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シャドウテイカー アブサロム29

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:2「そして、彼らは融合《ゆうごう》した」と、男が言った。彼は天内家で体験《たいけん》したはずのことを、まるで他人の身に起
(单词翻译:双击或拖选)
「……そして、彼らは融合《ゆうごう》した」
と、男が言った。彼は天内家で体験《たいけん》したはずのことを、まるで他人の身に起こった出来事のように話していた。葉《よう》は身動きひとつ取れずにその一部始終を聞くことになった。耳を塞《ふさ》ぐこともできなかった。
不意に首から上だけの戒《いまし》めが取り払われ、葉の視界が晴れる。
「あのままだと、呼吸がしにくいからね」
と、男は言う。手には布の切れ端を握っている。葉の首から上を覆《おお》っていた鉄だけを元の布に「戻した」らしい。ベッドの上の女の死体はもうどこにもなかった。
「……あの人は」
「消したよ」
当然のように男は言う。殺した人間の話をしながら、さらに今殺した人間の死体もカゲヌシに食べさせていたのだ。葉は言葉を失った。彼女はさっきまで生きていた。ここにはあの人を助けに来たのに、結局なにもできなかった。
男はベッドの上で、例の鉄球をもてあそんでいた。葉のみぞおちから吐き気がせりあがってくる。「アブサロム」の能力によって変えられた犠牲者《ぎせいしゃ》の肉体の一部に違いない。よく見ると、ベッドの周囲には他《ほか》にもいくつもの球体が落ちていた。
「君が気にすることはないよ。どちらにしてもあの女はもう手遅れだった」
葉は「アブサロム」をにらみつける。男はベッドに座ると、笑顔《えがお》で彼女の視線を受け止めた。
「自分からカゲヌシと一緒《いっしょ》になったの?」
「そうだよ。ぼくたちは互いに望んで、自我を融合《ゆうごう》させた。互いの記憶《きおく》も完全に共有している。人間を捕食する者同士で、価値観にはなんの衝突《しょうとつ》もなかった。ぼくたちは」
「わたしに話したいことはなに?」
葉は男の話を遮《さえぎ》って尋ねた。これ以上聞いていたくない。
「君の方がどこまで『同族食い』と記憶を共有しているかは分からない。でも、自分たちがあらゆるカゲヌシと敵対する関係にあるのは分かっているだろう?」
「……だから?」
「君たちと協力関係を結びたいんだ」
「え?」
思わず葉は聞き返した。想像もしていなかった提案だった。
「互いにとって利益になる提案だ。今の『同族食い』は他のカゲヌシの存在を察知することがほとんどできないだろう? その理由は知っているかい」
葉は黙《だま》っていたが、男は辛抱《しんぼう》強く返事を待ち続けた。彼女はしぶしぶ首を横に振った。
「もともとカゲヌシは渡り鳥のような存在だ。その世界のすべての人間を食いつくすような真似《まね》はしない。頃合《ころあい》を見てまた別の世界へと移動する。しかし前の世界で『同族食い』との戦いがあったために、予定よりも早く別の世界へ移動することになった」
かすかに彼の声に苦いものが混じった。
「激《はげ》しい戦いを経て『同族食い』は体の一部を失った——三つ首のうちの一つだ。その部分が、五感の大半を司《つかさど》っていた。今のその犬《いぬ》は完全体ではないんだ」
今までの漠然と抱いていた疑問が、それで説明がつく気がした。以前から索敵《さくてき》能力が低ければ、他《ほか》の同族を「狩る」ことなど不可能だったはずだ。それに「黒の彼方」の右肩には大きな丸い傷跡がある。他のカゲヌシを倒すよう急《せ》かしているのも、首を失ったことと関係があるのかもしれなかった。
「『サイン』を感じ取ることができないのはそのためだ」
「……サイン?」
「カゲヌシの体にある刻印のことだよ。それも知らないのかい?」
知らなかった。葉《よう》は「黒の彼方《かなた》」とほとんど記憶《きおく》の共有はできない。カゲヌシの特徴や習性についても、あいまいな知識《ちしき》しか持っていなかった。「黒の彼方」からの会話から得られる情報がほとんどだった。
「『カゲヌシ』と同様、あくまで便宜上の呼び方だけどね。形態が変化するカゲヌシにとって、外見の特徴は意味を持たない。名前も契約者によって名づけられ、それ以前の名は捨てられる。識別するための唯一のしるしが『サイン』だ。カゲヌシ同士が互いの存在を察知し、知っている相手を特定できるのは、サインの発している気配《けはい》を察知しているからだ。そしてサインはカゲヌシの強さを示している。基本的には図形が複雑になればなるほどカゲヌシの階級は上だ……あのボルガは三角形、アブサロムは六芒星《ろくぼうせい》だ」
「じゃあ、大学にあったのは……」
葉は東桜《とうおう》大学の門に描《か》かれていた六芒星を思い出した。あのマークが「アブサロム」の「サイン」ということになる。
「あれはぼくのサインだ。あんな風にカゲヌシの居場所を探り当てては、サインを書いていく不届き者がいる」
