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シャドウテイカー アブサロム30

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:3「お姉ちゃん、今食べたいケーキある?」と、小夜《さよ》は言った。バス停に向かう道を茜は走っていた。次のバスを逃したら学
(单词翻译:双击或拖选)
「お姉ちゃん、今食べたいケーキある?」
と、小夜《さよ》は言った。
バス停に向かう道を茜は走っていた。次のバスを逃したら学校に遅刻するのは確実《かくじつ》だった。妹の小夜も一緒に走っている。バスに乗らない小夜が走る必要はないのだが、茜に付き合ってくれていた。
「今、別にないかな。小夜《さよ》のケーキだったら、種類《しゅるい》はなんでもいいや」
少し息を切らしながら茜《あかね》は答えた。その日は彼女の誕生日《たんじょうび》だった。妹がそのために準備をしてくれているのは知っている。
「でも、無理にいいんだよ。小夜だって今日、部活あるんでしょ」
「お姉ちゃんのためだもん。わたしのことはいいの」
わたしのことはいいの、というのが小夜の口癖《くちぐせ》だった。
交差点に近づくと、小夜は走るのをやめた。茜の向かうバス停は右、小夜の行く中学は左だった。茜はそのまま角を曲がって走っていく。もうバス停に近づいてくるバスの姿が見えていた。
「今日は寄り道しないでよ、お姉ちゃん」
と、小夜の声が後ろから聞こえた。急いでいた茜は振り返りもせずに、はいはい、と適当な返事をした。
そして、それが小夜との最後の会話になった。
——お姉ちゃん。
もう永遠にそう呼ばれることはない。
 目を開けるとそこはベッドの上で、彼女は窓の方に顔を向けていた。鉛色《なまりいろ》に塗りつぶされたような曇《くも》り空が見える。どうやら小雨《こさめ》が降っているらしかった。
ベッドの反対側では、裕生《ひろお》が椅子《いす》に座っていた。
「あ、起きたんだ」
「ここ、病院?」
「うん。救急車で運ばれたんだよ」
彼女は自分の体を確《たし》かめる。お気に入りだった青い花柄のワンピースは脱がされて、病院の患者衣を着せられている。腰には厚く包帯が巻かれているようだった。
「血はかなり出たけど、命に別状ないって。病院の人、呼んでこようか」
裕生は腰を浮かしかけたが、茜は彼の手首をつかんで止めた。
「あの子は?」
とたんに裕生の表情が曇った。
「……分からない。連絡ができれば、してくると思うけど」
茜が怪我《けが》をしたせいで、裕生はあの雛咲《ひなさき》という女の子のところへ行けなかった。もともと、別行動になったのも茜が裕生になれなれしくしたせいだ。別に悪気《わるぎ》があってしたことではなかったが。
「……悪いことしちゃった」
「なんで。天内《あまうち》さんのせいじゃないよ」
茜《あかね》でいいと何度言っても、律儀《りちぎ》に「天内《あまうち》さん」と呼ぶのが可笑《おか》しい。そういえば、子供の頃《ころ》からの幼馴染《おさななじみ》という話なのに、あの女の子にも「雛咲《ひなさき》」と呼びかけていた。
「裕生《ひろお》ちゃんはあの子と付き合ってるんだよね?」
昨日の晩は「昔から近所に住んでいる」という話しか聞いていなかったのだが、あの葉《よう》の態度は、ただの「幼馴染」に対するものには見えなかった。もっと前から言ってくれていれば、もう少し気を遣《つか》ったと思う。
しかし、裕生はきっぱりと首を横に振った。
「そんなことないよ。近所に住んでるだけ」
「でもなんかあの子、君のこと頼ってますーっていうオーラ出しまくってたよ。他《ほか》に頼る人いませんーみたいな」
「大して役に立ってないし、頼りにもされてないよ」
「いやー、してるでしょ。アレはどう見ても」
「雛咲の」
突然、裕生は真剣な声で言った。茜ははっと口をつぐむ。
「両親は行方《ゆくえ》不明なんだよ。昨日話さなかったけど」
「行方不明?」
「うん。理由は分からないんだけど。それから、ずっと一人で住んでる」
彼は思いに沈んでいるように、自分の手元を見ていた。
「カゲヌシは、誰《だれ》からも名前を呼ばれない、孤独な人間のところに現れるって聞いたことがある。ぼくは雛咲がカゲヌシにとりつかれてるのも気がつかなかった。近所に住んでるってだけで、ずっと一人にしてたんだ。もっとぼくがちゃんと雛咲のことを見てれば、ひょっとしたらカゲヌシは来なかったかもしれない」
(名前を呼ばれない)
ふと、茜は小夜《さよ》のことを思い出した——自分がお姉ちゃん、と呼ばれることはもうない。
「……だからあたしのところにも、ボルガが来たのかな。あたしも一人だし」
「えっ」
とたんに裕生は慌《あわ》てはじめた。
「別に天内さんが孤独だって言ってるんじゃなくて……ごめん。そういうつもりで言ったんじゃなかったんだけど」
「ううん。別に」
毎年、小夜は茜の誕生日《たんじょうび》を必ず祝ってくれた。妹はいつも優《やさ》しかったけれど、その時期になるといつも必死だったと思う。
「あたしね、小さい頃《ころ》からずっとパパが怖かったの」
「……どういうこと?」
