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シャドウテイカー アブサロム23

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:5 かすれた口笛が流れている。玉置《たまき》梨奈《りな》は目を開いたが、広がっているのは暗闇《くらやみ》だった。体に心地
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 かすれた口笛が流れている。
玉置《たまき》梨奈《りな》は目を開いたが、広がっているのは暗闇《くらやみ》だった。体に心地《ここち》よい疲労が満ちている。指一本動かすのも億劫《おっくう》だった。
口笛に混じって、雨音が聞こえた。
梨奈は昼間の彼との出会いを思い出した。大学のそばの喫茶店で話しかけられて、一緒《いっしょ》に店を出たのは憶《おぼ》えている。彼に連れられるまま、長い距離《きょり》を一緒に歩いた。彼の車にも乗ったかもしれない。
最後に古い家に入った。尖《とが》った屋根の小さな家だった。それから——。
それからどうしたんだろう。
「目が覚めた?」
柔らかい声が彼女の耳をくすぐった。
「動かない方がいいと思うよ。疲れてるだろうから。あんな大声を出すなんて思わなかったな」
梨奈は恥ずかしくなった。大声を出すようなことをしたのだろうか。言われてみれば、したような気もした。今、ベッドの中にいるのはなんとなく分かった。冷気に肌が直接触れている。彼女は服を着ていないようだった。
もう夜になっている。家に帰らなければならない。起き上がろうとすると、むきだしの肩を押しとどめられた。
「おとなしくした方がいいよ」
と、彼は優《やさ》しく言った。
「ケンをきったからね」
なんのこと、と彼女はぼんやり思った。もやがかかったように、頭がはっきりしない。
「旧約聖書に出てくるアブサロムは知ってる?」
突然、彼は問いかけてきた。知らない、と彼女は言おうとする。しかし、舌がもつれているのか、うまく言葉にならなかった。
「アブサロムはダビデの息子。さっき、ダビデの星の話はしたよね」
彼女は暗闇の中で頷《うなず》いた。それについてはさっき彼から説明を聞いた気がする。大学の校門に描《か》かれていた落書きの話をした時だ。彼の話では「ダビデの星」と呼ばれるマークなのだそうだ。
「ゴリアテを倒したダビデは、成長してイスラエルの王になった。ダビデ王には大勢の息子がいたけれど、彼が最も愛したのはアブサロムだった」
彼の右手に、不意に力がこもった。痛みを感じるほどではなかったが、相変わらずいくら目を凝《こ》らしてもその姿は見えなかった。
「アブサロムほどその美しさを称《たた》えられた者はいなかったけれど、彼は残忍な性格だった。自分の兄弟を殺し、一時は追放までされている。結局、イスラエルの民衆を扇動《せんどう》して、ダビデ王に謀反《むほん》を起こした。はっきりした理由は聖書には書かれていない。あまり意味なんかなかったのかもしれないな」
なにがおかしいのか、そこで彼はくすりと笑った。
「追いつめられたダビデ王は、マハナイムまで逃げなければならなかった。でも、結局アブサロムの謀反は失敗して、ダビデ王の家来に殺される。その知らせを聞いたダビデ王は、自分を殺そうとした息子のために嘆き悲しむんだよ」
彼の右手はひどく冷たかった。その冷たさが、彼女の体の中に染みこんでくるようだった。
「聖書によれば、ダビデ王はこう言って泣き叫ぶんだ。『わたしの息子アブサロムよ、わたしがお前に代わって死ねばよかった。アブサロム、わたしの息子よ』」
その言葉が合図のように、彼女の胸に言い知れぬ不安が広がった。ここにいてはいけない。さっきもそう思った気がする。はっきりと憶《おぼ》えていないが、ここでなにかがあった。
彼女は彼の手を払いのけて、上体を起こす——素早《すばや》く起き上がったつもりなのに、水をかき分けているように体が重い。体を起こすのをあきらめて、ごろんと横に転がった。その時ようやく、ベッドのシーツが濡《ぬ》れていることに気づいた。まるで水に浸したようだった。
シーツが途切《とぎ》れて、彼女は床に落下する。衝撃《しょうげき》とともに、がん、と金属音めいた音が響《ひび》いた。痛みは感じなかった。
彼女が横たわっているのは、ごく普通のタイルの床らしい。膝《ひざ》をついて立ち上がろうとしたが、足に力がまったく入らなかった。それに、右腕の感覚がまったくない。
「無理だよ」
と、彼の声が聞こえた。
「さっきも言ったけど、両足の腱《けん》を切ったからね」
ぱちっと火花が散るように、梨奈《りな》の頭の中で記憶《きおく》が瞬《またた》いた。一瞬《いっしゅん》だけ浮かび上がったその光景の中で、彼女の右のかかとには深々とナイフの刃が食いこんでいた。左のかかとは切り倒されかけた立ち木のように、ぱっくりと裂け目が入っていた。
あれは本当に起こったことなのだろうか。彼女には信じられない——いや、信じたくなかった。
「記憶の混濁《こんだく》が起こっているんだよ。自分がなにをされたのかも忘れているようだし……さっき、あんなに大きな悲鳴を上げていたのに」
彼女の体が小刻みに震《ふる》え始めた。ここでわたしは彼になにかをされた。彼女は不自由な体で這《は》いずろうとした。しかし、足首から下はまるで重い袋をくくりつけられたようだった。
「痛覚も麻痺《まひ》しているようだね」
ぎしっと床が鳴って、彼が近づいてくる気配《けはい》がする。彼女は口を開けた。助けて、と叫んだつもりだった。しかし、唇からもれたのは、動物が鳴いているような奇妙な声だけだった。
「声は出ないよ」
右手には全く感覚がない。彼女はかろうじて自由になる左手で、自分の口に触れる。彼女の口は塞《ふさ》がれているわけではなかった。唇も自由に動く。ただ、口の中は空っぽだった。舌のあるべきところには半ば固まりかけた血の塊《かたまり》があるだけだった。
「ぼくの父は牧師だった」
彼は彼女の上半身を抱き起こした。そして、彼女の背中に腕が回され、耳元に冷たい唇が押し当てられた。
「『アブサロム』というのはね、父がぼくにつけたあだ名だった。『アブサロム』。それを知った時から、それがぼくの『ねがい』の名前になった。ぼくの分身の通り名」
彼女は両目をいっぱいに見開いている。しかし、目の前を覆《おお》っているのは暗闇《くらやみ》ばかりで、彼の姿を見ることはできなかった。
「目を開けなくてもいいんだよ……見ることはもうできない」
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優《やさ》しい声につい頷《うなず》きそうになってから、彼女は自分の耳を疑った。
「最初に舌を切り取った。その後で両足の腱《けん》を切った。最後に目を奪《うば》ったんだ」
彼女の震《ふる》えはますますひどくなっていた。両目や両足や喉《のど》の奥から、忘れていた激痛《げきつう》が蘇《よみがえ》りつつあった。それは巨大な津波のように、あっという間に彼女の意識《いしき》を呑《の》みこんでいった。どうしてこんなことをしたの、と彼女は見えなくなった目から涙を流しながら思った。あたしがなにをしたの。
「君はとても綺麗《きれい》な目をしていた。人間の目以外のすべては醜《みにく》い。だから、ぼくたちはそこから解放してあげただけだよ」
ぼくたち、という言葉の意味を考える余裕は彼女にはなかった。彼女の体は最後の痙攣《けいれん》を起こしていた。
しかし、最後に囁《ささや》かれた言葉だけは聞き取ることができた。
「もうこれで地獄《じごく》に投げ込まれることもないよ」
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