「……誰《だれ》?」
「誰なのかは分からない。そいつがぼくの周囲にも現れたというわけさ。向こうからはサインを探ることができるが、こちらからはできない……つまり、こちらより索敵《さくてき》については上手《うわて》ということになる。なんの目的かは分からないが、ぼくに敵対する存在なのは間違いない」
「……」
「ぼくの敵が何者かを探り、それを倒すまでのあいだ君のカゲヌシがぼくを守る。天内《あまうち》茜《あかね》と手を組むよりはずっといい。ぼくが『同族食い』のために、エサとなるカゲヌシを見つけてこよう。君は『飢え』の発作から開放される」
下らない、と葉は思った。「互いに利益になる」話を持ちかけていると本気で考えているようだが、そんなことのために協力するはずがない。
「いや」
きっぱりと葉《よう》は言った。
「わたし、あなたなんかに絶対協力しない」
消えてしまったあの若い女のことが、葉の頭から離《はな》れなかった。男は笑顔《えがお》のまま立ち上がると、身動きの取れない葉の髪に手を伸ばした。そして感触をもてあそぶように、しばらく五本の指を沈めていたが、不意に髪をつかんでひっぱった。ぶちり、と音を立てて何本かが抜けた。
葉は痛みに顔をゆがめたが、悲鳴だけはこらえた。
「高位のカゲヌシは、低位の同族を使役《しえき》することもできるが、『同族食い』だけはカゲヌシの階位の外側にあってね。このように回りくどい方法を取っているわけだが……君はもう人間ではないんだよ。そして『同族食い』はカゲヌシの中でも孤立している。人間とカゲヌシ、どちらにも属することのできないマージナルな存在だ。いずれ、人の社会にはいられなくなる。あるいは、他《ほか》のカゲヌシに襲《おそ》われてなぶり殺しにされるだろう」
諭《さと》すように「アブサロム」は葉に語りかけた。
「まだ契約者を完全に乗っ取っていないカゲヌシも多いはずだ。しかし、それを終えたら彼らは確実《かくじつ》に君の敵になる……次々と強力なカゲヌシたちが君に襲いかかるだろうね。サインを感じ取ることができない君が、どうやってそれを防ぐつもりなのかな? 君の家族にも害が及ぶかもしれないよ」
君の家族、と言われて葉ははっと息を呑《の》んだ。彼女が一人で暮らしていることを、この男は知らないのだ。しかし、相手は彼女の動揺を別の意味に取ったらしかった。
「君にも親や兄弟がいるんだろう?」
彼は葉の髪から手を離して、優《やさ》しい声で語りかけてきた。
「すべての事情を知った上で、君を受け入れる者がぼく以外にいるのかな?」
一ヶ月前、あの団地の暗い部屋での出来事が葉の頭にひらめいた。あの時、葉になにが起こったのか気づいたのに、確《たし》かに手を握ってくれて、
(一人にはさせない)
そう言ってくれた人がいた。
「わたしには」
葉はきっぱりと言った。
「家族はいません。でも、あなたには従わない」
彼女の予想に反して、その答えを口にしても男の顔にはまったく怒りの色はなかった。ただ、不思議《ふしぎ》そうに彼女を見返しているだけだった。
「……ああ、そうか。そういうことか」
なにに納得《なっとく》したのか、男の顔に満面の笑みが広がった。
「昨日、一緒《いっしょ》にいたあの男の子だね?」
「え……」
「君の事情を知っているようだった。彼が君の希望というわけだ……藤牧《ふじまき》裕生《ひろお》。そんな名前だったかな」
「どうして」
そう言ってしまってから、葉《よう》は後悔した。それが彼の名前だと認めたようなものだった。
「君のアドレス帳の一番上に書いてあるじゃないか。さっき見せてもらった」
彼はそう言って、ポケットから携帯電話を出した。
「……なにするの」
「君の王子様に電話をかけるんだよ。ここに来てもらう」
葉の目の前が真っ暗になった。
「どうして?」
「その方が、君もぼくの話を聞きやすくなるだろう? 彼を鉄の塊《かたまり》に変えて、さっきの女みたいにしばらく生かしておけばいいかな」
葉はぞっとした。裕生を人質《ひとじち》に取るつもりなのだ。想像するだけでも恐ろしかった。
「やめて!」
彼は彼女の言葉を聞き流して、携帯のパネルを開いた。おそらく天内《あまうち》茜《あかね》も一緒《いっしょ》に来てくれるだろうが——。
「君には言っていなかったけれど、天内茜はおそらく役に立たない。彼は今、一人で行動せざるを得ないだろうな」
「そんなことが」
「どうして分かるのか? ぼくたちには分かるんだよ」
彼女は男の意図を悟った。最初から彼には彼女を説得するつもりなどない。彼女が言うことを聞かざるを得ないような、人質を得ることだけが目的だったのだ。
「彼がカゲヌシについてどう考えているのか、ぼくは興味《きょうみ》がある」
彼は携帯を耳に押し当てて、裕生が出るのを待つ。そして葉の顔を見ながら言った。
「案外、心のどこかでは、君をおぞましいと思っているかもしれないし」
軽い口調《くちょう》だったが、その言葉は葉の胸をずきりと刺した。
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