「分からない。なにがあったのかよく憶《おぼ》えてないけど、小さい頃《ころ》なにかあったのかもしれない。パパに似た男の人も怖かったりするから。別にパパが悪い人とかそういうことじゃないよ。ママは間に入ってくれてたけど、家族で出かけたりするのがあたしはすごくいやだった。小夜《さよ》はすごくいい子だったから、小夜の方を二人は可愛《かわい》がってて……気がついたら二人とももうあたしのことは見ないようになってた」
茜《あかね》は言葉を切って、裕生《ひろお》の顔を窺《うかが》った。裕生は黙《だま》って聞いている。
「うちでは小夜だけがあたしのこと気にかけてくれてたの。でもね、仲良くなかったってだけで、別に親が嫌いだったわけじゃないよ。だから、耐えられないのかもしれない。死んじゃうっていうことは、もう仲良くも悪くもなれないってことだから」
今まで誰《だれ》にも話していないことだった。どうしてそれを昨日会ったばかりの男の子に話しているのか、茜にも分からなかった。妹と最後に話した瞬間《しゅんかん》のことを思い出したせいかもしれないし、裕生のどこか気弱な態度が小夜に似ているせいかもしれない。
「……天内《あまうち》さんは、仲良くしたかったんだ」
裕生は言った。あ、と茜は口の中で呟《つぶや》く。自分の抱えていたものが、その一言であっさりと説明されてしまった気がした。
「そうかも」
きっかけを探していたのかもしれない。ひょっとすると、両親の方も同じだったかもしれない。でも、もう遅い——そのたった一つの厳然《げんぜん》たる事実が、彼女に重くのしかかっていた。その重さが自分の憎悪の源なのだと、茜は初めて気づいた。
茜は俯《うつむ》いて涙をこらえた。気づいているのかいないのか、裕生は茜のそばにただ座っている。
なにか言わなければ、と思い始めたその時、裕生の携帯電話が鳴った。
 沈黙《ちんもく》を突然破った着メロに裕生は飛び上がりそうになった。画面を見ると非通知だったが、ひょっとすると葉《よう》からかもしれない。彼は通話ボタンを押した。
「はい」
『藤牧《ふじまき》裕生くん?』
聞き覚えのない男の声が聞こえた。自分の名前を知っているということは、間違い電話ではないはずだ。
「そうですけど、あの……」
『今、君の彼女と一緒にいる』
裕生は思わず携帯を握り直した。頭の中を無数の質問が駆《か》け巡ったが、一番最初にしなければならない質問は分かっていた。
「……誰《だれ》だ?」
『ぼくは『アブサロム』だ』
アブサロム、と口の中で裕生《ひろお》は呟《つぶや》いた。人間の名前ではないようだ。それがこの契約者が飼っているカゲヌシの名前なのだろう。
『今から君と話をしたいんだけど、ちょっとこっちに』
と、男の声が言いかけた時、
『来ちゃだめ!』
相手の電話のすぐ近くから葉《よう》の声が聞こえた。
『わたし、大丈夫ですから!』
彼女の声は震《ふる》えていて、まるで「大丈夫」には聞こえない。切迫した状況にもかかわらず、裕生は吹き出しそうになった——本当に嘘《うそ》がヘタなんだから。
「……ぼくが行かなかったら、雛咲《ひなさき》の命の保証はないんだね」
『その通りだ』
裕生は茜《あかね》をちらりと見る。今、彼女は動けるような状態ではない。危険なのは分かりきっているが、葉が囚《とら》われの身である以上、一人ででも行くしかなかった。
ただ、茜を刺した人間のことも気がかりだった。その人間が誰《だれ》なのか裕生たちは知らない。いくらボルガがついているとは言え、不意打ちで襲《おそ》われたら今度こそ命を落とすかもしれない。
茜を一人にもしたくなかった。裕生がためらっていると、
『君が来れば、天内《あまうち》茜にも手を出さないと約束する』
と、相手は言った。どちらにせよ、裕生に選択肢はない。人質《ひとじち》を二人取られているようなものだ。
「どこに行けばいい?」
裕生は覚悟を決めた。
「今すぐ来るそうだよ」
電話を切った後で「アブサロム」は葉に言う。彼女は俯《うつむ》いたまま答えない。彼女の目からは涙が溢《あふ》れそうになっていた。
「君の代わりに、人質になれと言ったら彼は逃げ出すかな?」
うつろな気持ちで彼女はその言葉を聞いていた。彼女の頭を占めているのは、これから来る裕生のことだった。彼を危険に晒《さら》すのがなによりもおそろしい。
この鉄の戒《いまし》めを解くことができれば、「アブサロム」に従う理由はなくなる。しかし、葉は「アブサロム」がベッドの上にいたあの大学生を殺した瞬間《しゅんかん》を見ている。今の「黒の彼方《かなた》」のスピードでは、彼女の肉体に害を及ぼさずに、鉄の囲いを砕くことはできそうもなかった。
もし、もっと速く動けたら——ふと、葉は昨日の晩に「黒の彼方」が持ちかけてきた「提案」を思い出した。新しい契約を付け加えること。時間の制約をつけるかわりに「黒の彼方」に自分の体を完全に明け渡すこと。
(……だめ)
それでは、その間は完全に「黒の彼方《かなた》」が自由になってしまう。カゲヌシを殺すだけではなく、契約者に危害を与えてしまうおそれがあった。危険なのは契約者だけではない。その時裕生《ひろお》がそばにいたら、彼も安全ではなかった。
彼女はぎゅっと目を閉じる。どうすればいいのか、彼女には分からなかった。
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