくと震《ふる》えている。本気で怒っているに違いない。
「その……事情があって」
「犯罪がらみ?」
「ち、違います。悪いことじゃなくて」
「じゃあなに」
「……なんていうか、人助けみたいな」
「『みたいな』? なにそれ」
裕生は答えに窮《きゅう》した。その瞬間《しゅんかん》、ツネコの忍耐が限界点を突破した。
「はっきり言いなさい!」
ツネコはどん、とカウンターに出刃包丁を突き立てた。裕生は思わず飛び上がりそうになった。
「あのねえ、あたしはあんたを信用できないの。分かる?」
「……」
「うちの姪《めい》っ子になにがあったのか聞いてんの!」
裕生は眠っている葉のことを考えた。自分からは悩みを打ち明けようとはしなかった。「黒の彼方《かなた》」という怪物にとりつかれ、すべてを自分で抱えこんで他《ほか》の人間を助けようとしている。ただそばにいるだけの自分が情けなかった——自分が信用されるかどうかなど、大した問題ではない。
「やっぱり……言えないことは言えません」
と、裕生《ひろお》は言った。いつのまにか震《ふる》えも止まっていた。
「もう一回言っ」
「でも、ぼくを信用しなくても、雛咲《ひなさき》を信用してください!」
ツネコの顔からふっと表情が消えた。瞬《まばた》きもせずに裕生を見ている。カウンターをはさんで、裕生はツネコと無言で向かい合っていた。やがて、ツネコはぴんと立っている包丁《ほうちょう》をのろのろと抜いた。
「……床《ゆか》が終わったらトイレも掃除《そうじ》しといて」
「は、はい」
ツネコはキッチンに戻り、再び仕込みを始めた。裕生は床の掃除を続ける。続いて、トイレの掃除を始めると、急にキッチンからいい匂《にお》いがしはじめた。ベーコンとニンニクをオリーブオイルで炒《いた》めているらしい。
ぐう、とまた腹が鳴った。こんな時でも腹が鳴るのが情けなかった。掃除を終えて店に戻ると、無人のカウンターにパスタの皿が湯気を立てていた。多分《たぶん》、これを作っていたのだろう。具はベーコンとしめじだった。
「あの……」
キッチンの方へ声をかけると、
「もうすぐ開店だから、急いで食べて」
面倒《めんどう》くさそうなツネコの声が返ってくる。一瞬《いっしゅん》、本当に食べてもいいものか迷ったが、食べてはいけない理由も思いつかない。何より腹が減っていた。
「……いただきます」
裕生は食べ始める。美味《おい》しい。夢中になって食べていると、いつのまにかカウンターの向こうから、ツネコが黙《だま》って彼を見下ろしていた。相変わらず、値踏《ねぶ》みするような冷ややかな目つきだった。緊張《きんちょう》しながら、裕生は最後まで食べきった。
「ごちそうさまでした。おいしかったで……」
「七百円」
ツネコは壁《かべ》を指差しながら呟《つぶや》いた。確《たし》かに、壁にかかっている手書きのメニューには「しめじとベーコンと青じそのパスタ・七〇〇円」と書かれている。お金取るんですか、と問い直す余裕もなかった。裕生はあわてて財布《さいふ》を出して、硬貨をカウンターの上に置く。ツネコはそれを受け取ると、さらりと言った。
「じゃ、もうすぐ開店だから出てって」
「えっ」
「葉《よう》はうちに泊めます! あんたは明日また来なさい」
「は?」
 ——気がつくと、裕生《ひろお》は「喜嶋《きじま》バー」からたたき出されていた。
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